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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第七章:同窓会? いいえ、真実のフラグです

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130:揺れる覚悟と恋愛フラグ

 夜が訪れても、居間の衝撃は冷めやらなかった。

 リンの爆弾発言――


『ソーちゃんと結婚できるってことね!』


 あまりに破壊力抜群の一言に、重苦しかった空気は一瞬にして大混乱へと変貌してしまった。

 ソーマは頭を抱え、ゼルガンはこめかみを押さえ、ケンは深くため息をつき、ランは苦笑いを浮かべる。


(なんで……! なんでこんな時に恋愛フラグなんか立つんだよっ!!)


 ソーマの心の叫びは、当然ながら誰にも届かない。


 問題はここからだった。

 皆がそれぞれの思考に沈む中、リンは布団を抱えて堂々とソーマの部屋に乱入してきたのだ。


「ソーちゃーん! 一緒に寝よ!」

「な、なんでそうなるんだよっ!? やめろってば姉さ――!」


 必死に抵抗するソーマをよそに、リンはにやにや笑いながら布団を敷こうとする。

 その楽しそうな表情が余計にソーマの焦りを煽った。


「血が繋がってないってわかったんだから、もういいでしょ!」

「よくなーーーいっ!!」


 絶叫するソーマ。

 だがそのやりとりに割って入ったのは――


「ちょ、ちょっと待ったああああ!」


 真っ赤になったエルーナだった。

 後ろからはクリスとランも慌てて駆け込んでくる。


「り、リンさん! それは、いくらなんでも早すぎますっ!」

「そ、そうよ! みんなで泊まってるのに、二人きりでなんておかしいじゃない!」

「こうなるって分かってたから言うのを躊躇ったのよ……!」


 三者三様の必死の制止。

 だがリンは悪戯っぽい笑みを崩さない。


「えー? だってソーちゃんと結婚するんだもん。なら一緒に寝てもいいじゃない」

「結婚するって誰が決めたあああ!!」


 ソーマの悲鳴が夜の村に響いた。


 結局、女性陣の連携プレーによってリンはずるずると引きずられていき、ソーマはどうにか無事に一夜を過ごすことができたのだった。


(ほんと……心臓に悪い……)


 布団に潜り込んだソーマは、天井を見つめながら深いため息を漏らした。

 眠りにつくまでに、何度も寝返りを打つ羽目になったのは言うまでもない。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 翌朝。

 台所から漂う香ばしい匂いに、ソーマはようやく気持ちを落ち着けることができた。

 焼きたてのパンに野菜たっぷりのスープ、香ばしいハムエッグ――それは懐かしく、温かい家庭の味だった。


「さぁ、冷めないうちに食べましょう」


 ランの柔らかい声に促され、全員が席についた。

 昨夜の騒動で疲れていた心が、食卓を囲むことで少しだけ癒されていく。

 だが、避けては通れない話題が残っていた。


「……さて」


 ケン――いや、先代勇者センドリックが食器を置き、低く口を開いた。

 その瞬間、場の空気がぴんと張り詰める。


「昨日の続きだな。……俺を世界会議に連れていきたい、そういう話だったな」

「はい」


 ソーマは背筋を伸ばして頷いた。

 クリスもジョッシュも、エルーナも、そしてゼルガンまでもが真剣な眼差しでケンを見つめている。

 だがケンの表情は険しかった。


「だが……俺はもう勇者じゃない」


 その声は、どこか自嘲を含んでいた。


「魔王を封印した時、勇者のギフトは消えた。今の俺はただの剣士だ。……力を失った俺に、いったい何ができる」


 その言葉に、一瞬沈黙が広がる。

 だが――


「できることは、ある!」


 真っ先に声を張り上げたのはソーマだった。


「たとえ勇者の力を失っていても、父さんの経験と知恵は、これからの戦いに必要なんだ! 俺たちには……勇者じゃなくても、父さんという存在が必要なんだ!」


 拳を握りしめ、必死に訴えるソーマ。

 その隣でリンも身を乗り出す。


「そうよ! お父さんとお母さんが命がけで魔族と戦ってくれたから、今の私たちがいるの! ギフトがなくても、勇者じゃなくても……お父さんは私たちの誇りなんだから!」


 ランは夫に優しい笑みを向ける。


「あなた……ソーマとリンの言う通りよ。肩書きなんて関係ない。あなた自身が歩んできた道が、きっと人々を導くはず」


 ゼルガンも静かに頷いた。


「センドリック。千客万来と呼ばれたお前がそこにいるだけで、人は希望を見出す。たとえ勇者としての力を振るえなくとも、その言葉には力がある。……俺はそう思っている」


 全員の視線がケンに注がれる。

 ケンは深く目を閉じ、長い沈黙の後――


「……仕方ないな」


 小さくため息をつきながらも、口元にはわずかな苦笑が浮かんでいた。


「わかった。……世界会議に同行しよう」


 その言葉に、場の空気が一気に明るくなる。


「父さん……!」

「お父さん!」


 ソーマとリンの声が重なり、ランは胸に手を当てて安堵の微笑みを浮かべる。

 ゼルガンも「やれやれ」と肩を竦めながらも、目元は緩んでいた。


 その日、ケンとランは村中を回り、事情を説明した。

 弟子たちや村人たちは驚きながらも二人の決断を尊重し、温かく背中を押してくれた。


「師範が……先代勇者だったなんて」

「ランさんも……そんな大人物だったとは」

「村のことは俺たちに任せてください! 師範の教えを、魔族の奴らにぶつけてやりますよ!」


 尊敬と驚きの入り混じった眼差しに、ケンは少し気恥ずかしそうに「昔の話だ」と笑う。

 だがその姿は、村人たちにとって何よりも頼もしく映っていた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 そして翌朝。

 村の門前で、荷をまとめた一行は馬車の前に並んでいた。

 ケンとランも加わり、いよいよ王都への旅立ちの時が来たのだ。


「行こう、みんな」


 ソーマが声をかけると、仲間たちは力強く頷いた。

 リンはその隣に立ち、にやりと笑う。


「ね、ソーちゃん。世界会議が終わったら……結婚の話、続きしよっか」

「しないっ!!」


 ソーマの絶叫を背に、馬車はゆっくりと動き出す。


 ――その旅路の先に、さらなる真実と運命の岐路が待ち受けていることを、まだ誰も知らなかった。

 爆弾投下はまだまだ続きます。

 第7章はそういう章だから。


※作者からのお願い


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