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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第一章:おしまい? いいえ、始まりのフラグです

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13:これは終わりじゃない──新たなフラグ

 戦闘の余韻がようやく静まり、荒い息が少しずつ落ち着いていく。

 血と鉄の匂いがまだ濃く漂う中、ソーマがラチーナに視線を向けた。


「……オクトヴィアの皆さんは、なんでここに?」


 当然の問いだった。

 本来なら、彼女たちは別の依頼で動いているはずなのだから。

 ラチーナは短く息を吐き、拳についた血を乱暴に拭いながら口を開いた。


「……私たちも、最初はゴブリンの討伐してたんだ。けどな、妙なんだよ」


 言葉に呼応するように、仲間たちも無言で頷く。


「森を歩いてる途中でさ……まるで道を示されるみたいに足が動いた。『こっちへ行け』って囁かれるようにな。最初は勘かと思った。けど進むほどに確信に変わった――お前たちがここにいるってな」


 ソーマの胸に、ひやりとした感覚が走る。

 偶然にしては出来すぎている。

 なにかの意志が働いていたとしか思えない。


(……これが、フラグに干渉したって事なのか?)


「気がついたら、ダンジョンの入口に辿り着いていた。導かれるようにしてな」


 ラチーナは肩を竦め、苦笑を浮かべた。


「まさかこんな場所を見落としてたとは、不甲斐ない限りだが――結果的に、間に合った。それでいいだろ?」


 その声に、ソーマが小さく頷く。

 その瞳には驚きと同時に、確かな安堵の色が宿っていた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


「……ここが、ダンジョンの中心部?」


 重厚な扉を抜けた先、広間の中央にそれはあった。

 宙に浮かぶ、水晶のような球体――ダンジョンコア。

 魔物を呼び寄せ、迷宮を成り立たせる心臓部。


「これを壊せば……すべて収まるはずだ」


 ラチーナが静かに言うと、タオナが杖を構えた。


「……けど、これは――あんたたちがやりな」

「えっ? でも助けてもらったのは、俺たちの方で……」

「何言ってんだい。ダンジョンを見つけたのも、ジェネラルにトドメを刺したのもあんたたちだ。成果は、ちゃんと自分たちのものにしな」

「ラチーナさん……」


 その言葉に背を押され、ソーマは一歩進み出る。

 剣先をコアへ向け、強く握りしめ――突き立てた。


 瞬間、空間が震え、風が逆巻く。

 ひび割れる音と共に、球体は光を散らしながら砕け散った。


 静寂が戻る。

 誰もが深く息を吐き、重荷を下ろしたように肩を落とす。


「……これで、本当に終わりですね」


 カッセルが肩を回し、鎧の軋みを響かせながら安堵の笑みを浮かべる。

 レスクは無言で頷き、盾を地面に置いた。

 ジョッシュはその場に腰を落とし、息を荒げる。


「……生きてる……ほんとに、生きてるんですね……」


 クリスの目から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。

 ラチーナはそっとクリスを抱きしめる。


「……よく頑張ったね。胸を張っていい」


 その言葉に、重苦しかった空気が少し和らいだ。

 わずかな微笑みと、互いを労わる仕草――それが何よりの報酬だった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 崩壊したダンジョンから地上へ戻ると、森の空気は澄み渡り、どこか柔らかく感じられた。

 空を仰ぎながら、ラチーナはぽつりと呟く。


「……でも、これで終わりじゃない。きっとまた起きる」

「うん。でも俺たちは生きてる。また戦える」


 ソーマの瞳には、迷いのない光が宿っていた。

 その姿に、ラチーナはふっと笑みを浮かべる。


「頼もしい後輩じゃないか。……さ、クエストはまだ終わってないよ。報告するまでが仕事だからね」


 そうして一行は歩き出す。

 深く暗い森を抜け、再び光の差す道へ――


 戦いは終わった。しかし、物語は続いていく。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 ゲシュ町に戻った一行を迎えたのは、淡い橙に染まる夕暮れの空と、いつもと変わらぬ冒険者ギルドのざわめきだった。

