表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第七章:同窓会? いいえ、真実のフラグです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/149

135:決戦へのフラグ

 夜が明けると同時に、王城の高窓から差し込む光が静かに石造りの床を照らした。

 前夜の激動が嘘のように、朝の空気は清らかで、冷たい。


 エルーナは、まだ夢と現の狭間にいるような心地で目を覚ました。

 昨日、自分の運命を揺るがす真実を知ったばかりだというのに、胸の奥は不思議と温かかった。

 傍らにはエーメル女王が静かに座り、母としての穏やかな眼差しを向けていた。



「……おはよう、エルーナ」

「……お母さん……」


 まだ、その呼び名に照れや躊躇いが混じる。

 だが胸の奥からせり上がる温かさを、彼女は拒むことができなかった。

 ルーナ女王も椅子に腰掛けており、二人を見守るように柔らかな笑みを浮かべていた。


「ゆっくり休めたか? 昨日は心が揺れたことだろう」

「……うん。でも、不思議。今は……心が少し落ち着いてる。昨日までずっと、自分は孤独なんだって思ってたのに……」


 エルーナの言葉に、エーメルが目を潤ませ、そっと彼女の手を握った。


「もう、あなたは孤独じゃない。私はずっとあなたを想っていた。これからは――一緒に歩んでいける」


 短い沈黙の後、エルーナは小さく頷き、再び布団に潜り込むように母の胸に身を寄せた。

 長い間、求めていた温もりが、今ここにあった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 宿に戻っていたソーマは、ジョッシュとクリスに昨夜の出来事を打ち明けていた。


「――というわけで、エルーナがエーメル女王の娘だったんだ」


 二人は目を剥き、同時に口を開いた。


「……はぁっ!?」

「……うそでしょ!?」


 あまりの声量に、周囲の宿泊客がぎょっと振り返る。

 ソーマが慌てて二人の口を塞いだ。


「しーっ! 声がでかい!」


 しばらくして落ち着いたジョッシュが、額を押さえながら呟いた。


「……は、はぁ!? そりゃまた……とんでもない話だな……。つまり、あいつは……正真正銘、王家の血筋ってことか」

「信じられない……けど、妙に納得もいく。あの強さと誇り高さ……やっぱり血筋なのかな」


 クリスは感心半分、心配半分の表情で呟いた。


「でも本人は……かなり混乱してるみたいだったな」

「そりゃそうだろ。いきなり女王の娘ですなんて言われて……俺だって正気でいられる自信はねぇ」


 ジョッシュの言葉にソーマは小さく笑い、けれどすぐに真顔へと戻った。


「……でも……それ以上に問題は今日の会議だ。俺の【復活フラグ】について、きっと具体的な結論を出すことになる」


 胸の奥に重くのしかかる予感を、ソーマは振り払えずにいた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 世界会議二日目。

 荘厳な円卓の間には各国の王たち、英雄たちが再び集まった。


 しかし、ソーマはすぐに異変を感じ取った。

 アスガンドのウォーガン王――鋼の巨躯を誇るその男が、まるで獲物を睨みつける獣のように、ソーマを見据えている。


(……なんだ、この視線……? まるで俺が仇敵でもあるかのように……)


 その違和感に気づいたゼルガンが、ソーマの傍らで小声を漏らした。


「気にするな……多分、リンの件だ」

「姉さん……?」

「リンがな……昨日の夜、『ソーちゃんと結婚するつもり』と何のためらいもなく言った」

「……えぇっ!?」


 ソーマの声が裏返る。

 ゼルガンは苦笑しながら肩を竦めた。


「俺も止める隙が無かった。ウォーガンにとってリンは大切な妹の忘れ形見。簡単に渡せるはずもないだろう」

「……なるほど、それで俺が敵視されてるわけか」


 ソーマは額を押さえた。

 戦う前に別の意味で命を狙われそうな気配を、ひしひしと感じていた。


 そんな空気を孕んだまま、二日目の会議が幕を開けた。

 最初に議題として挙げられたのは――ソーマの持つ【復活フラグ】の力についてだった。


「昨日の発表を受け、私は有識者と話し合った結果一つの可能性に気づいた」


 アルヴェロ王が重々しく口を開き、円卓を見渡す。


「従来、魔王は倒すことはできず、封印でしか抑えられなかった。だが……ソーマのスキルがあれば、『復活』そのものを逆手に取り、永遠に復活できぬ状態に追い込めるかもしれぬ」


 その言葉に、会議場がざわめく。


「……つまり、真の意味で『魔王を殺す』ことが可能になる、というのか」

「そんなことが……!」


 期待と不安が入り混じった声が飛び交う。

 ソーマは拳を握りしめ、前に出た。


「……確かに俺のスキルは、魔王に適用できれば封印ではなく、完全な終焉に導けるかもしれません」


 だが、ソーマはすぐに続けた。


「ただし……問題があります。俺のフラグは『俺の視界に入っているもの』にしか効きません。つまり……魔王を直接目にしなければならないんです」


 その条件に、場の空気が一層重くなる。


「俺たちが魔王のもとにたどり着ける保証はありません。たどり着いたとして……本当に復活フラグが効くのかも分からない。……賭けに近い」


 ソーマの正直な言葉に、沈黙が広がる。

 やがて、聖女アルマが毅然と声を上げた。


「しかし……このまま何もしなければ、世界は理の崩壊に飲まれるだけでしょう。ならば、たとえ僅かな可能性でも……それに賭けるしかありません」


 エーメル女王も頷いた。


「魔王が眠る大陸――アスノクスへ遠征し、ソーマ殿を中心に作戦を立てる。選抜した最強の戦力を集めて挑むべきだろう」


 重々しい決断が、会議場に下された。


「……魔大陸アスノクスへの遠征を正式に決定する!」


 宣言と共に、円卓に置かれた地図に視線が集まる。

 そこには、濃い闇に覆われた禁忌の地――魔王が眠る大陸が赤く記されていた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 会議の後、控え室に戻ったソーマは深く息を吐いた。

 肩にのしかかる重圧に、足が震えそうになる。


(……俺にしかできないこと……。みんなの命を背負う戦い……)


 そこへ、エルーナが駆け込んできた。

 目にはまだ不安と揺らぎがあったが、それ以上に強い光が宿っていた。


「ソーマ! 私も行くから!」

「エルーナ……」

「昨日、母さんに会えて分かったんだ。私は――守られるだけじゃない。みんなと一緒に未来を掴むために、生まれてきたんだって」


 その言葉に、ソーマの胸の奥で何かが熱を帯びる。


「……ああ。一緒に戦おう。必ず、未来を掴むんだ」


 二人の視線が交わった。

 それはやがて訪れる決戦への覚悟の証だった。

 エルーナは一瞬迷ったが、勇気を振り絞って口を開いた。


「……それに、母さんにもちゃんと伝えたからね。ソーマは――私にとって、とても大切な人だって」

「なっ……!?」


 思わず声を裏返らせたソーマが、耳まで赤くなって視線を逸らす。


「お、おいエルーナ! そんな真顔で言うなよ……こっちの心臓がもたないって……!」


 その慌てぶりに、エルーナはくすりと笑みをこぼした。

 緊張に包まれた空気の中、わずかに灯る温もりが二人の間に生まれていた。


 こうして、前勇者たちを含めた選抜メンバーが編成され、魔大陸アスノクスへ向かう遠征計画は正式に動き出した。


 その道程は死地。

 だが誰も退くことはなかった。


 ――未来を繋ぐために。

 次回爆弾投下。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