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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第七章:同窓会? いいえ、真実のフラグです

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127:暴かれるフラグ

 懐かしい空気が胸にしみ込むようだった。

 ソーマは深く息を吸い込み、幼い頃に過ごした故郷――ヒュッケ村の匂いを確かめる。

 だが、その懐かしさに完全に浸ることはできなかった。

 胸の奥に、緊張と不安が入り混じっている。


(村は……大丈夫なんだろうか? 魔族が活発になっているって聞いてる。父さんと母さん、それに村の皆は……)


 確かめるべき場所は決まっていた。

 まずは村のギルド――情報の中心だ。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 ギルドの厚い扉を押し開けると、中には数人の冒険者と職員が行き交っていた。

 普段なら談笑や注文の声が飛び交うはずの空間には、どこか張りつめた空気が漂っている。


「……おお、ソーマじゃないか!」


 カウンターの奥から現れたのは、支部長イルム。

 中年に差し掛かる丸顔の男で、その人柄の温厚さとは裏腹に、村を取りまとめる胆力を持っている人物だ。


「イルムさん、ただいま戻りました」

「おお、無事で何よりだ。……今は村も落ち着かん時期だからな」


 イルムの声には安堵と、しかし拭いきれぬ疲労が滲んでいた。

 その響きにソーマの胸はざわめく。


「村の状況は……どうですか?」


 真剣な眼差しを向けると、イルムは深く息を吐き、腕を組む。


「正直に言おう。よくない。魔物はもちろんだが……魔族が出没するようになっている」

「……魔族が?」


 仲間たちの顔色が変わった。

 エルーナは眉をひそめ、低くつぶやく。


「ここは辺境でしょう? 魔族が直接姿を見せるなんて……」

「ああ。それでも南の魔大陸に近いからな、影響はどうしても出てくる」


 イルムは重苦しい声で告げると、一度言葉を切り、表情を和らげた。


「それでもなんとか村が持ちこたえているのは……ケンさんとランさんのおかげだ」

「父さんと母さんが……?」


 思わず声を上げたソーマに、イルムは大きく頷く。


「あぁ。二人が率先して戦いに立ち、魔族を追い払ってくれている。あの二人がいる限り、村は安心だと皆が信じている」


 その言葉を聞いた瞬間、ゼルガンの眉が僅かに動いた。

 ゼルガンはソーマを見やり、低く確認するように問いかける。


「……今、ケンとランと言ったか?」

「え? はい。俺の父さんと母さんですけど……」


 ゼルガンはしばし黙り、腕を組み直し、首を傾げた。

 その仕草には、思考の奥底で何かが引っかかっているような違和感がにじんでいた。


「……いや、何でもない」


 それ以上は何も言わず、目を伏せる。

 ソーマは首をかしげたが、今は問い詰めるべきではないと直感した。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 ギルドを後にした一行は、ソーマの実家へと向かった。

 見慣れた街並み。

 幼い頃に駆け回った小道。

 角を曲がるたびに記憶がよみがえる。


(懐かしい……でも……)


 温かい郷愁の中にも、心は落ち着かなかった。

 やがて家の前に立つと、玄関には一枚の札が下げられている。


『御用の方は道場へ』


「道場……か」


 ソーマは苦笑混じりに呟いた。

 父と母にとって、家以上に大切な場所――それが道場なのだ。


 一行は道場へと向かう。

 近づくにつれ、木刀の打ち合う鋭い音と、弟子たちの掛け声が響いてきた。

 扉を開け放つと、広々とした板張りの空間に数人の弟子たちが汗を飛ばして稽古に励んでいた。


 その中心で指導に立つ二人の姿があった。


 父の堂々たる体躯、鍛え抜かれた筋肉。

 鋭い眼差しで弟子を見据え、木刀を一閃する姿はまさに師範そのものだった。


 ランのしなやかで無駄のない動き。

 弟子の姿勢を直しつつ、時に優しい笑みを見せるその姿は、凛とした気品に満ちていた。


 懐かしい光景に、ソーマの胸が熱くなる。


「父さん……母さん……」


 小さく漏らした声に、二人が同時に振り向いた。


「ソーマ……!」

「まぁ……! ソーマじゃない!」


 瞬間、道場の空気が張り詰めた。

 弟子たちが動きを止め、視線を集める。

 ケンとランは稽古を中断し、ゆっくりと歩み寄ってくる。


「久しぶりだな……元気そうで何よりだ」

「本当に……無事でよかった」


 両親の姿に胸が詰まり、ソーマは思わず深く頭を下げる。


「ただいま……!」


 その瞬間だった。

 背後から低く、しかしはっきりとした声が響く。


「……久しいな。センドリック、サンドラ」


 場の空気が凍り付いた。

 ケンとラン――いや、そう呼ばれた二人の顔が、はっきりと強張る。


 ゼルガンは真っ直ぐに二人を見据えていた。

 まるで長い時を越えて旧友に再会したかのように。


「……っ!」


 ソーマは言葉を失い、両親とゼルガンを交互に見た。

 父と母の瞳に浮かんだのは、驚愕、そして――隠しきれぬ過去の影。


「センドリック……サンドラ……? それって……どういうこと……?」


 ソーマの声は震えていた。

 その名は、先代勇者とその仲間の女格闘家の名だった。


 弟子たちはざわめき、道場の空気は一層重くなる。

 これまで知らなかった真実が――今、暴かれようとしていた。

 ソーマの父と母が先代勇者とその仲間って予想できてた人、手を上げてください。

 次回さらに爆弾投下されます。


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