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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
最終章:大団円?いいえ、未来へのフラグです

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148/150

148:取り込まれるフラグ

 ――魔王封印の間。


 瘴気が沸騰するように渦を巻き、黒い風が吹き荒れていた。

 床に刻まれた古代の紋様が光を帯び、地鳴りのような轟音が世界を震わせる。

 その中心で――異形の巨体が、ゆっくりと動き出した。


 黒曜石のような装甲が軋み、無数の虫がその隙間を這う。

 十メートルを超す巨躯。肩口からは蛇が幾重にも絡み合い、鎌首をもたげる。

 羽音が空気を切り裂き、空間が悲鳴を上げた。


「……でけぇ、なんてもんじゃねぇ……!」


 ジョッシュが唾を飲み込みながら竜炎撃棒(ドラグスマッシャー)を構える。

 その手は汗で滑り、わずかに震えていた。


「魔力の流れが……異常よ。まるでこの空間そのものが、あの化け物の体みたい……!」


 エルーナが竜眼照準(ドラグスコープ)越しに魔力線を読む。

 だが、線は無限に枝分かれしていて、どこが核かすら分からない。


 ソーマは深く息を吸い、剣を構えた。

 竜機剣(ドラグニル)の刃が淡く青白い光を放ち、鼓動のように脈打っている。

 まるで、彼自身の心と共鳴しているかのように。


「……行くぞ。怯むな。ここで退いたら、誰も守れない」


 その言葉に、一同は一斉に頷いた。

 次の瞬間――ヴェリグラトスが吼えた。


 耳を裂くような咆哮。

 瘴気の波が爆風となって押し寄せ、床が砕け、視界が白く弾け飛ぶ。


「来るぞッ!」


 ソーマが叫ぶ。


 彼は躊躇なく飛び出し、竜機剣(ドラグニル)の引き金を引き振り下ろす。

 魔力を纏った斬撃が光を走らせ、ゴーレムの脚部を切り裂いた。

 金属とも肉ともつかぬ感触。確かな手応え――だが。


「……嘘だろ……もう塞がってる!?」


 裂けた傷口から無数の虫が湧き出し、食い合いながら再生していく。

 瞬く間に、切り口は元通り。

 まるで時が逆行したようだった。


「効かねぇのかよ、これ……!」


 ジョッシュが歯を食いしばり、炎を纏ったバットを叩き込む。

 蛇の首が爆ぜる。

 だが、焼け焦げた皮膚の下から新たな鱗が芽吹く。

 ――再生速度が尋常ではない。


「ソーマ! 一点集中でもダメ! 分裂してる!」


 エルーナが射撃しながら叫ぶ。

 弾丸が甲殻を撃ち抜く。破壊された箇所から散った虫が、壁を這い、また本体に戻っていく。

 分裂、再生――神造兵器のようなその仕組みに、ソーマは息を呑んだ。


「……これが、神々が生み出した世界の破壊者……!」


 クリスが杖を構え、震える声で呟く。


 樹命杖(ユグドラシルロッド)の先端が光り、聖なる紋様が浮かび上がる。

 彼女が詠唱を終えると同時に、光が奔流となって広がった。

 聖光が瘴気を押し返し、一瞬、空気が澄む。


 その隙を突いてソーマとジョッシュが突撃。

 しかしヴェリグラトスの反撃は苛烈だった。

 地面を這う蛇が、クリスの足元に絡みつく。


「きゃああッ!」


 悲鳴が響く。

 ジョッシュが瞬時に反応し、蛇を殴り飛ばす。


 だが、蛇の鱗が弾け、紫の霧が噴き出す。

 ジョッシュの腕が焼け焦げた。


「ぐっ……クソッ、毒かよッ!」


 痛みに顔を歪める彼の腕を、アルマが光で包む。

 聖なる治癒が彼の傷を癒やし、黒ずんだ皮膚が元に戻る。


「立って、ジョッシュ! まだ戦いは終わっていません!」

「当たり前だ……俺たちの戦いは、ここからだッ!」


 再び構えるジョッシュ。

 その背をアルマが守る。

 だが、その瞬間――天井から黒い羽虫の群れが雪崩れ落ちた。


 耳障りな羽音、瘴気の霧。

