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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第七章:同窓会? いいえ、真実のフラグです

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129:告げられた血脈のフラグ

 居間を包む空気は、まだ重苦しく張り詰めていた。

 誰もが息をひそめ、言葉を探している。

 そんな中で口を開いたのは――ゼルガンだった。


「ソーマ。……以前、アスガンドに行った時のことを覚えているか?」


 不意に投げかけられた問いに、ソーマは瞬きをした。

 ゼルガンの低い声は、重さを伴いながらも、過去を掘り返すような響きを持っていた。


「アスガンド……列車での移動のときに聞いた話のことですか? ゼルガンさんの妹さんと、商人の人が駆け落ちして……王都で宿屋を始めたって」


 ゼルガンはゆっくりと頷いた。


「そうだ。『猪熊亭』――覚えているな」

「ええ。あの話……忘れられるわけないです」


 ソーマが答えると、ゼルガンの表情に影が差した。

 その様子に、ソーマの胸の奥で、不安が静かに膨らんでいく。


「……その話には、続きがある」


 ゼルガンの言葉に、居間の空気がさらに重く沈む。

 ソーマは無意識に息を詰め、仲間たちも言葉を失ってゼルガンを見つめた。


「二人の間には……子供が生まれていた」

「……!」


 ソーマは驚愕に目を見開き、リンは両手を胸の前でぎゅっと握りしめた。

 ケンもランも、何も言わずにただ目を伏せる。


「だが……魔王復活の時のスタンピードに巻き込まれ、妹夫婦は命を落とした」


 その言葉に、ソーマの胸がぎゅっと締め付けられる。

 だがゼルガンは続けた。


「……しかし、その子供は生きていた」


 静まり返った空気に、その言葉だけが深く響く。

 ソーマは思わず前のめりになった。


「生きて……いた?」

「ああ。俺たちは魔王封印のため、王都の孤児院にその子を預けた……あの時は、戦いにすべてを懸けるしかなかったからな」


 ゼルガンの声には、自責の念と過去への後悔がにじんでいた。


「そして……魔王を封印した後、その子を迎えに行った」


 ソーマは固唾を呑む。

 リンは震える手でスカートを握り、母の顔をうかがった。

 ランは静かに視線を落とし、口を開かない。


「だが……俺には、その子を育てる自信がなかった。男手一つで子供を育てられるとは思えなかったんだ」


 ゼルガンは唇を噛み、苦しげに目を閉じる。


「だから……センドリックとサンドラ――ケンとランに託した。真実を伝える、その日まで」


 その言葉が告げられた瞬間、ソーマの心臓が大きく跳ねた。

 視線をリンに向ける。

 リンは震えるように目を見開き、呼吸が乱れている。


「……これが、ソーマ。俺が『まだ語っていない過去がある』と言った、その答えだ」


 ゼルガンの言葉は重く、決定的だった。


 ソーマは理解した。

 ――すべてが繋がる。

 自分の姉だと思っていたリンが、本当は……


「……母さん」


 絞り出すような声に、ランがゆっくりと顔を上げた。

 その瞳には、深い後悔と優しさが混ざっている。


「リン。あなたをこの村に連れてきたのは……王都の暮らしが辛い思い出で満ちていたからなの。リンはまだ幼かったから、はっきり覚えていないかもしれない。でも……孤児院で過ごした日々は、彼女にとって決して楽しい記憶ではなかったはず」


 ランの声が震え、リンは唇を噛んだまま、俯いた。


「だから、この村で……新しい生活を与えようと思ったの。成人したら、いつか真実を話すつもりだった」

「……じゃあ、どうして今まで黙っていたの?」


 ソーマの問いかけに、ランは苦しい表情を浮かべた。

 しばらく言葉を探し、それから小さく吐息を漏らす。


「それは……リンが、ソーマを弟ではなく……男の子として意識し始めていたから」

「――っ!」


 ソーマの顔が一気に赤くなる。

 リンも耳まで真っ赤になり、慌てて視線を逸らした。

 ケンは「ふむ……」と咳払いをして誤魔化し、ゼルガンは目を伏せて腕を組む。

 居間の空気は再び凍りついた。


「……そのせいで、真実を告げるタイミングを失ってしまったのよ」


 ランの言葉が静かに落ちる。

 ソーマの心は乱れていた。

 驚き、戸惑い、恥ずかしさ、そして……少しの安堵。


 そのときまで黙っていたリンが、ようやく顔を上げた。

 大きな瞳は揺れていたが、そこには覚悟の色もあった。


「……じゃあ……私は、お父さんとお母さんの子供じゃないのね」


 その声には震えが混じっていたが、不思議と涙はなかった。

 ケンとランは目を伏せ、しかし頷いた。


「そう……なの」

「……うん」


 リンはしばし沈黙し、両手をぎゅっと握りしめた。

 そして――


「じゃあ……ソーちゃんと結婚できるってことね!」

「――はあああああああああっ!?」


 居間が一瞬で爆発したような騒然とした空気に包まれる。

 ソーマは椅子から転げ落ちそうになり、真っ赤になって叫んだ。


「な、なに言ってんだよ姉さ――!」

「だって血がつながってないなら問題ないでしょ!? むしろ運命じゃない!」


 リンの顔は真剣そのもの。

 その姿にソーマの頭の中で、鮮烈な光景が走る。


 ――カチリ。


 脳裏に浮かび上がった文字。


『リンとの恋愛フラグが発生しました』


「う、うそだろ……こんなところで!?」


 頭を抱えるソーマをよそに、リンは頬を赤らめながらも満面の笑みを浮かべる。

 ゼルガンは頭を押さえ、ケンは苦笑い、ランは困ったように微笑むしかなかった。


 こうして――血脈にまつわる真実が明かされた夜は、衝撃と笑いと共に幕を閉じたのだった。

 第6話のタイトルを見てください。

 伏線は張っていました。

 ちなみに最初の設定では実の姉弟でした。


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