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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第七章:同窓会? いいえ、真実のフラグです

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139:父と子のフラグ

【ケン=フラハ視点】


 夜の帳が落ちた。

 城下町の明かりが、遠くにちらちらと灯っている。

 俺は窓辺に腰掛け、片手にした盃を揺らすたび、酒が月光を映して小さく揺らめいた。


「……明日、か」


 喉を焼く酒の熱さが、妙に心地いい。

 けれど胸の奥は重く、ざわめいていた。


 この一カ月、ソーマと共に鍛錬に明け暮れた。

 最初は本当にやれるのかと疑っていた。

 勇者のスキルもなければ、戦士としての血統も持たない。

 俺の息子とはいえ、魔王討伐の舞台に立たせるにはあまりに頼りなかった。


 だが……俺の目が間違っていた。

 日を追うごとに、あいつは強くなった。

 剣筋は荒く、力もまだ足りねぇ。

 だが、食らいつき、工夫し、何より、折れない。

 勇者じゃねぇ、特別な戦士じゃねぇ。

 けど――それでも、今のあいつは並の戦士を軽く凌ぐ。

 ……俺の全盛期にゃまだ及ばねぇが、あの若い頃の俺を思い出させるには十分だった。


 誇らしい。

 そして、どこか悔しい。

 父親としての誇りと、戦士としての対抗心。

 その二つが入り混じって、胸の奥が妙に騒がしかった。


 そんな時、背中に柔らかな気配が寄り添った。


「……あなた、まだ飲んでるの?」


 振り返ると、ランが立っていた。

 俺の妻にして、相棒にして、唯一の女。


「明日が出発だ。飲まずに眠れるかよ」

「ふふ……あなたらしいわね」


 ランは隣に腰を下ろし、同じように窓の外を見やる。

 沈黙が流れるが、居心地が悪くなかった。


「……十七年前、私たちは……」

「倒せなかった」


 ランの言葉を引き取るように、俺は低く呟いた。


「魔王を討ち損ね、結局は封印でごまかした。そのツケを、今……子供たちに背負わせることになっちまった」


 盃を傾ける。

 酒の熱さが、悔恨の冷たさを溶かしてはくれない。


「……だからこそ。今度こそ、俺たちの代で終わらせる。命を懸けてでも、な」

「ええ。私も同じよ。あの子たちに、未来を残すために」


 互いの視線が絡む。

 戦士として、夫婦として。

 言葉は多くなくても、伝わるものは確かにあった。

 そんな重苦しい空気を振り払うように、俺はわざと口角を上げた。


「……にしても、うちの息子、随分とモテるな」

「え?」

「あの嬢ちゃんたちに積極的に攻められてる。……あれはもう、夜の方も主導権握られてるだろ。まったく、父親としては心配だぜ」


 酒を煽りながら笑う俺に、ランは微妙な顔をした。


「あなた、気付いてないのね」

「……何がだ?」


 ランは一呼吸置いて、真っ直ぐ俺を見る。


「アルマとエーメルのことよ」

「……あの二人が結婚してたなんて、驚いたな。で、旦那は誰だ?」

「二人とも、まだ独身よ」

「……あぁ? じゃあ……あの嬢ちゃんたちの父親は誰なんだ?」


 問いかける俺に、ランはじっとした目を向けてきた。


「本当に分からないの? あの二人が体を許す相手なんて……一人しかいないでしょ」


 俺は、言葉を失った。


 十七年前。

 魔王との決戦を前に、俺たちはそれぞれに思い残すことをしないよう、互いの想いを告げ合った。

 三人から同時に想いを告げられた俺は、愚かにも流され、四人で一夜を過ごした。

 最終的に選んだのはランで結婚し、共に生きてきた。

 だが――


「……まさか、あの一夜で……?」

「確認はしてない。でも……おそらく、そう」


 ランの言葉に、心臓が跳ねる。

 思わず盃を握りしめる手に力がこもった。


「……じゃあソーマは……異母兄妹で……?」


 言葉に詰まる俺に、ランは静かに言った。


「王族や貴族なんて、血を残すためにもっと複雑な婚姻を繰り返してきたわ。問題はないはずよ」

「……そういうもんか……?」


 納得なんざできるわけがねぇ。

 胸の奥はもやもやしたまま。

 だが――ランは俺の肩に身を寄せ、囁いた。


「すべては平和になってから考えましょう。今は、明日からの戦いに備えて」


 寄り添う温もりに、俺は深く息を吐いた。

 父として、戦士として、夫として。

 すべてを背負うのは明日からだ。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


【デスヴェル、ヴェリディス、ヴェリク視点】


 魔大陸にて魔王が封印されている広間。

 闇に閉ざされたその場所に、三つの影があった。

 ソーマたちの前に現れデスヴェル、ヴェリディス、ヴェリクと名乗った存在。


「……時は満ちた」


 デスヴェルが低く呟く。

 その眼光は、暗闇すら貫くような光を帯びていた。


「人間たちは勝利を夢見て準備をしているけど……すべては我らの掌の上」

「そうね。滑稽なものだわ。自分たちの未来を信じて足掻く姿は」


 ヴェリディスが艶やかに嗤い、ヴェリクが楽しげに囁く。


「こいつが完成すれば、やっと僕たちの望みが叶う」



 その背後――黒い影がうごめいた。

 人の形を持たぬ、禍々しき黒の塊。

 三人の視線がその存在に注がれる。


「もうすぐだ」

「すべては終焉へと収束する」

「そして僕たちは門へと到達する」


 三つの声が重なった瞬間、封印の間に冷たい振動が広がった。

 異形の影は脈動し、形を成していく。


 ――それは、やがて世界を覆う絶望の象徴となるのだった。

 これにて第七章完結です。

 第七章も無事に毎日投稿する事が出来ました。

 この章では爆弾を投下しまくりました。

 ソーマがクズだと思ったらそれ以上にクズな存在が身近にいました。

 その辺の感想も含めて近況報告で書かせて頂きます。

 物語はこのまま最終章へと移ります。

 最終章も毎日更新目指して書き続けます。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

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