 扉を押し開けると、依頼を読み上げる声や、冒険談に笑い合う声が入り混じり、温かな喧噪が広がっている。

 その中で、受付の男性がこちらに気づき、目を細めた。


「……おかえりなさい、オクトヴィアの皆さん。そしてソーマさんまで。例のゴブリン調査の報告、ですね?」


 代表してラチーナが前へ出る。

 表情は真剣そのものだ。


「ああ。森の奥でダンジョンを見つけた。……そしてダンジョンブレイクまで終わらせた」

「やはり……存在していたのですか」

「ただのダンジョンじゃなかった。あれは――遺跡だった」

「遺跡……?」


 受付官の眉がひそむ。

 ラチーナは言葉を選ぶように、ゆっくり続けた。


「階層は浅いが、整然としすぎていた。自然にできたものじゃない。祭壇らしき構造もあった。誰かが造ったとしか思えない」


 重苦しい空気が流れる中、ソーマが口を開いた。


「内部には異常な数のゴブリンが潜んでいました。ナイトやジェネラルまで……スタンピードの兆候があったため、即座にダンジョンブレイクを選択しました」

「……賢明な判断でした。もし町に出ていたら、被害は計り知れません」


 受付官は深く息をつき、奥の扉をノックした。


「マスター。ダンジョン調査の報告です」


 姿を現したのは、ギルドマスターの女性魔導士。

 気品ある装いに、老獪な光を宿した瞳。


「遺跡、ね……興味深いわ。魔法ギルドとしても調査したかったところだけど」


 彼女の言葉に、ソーマがすぐ頭を下げる。


「申し訳ありません。状況が切迫していたので」

「責めているんじゃない。町を守った、それが一番大事なこと。ただ……できれば証拠の一つでも残してほしかったわね」


 そのとき、タオナが勢いよく前に出る。


「ご安心を! 魔道カメラで映像も写真もバッチリです!」

「……本当?」


 魔導士の目が輝き、カメラを受け取ると映像に見入り――低く唸った。


「これは……自然生成では説明できない。魔法陣の痕跡、召喚の兆候、加工された建材……確かに人の手が入ってるわね……」

「ふふん、百枚以上撮りましたから!」

「頼もしいわね、タオナさん。こういう若者がいてくれると、未来も少し明るく見えるわね」


 こうして、調査および危険排除は正式に完了と認定され、オクトヴィアには報酬に加え特別協力金が支給された。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 夜──酒場にて。


「かんぱーいっ!!」


 ラチーナの明るい声が響き、ジョッキが高く掲げられた。


「飲んで食えお前ら! 今日は私のおごりだよ!」

「いやー、生きて帰ってこれたのが奇跡だな」

「マジで! 途中何度か詰んだと思ったし!」


 盛り上がる仲間たちを眺め、ソーマは微笑みながらジョッキを傾ける。


「とりあえず、一段落ってとこだな!」

「まだ俺たちは王都ギルドへの報告が残ってるますけどね」


 ラチーナが串をかじりつつ、ぽつりと呟く。


「でも……全部終わった気はしない」


 ソーマが頷く。


「あの構造も魔力の流れも……未完成だった。何かの実験中みたいな」

「もし同じものが他にもあるなら――」

「中央ギルドを動かさないと駄目だね。ゲシュ町の規模じゃ抱えきれない」


 夜は更け、皿が片付けられ、残ったのはジョッキの山。

 ソーマはふと夜空を見上げる。


(それでも……胸の奥に引っかかる何かが、まだ消えない)


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


【???視点】


 冷たく静まり返った空間。

 複雑な魔術文字が宙に浮かび、淡く脈打つ魔力が部屋を満たしている。

 フードを被った人物が立ち、掌で光る小さな宝珠を弄びながら、楽しげに呟いた。


「せっかく……()()()()()()のに、壊されてしまったか……」


 声に怒りはなく、愉快そうな笑みすら混じっている。


「でもいい。また作ればいいだけ。今度はもっと……面白く。試したいことは山ほどある」


 魔力が閃き、空間が光に呑まれていく。

 フードの人物の姿も、やがて光に溶けた。


 物語は――まだ、終わらない。


 そして、新たなフラグが静かに、確かに立った。

 これにて第1章完!

 初めて小説というものを書いてみましたがとにかく大変でした。

 色々語りたい事は活動報告にて書かせて頂きます。


※9/18追記 第1章大幅修正した結果35話が13話にまとまりました。

 ですが大分テンポが良くなったのでこれで良しとします。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

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― 新着の感想 ―
切りが良かったのでここまで読みました。 一話一話がそこまで長くなかったので気楽にページを進めて読み楽しむことが出来ました。キャラや世界観の設定もしっかりしていて物語の世界観がハッキリ見えてきました。…
感想一覧
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