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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第七章:同窓会? いいえ、真実のフラグです

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134/149

134:名前に宿るフラグ

 世界会議一日目が終わった王城の夜は、昼間の緊張感を引きずったまま、静けさに包まれていた。

 燭台に揺らめく炎が、広い回廊に長い影を伸ばす。


 ソーマ達が今日の議題を振り返っていると、鋼大陸のウォーガン王がゼルガンへと低い声を掛けた。


「……ゼルガン。妹の――ソフィーの忘れ形見である娘に会いたい」


 その声音には、王としての威厳ではなく、一人の男としての切実な思いが宿っていた。

 ゼルガンは目を伏せ、深い息を吐く。


「……やはり、そう来るか」

「血は血だ。妹の子を、この目で確かめたい」


 迷いはなかった。

 ゼルガンは静かに頷き、ウォーガンを伴って王城を後にし、リンのもとへと向かった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 会議で自らのギフトを明かしたソーマは、重い気持ちを抱えながら王城の中庭に出ていた。

 夜風が頬を撫でるが、胸の奥に巣くった緊張は少しも晴れない。


(……もう、後には引けない。俺は皆の前で【復活フラグ】のことを話した。皆が俺を見ている。……期待を背負ってしまったんだ)


 その重責に押しつぶされそうになった時。


「……ソーマ」


 控えめな声が背後から聞こえた。

 振り返ると、エルーナが小さな灯りを手に立っていた。


「エルーナ?」

「お願い……少し、一緒に来てくれない?」


 彼女の表情は不安に揺れ、普段の快活さは影を潜めていた。


「どうした?」

「ルーナ女王が……『大切な話がある。できれば誰かについてきてもらいなさい』って。……一人で聞くのは、怖くて」


 小さな声に込められた怯え。

 ソーマは一瞬迷ったが、すぐに頷いた。


「分かった。一緒に行こう」


 エルーナはほっとしたように微笑み、二人は並んで歩き出した。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 案内されたのは、王城の奥にある応接室。

 中に入ると、そこにはダークエルフのルーナ女王と、エルフのエーメル女王が待っていた。

 威厳に満ちた二人の女王が並ぶ姿は、圧倒的な存在感を放っていた。

 緊張で足を止めたエルーナに、ルーナが穏やかに声をかける。


「エルーナ。恐れることはない。今日は、お前に真実を告げるために来たのだから」

「……真実?」


 エルーナの声が震える。

 その問いに答えたのは、エーメル女王だった。


「――あなたは、私の娘よ」


 その一言が、雷鳴のように室内に響いた。


「……えっ……?」


 エルーナは目を見開き、言葉を失う。

 ソーマも一瞬息を呑んだ。

 エーメルは静かに続ける。


「魔王封印の後、私が国に帰った時……私は身ごもっていたの」

「……!」


 エルーナの心臓が高鳴る。


「その子は、人間との子供だった。けれど……ハーフエルフは古来より忌み嫌われてきた存在。まして王家の血を汚したと知れれば……生まれてくる子供の未来は明るくない……」


 エーメルの声が震える。

 女王としてではなく、一人の母親としての苦悩がにじみ出ていた。


「だから私は……魔王封印の疲れを理由に人前に姿を現さず、密かに出産した。そして……その子をルーナ様に託したの」


 その言葉に、エルーナは後ずさる。


「そ……そんな……信じられない……私が、あなたの……?」


 掠れた声で呟いたエルーナの視線が揺れる。

 胸の奥に生まれるのは戸惑いだけではない。

 どこか、言葉にならない怒りのような感情が混ざっていた。


「以前謁見した時、エーメルは迷っていたのさ。エルーナが娘だと明かすべきかどうか。あなた達が世界樹を救ってくれてから、エルフの人間に対する見方が変わってきた。だから……世界会議に来た今、明かすべきだと考えたのさ」


 ルーナ女王が静かに弁明する。

 しかしその説明を聞いても、エルーナの胸は収まらなかった。


「……信じられない……」


 唇を噛みしめ、エーメルに一歩近づく。


「今さら……信じるなんてできない! どうして今まで会いに来てくれなかったの!? 私が……どんな気持ちで……本当の親も知らずに……『ハーフエルフ』って蔑まれて……」

「エルーナ……」

「もしかして……本当は、なんとも思ってなかったんじゃないの!? ハーフエルフの子供なんていたら邪魔だから、ルーナ様に押しつけて……全部、なかったことにしたかったんでしょ!」


 声が震え、涙が滲む。

 責める言葉を口にしながらも、どこかで信じたい気持ちがあるからこそ、痛烈にぶつけずにはいられない。

 エーメルの顔が苦しげに歪む。


「……そんなはずがない! あなたは私の……大切な、大切な娘よ。会いたかった……ずっと会いたかった! でも……王としての立場が……私を縛ったの」


 必死の声が、部屋の静けさに響いた。

 視線が交錯し、張りつめた空気が場を支配する。

 その時、ソーマが思わず口を開いた。


「待って……エルーナ」


 ソーマの脳裏に、一つの違和感が浮かんでいた。


「……名前だ。エーメルとエルーナ……一見違うように見えるけど、()の文字を傾ければ()になる。文字の並びを少し変えれば――同じ名前になるんだ」


 ソーマの言葉に、エルーナははっとして顔を上げる。

 エーメルは涙をにじませながら微笑んだ。


「……その通りよ。私は、あなたに自分の名を託したの」


 エルーナの瞳に、次第に涙があふれていく。


「……お母さん……」


 その一言とともに、彼女は駆け寄り、エーメルの胸に飛び込んだ。


「信じられない……でも、分かる……心の奥が、ずっと求めていた……!」


 エーメルは娘を強く抱きしめ、堰を切ったように涙を流した。


「ごめんなさい……傍にいてあげられなくて……! 本当は抱きしめて育てたかったのに……!」

「……ううん、ありがとう……私を生んでくれて……!」


 二人は互いに抱き合い、泣き声を漏らす。

 その姿を、ソーマとルーナは静かに見守っていた。

 ルーナが小さく呟く。


「……これでようやく、ひとつの家族が再び繋がったな」


 ソーマは深く頷く。

 名前に隠された真実が、今ここに明かされた。


 ――一つの家族の物語が、ようやく始まりを告げたのであった。

 まぁ予想できた人いたと思います。

 キャラの設定考えててこの名前思いついた時、わし天才やんけとニヤニヤしてたのを思い出しました。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


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ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

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