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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第七章:同窓会? いいえ、真実のフラグです

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132:再会の驚きと伏せられたフラグ

 冒険者ギルドの訓練所。

 石畳の床にはすでに幾つもの足跡と砂埃が散らばり、熱気が充満していた。

 世界会議まで残された一週間の間ソーマたちは、元勇者パーティーに稽古をつけてもらうことになったのだ。


「さぁて。ソーマ、立って剣を構えろ」


 ゼルガンの声は雷鳴のように響き、訓練場に緊張が走る。

 ソーマは深く息を吸い、竜機剣(ドラグニル)を握り直した。額には薄く汗が滲む。


「手加減はしませんよ、ゼルガンさん!」

「……面白い。来い!」


 剣戟と盾の衝突音が炸裂し、金属の火花が散る。

 ソーマの一撃は鋭く放たれたが、ゼルガンの分厚い盾にあっさりと弾かれる。


(っ……重い! まるで岩壁を叩いてるみたいだ! でも――!)


 食いしばった歯がきしむ。

 押し返そうとするが、次の瞬間――


「甘い!」


 ゼルガンの膝が容赦なく突き上げられ、ソーマの体が宙に浮く。

 地面に叩きつけられる痛みが走り、息が詰まった。


「ぐっ……!」

「まだまだだな。元勇者の息子って肩書きは剣を強くしてくれるわけじゃない。お前はお前だ」


 痛みで滲む視界の中、ソーマは必死に立ち上がる。

 拳を握りしめ、ゼルガンを睨んだ。


「……それでも、俺は負けません!」


 その声に、端で腕を組んでいたケンがわずかに口角を上げる。


(いい眼だ……まだ剣筋は甘い。だが、この執念――俺が勇者だった頃と重なる)


 思わず心中で呟き、再び剣を振るう息子を見守った。


「よそ見をしてるんじゃねぇよ!」


 ケンに向かって炎を纏わせたバットで殴りかかるジョッシュ。

 それをあっさりとかわし木剣を叩きつけるケン。


「アドバイスとおり思いを込められる様になったようだがまだまだあめぇな」

「これで本当にギフト無しかよ……勝てる気がしねぇ……」


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 一方、別の場所ではランが指導に当たっていた。

 クリスティーナは魔法障壁を張り、エルーナは狙撃の構えをとる。


「いくわよ!」


 ランの拳が矢のように走る。

 クリスの障壁はパリンと音を立てて粉砕された。


「うそっ!? 全力で張ったのに……!」

「全力なつもりでしょ。魔力の練り方が雑なのよ。細い糸を束ねるように織り上げなきゃ」


 クリスの頬に悔し涙が滲む。

 だが彼女は歯を食いしばり、再び詠唱を始めた。


 その隙を狙って、エルーナが銃を構える。

 だがランは一歩、二歩と踏み込み、射線を完璧に外して懐へ潜り込んだ。


「狙いは悪くない。でも――速さが足りない」

「っ……!」


 汗が額を伝う。

 悔しさと焦りで胸が焼けるようだった。


 後方で見ていたゼルガンが爆笑した。


「やっぱりお前ら二人、歳くっても化け物だな!」

「褒め言葉と受け取っておくわ」


 ランは涼やかに言い、ケンも苦笑を浮かべる。

 だがその空気は、ソーマや仲間たちに強烈な現実を突きつけた。


(……勇者のギフトを失っても、父さんたちの強さは桁違いだ。俺たちじゃまだ、到底届かない)


 それでも諦めるわけにはいかない。

 ソーマの胸に燃える灯は、日に日に大きくなっていった。


 こうして怒涛の一週間が過ぎ、全員が確かな成長を実感していった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 そして――世界会議当日。


 王城の大広間には、各大陸の代表が集結していた。

 翠大陸アスエリスより、エルフの女王エーメル。

 輝く金髪と翡翠の瞳、まるで森そのものの気配を纏う気品ある女王。

 隣に立つのは、漆黒の髪を持つダークエルフの女王ルーナ。

 妖艶な気配を漂わせながらも、慈愛に満ちた瞳が印象的だった。


 鋼大陸アスガンドからは、ウォーガン王。

 ゼルガンの実兄にして、鋼鉄の巨人のような体躯を誇る男。

 その隣には鍛冶師リーダー、リシュー。

 巨大な槌を背にした眼差しは火花のように鋭い。


 聖大陸アストレアからは、白衣に包まれた聖女アルマ。

 黄金の髪を揺らし、柔らかな笑みを浮かべる姿は、まるで神話の象徴。

 護衛に立つのは騎士団長バラン。

 鋼甲冑に身を固め、凄烈な覇気を放つ。


 その中で――元勇者パーティーが再び顔を合わせた。


「セン! あんた……今まで一体どこに隠れてたのよ!」

「センドリックさん……本当に、生きて……」


 エーメルとアルマの驚愕は隠せない。

 ケンはわざと肩を竦め、ぶっきらぼうに笑った。


「まぁ……言いたいことは山ほどあるだろうが後回しだ。俺はもう勇者じゃねぇ。ただのおっさんだが……できることはやるさ」


 その言葉に、ゼルガンが腕を組み頷き、ランが静かに隣に立つ。

 失われた絆が再び紡がれていくような光景に、ソーマは胸の奥が熱くなるのを感じた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 やがて会議が始まる。

 各大陸代表が順に自己紹介を行った。

 堂々とした挨拶が続き、荘厳な空気が場を包む。


 そして――勇大陸代表補佐、ソーマたちの番。


「勇大陸代表補佐、ソーマ・フラハです」


 真っ直ぐな声が響き渡る。

 続いて仲間たちが名を告げる。


「ジョシュア・アーディンです」

「その妹、聖女の卵クリスティーナ・アーディンです」


 その瞬間――


「……っ!」


 聖女アルマと騎士団長バランの瞳が大きく揺れた。

 驚きと戸惑い、言葉にできない何かがそこにあった。


(……なぜだ? 聖女様もバラン殿も? 聖女会議の時に二人と会っているのに……)


 ソーマの胸に、不穏な影が差す。

 だが場はすぐに落ち着き、国王アルヴェロの声が響いた。


「――これより、世界会議を始める」


 その宣言は、大陸の命運を懸けた戦いの幕開けを告げていた。

 色々匂わせつつ会議は進みます。


※作者からのお願い


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