 クリスが光を放ち、群れを焼き払うが、次々と湧き出す。

 まるでこの空間そのものがヴェリグラトスの体内であるかのようだった。


「攻撃が通らない……回復が速すぎる……!」

「諦めればいいのに」


 不意に背後から冷たい声――デスヴェルだ。

 彼はゆっくりと笑い、指を鳴らす。


「行け、ヴェリグラトス。まずはその聖女を取り込め」

「――っ!」


 瞬間、蛇の群れがアルマへと殺到した。


《アルマの死亡フラグが発生しました》

《破壊対象:『アルマの死亡フラグ』》

《構造解析開始……因果ポイントを特定……》

《提示:脱出又は防御魔法を発動してください》


「アルマ様ッ!!」


 ソーマの叫びが轟く。

 アルマは両腕を広げ、聖なる光で結界を展開する。

 蛇が噛み砕こうとするたび、光が弾き返す――だが、数が多すぎる。

 床が蠢き、黒い液体が足元から這い上がった。


「……吸い込まれる……!?」


 アルマの足が、闇に沈んでいく。


「お母さんッ!!」


 クリスの叫びが響く。

 アルマは一瞬だけ、振り向いて微笑んだ。


「大丈夫。必ず――信じて」


 その声が終わる前に、彼女の身体は闇に呑まれた。

 ヴェリグラトスの胸部で光が瞬き、内部に取り込まれていく。


「アルマ様を返せぇぇぇぇぇぇッ!!!」


 ソーマの怒声が響く。

 怒りに呼応するように、竜機剣(ドラグニル)の炉心が赤熱した。

 刃が変形し、銃口が展開。

 エルーナが目を見開く。


「ソーマ、それ……まさか!」

「使うぞ、もうためらってる場合じゃない!」


 腰の接続パーツを剣に繋ぐ。

 竜機装(ドラグレギナ)の蒼炎が走り、剣は巨大な銃へと変貌する。


「ゼルガンさん……今こそ、この力を!」


 カチリ、と音が鳴る。

 銃身に装填されたのは、淡く光る魔力電池。

 それは魔力がチャージされた切り札の弾丸だった。


「ドラグユニオン――発動!――フルパワーで行くぞッ!!」


 青白い魔力が渦を巻き、空気が唸りを上げる。

 クリスが即座に防御結界を展開し、エルーナが叫ぶ。


「いける……今しかないわ!」

「撃て、ソーマ!」

「お母さんを……取り戻すために!!」


「――喰らええええぇぇぇぇぇッ!! ドラグバーストォッ!!!」


 蒼白の閃光が放たれ、空間を貫く。

 爆音。衝撃。風圧が肌を裂く。

 光がヴェリグラトスの胸部を撃ち抜き、瘴気を一掃した。


「……やった、か!?」


 ジョッシュが呟く。

 だが、爆煙の中から――再び羽音が。

 装甲がうごめき、虫の群れが集まり、裂け目を塞ぎ再生する。


「……ウソ……もう回復してるの……?」


 クリスの声が震えた。

 ヴェリグラトスの胸部にかすかに残る光。

 アルマの結界だ。

 彼女はまだ中で――戦っている。


「……アルマ様、まだ……!」


 ソーマが歯を食いしばる。

 魔力電池は、残り一個。

 膝をつきながらも、ソーマは立ち上がる。


「こんなとこで……終われるかよ……!」


 その声に、仲間たちが応えるように立ち上がる。

 ボロボロになりながらも、瞳の奥に宿るのは――決意。

 デスヴェルたち三神が冷笑した。


「フフ……いい顔だ、ソーマ。絶望の味はどうだ?」

「人の力なんて、私たちの前では塵に等しいのよ」

「しょせん僕の真似事。通用するわけないよね――」


 嘲笑が響く。

 だが、ソーマはわずかに口角を上げた。


「……上等だ。塵でも……奇跡を起こしてみせる」


 竜機剣(ドラグニル)を構え、彼は再び走り出す。

 光と闇、神と人、絶望と希望が交錯する戦場で――

 終焉の戦いは、さらに苛烈さを増していく。

 フラグを発生させるのを書いてる途中に思い出しました。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


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