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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第六章:新年会? いいえ、波乱のフラグです

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119:架け橋を繋ぐ最後のフラグ

【栄光への架け橋:ユーサー・インサラム視点】


 翠大陸アスエリス。

 広大な森が波打つように広がるこの地に、僕たち【栄光の架け橋】は足を踏み入れた。

 大陸全土を覆う緑は、どこまでも濃く深い。

 森の吐き出す湿った空気が肺を満たし、鼓動を重くする。


 依頼は一見、単純なものだった。

 ――この大陸に存在するという聖女の卵を説得し、聖女会議に連れて行くこと。


 勇者候補である僕、聖女候補のシオニー。

 仲間であるジェラウド、エーデル、アイムに課された使命は、それだけのはずだった。


 だが、森は僕たちを拒むかのように、ひたすらに冷たく暗かった。


「……フォレストエルクに乗れていればなぁ」


 斥候のアイムが低く呟き、鬱蒼とした枝葉を払いながら先を進む。


 翠大陸の誇る聖獣フォレストエルク。

 この地を旅する者にとって欠かせぬ足であるはずの彼らは――僕たちを拒絶した。


「私のせいで徒歩になってしまって、ごめんなさいね」


 そう言ったのは、今回の依頼の案内役を務める僕たちの担当受付嬢――ツィーナだった。

 彼女の微笑みは穏やかに見えたが、どこか張り付いた仮面のように思えた。


「……あんたが腹黒いからじゃないの? フォレストエルクも本能で察したのよ」


 すかさずシオニーが刺のある言葉を投げる。

 僕の隣で険しい表情を見せる彼女の声には、敵意すら混じっていた。


「ふふ……あなたほどじゃないと思うけど?」


 ツィーナの挑発的な笑み。

 空気がぴりぴりと張り詰める。


「やめろ、二人とも」


 僕は慌てて声を上げ、二人の間に割って入る。


「今は喧嘩している場合じゃないだろ」


 言葉で押さえ込んだものの、心の奥に嫌な予感が巣くった。

 その時、背後から声が飛ぶ。


「リーダー、そのマント……」


 魔法使いのエーデルが顎をしゃくった。

 振り返ると、僕のマントが風にはためいている。

 裏地に縫い付けられた布――それは、ソーマが作ってくれた団旗だった。


「それって……ソーマが作った旗だろう? いつの間に……」


 ジェラウドも目を丸くする。


 僕は思わず顔が熱くなるのを感じた。


「あ、ああ……ただ、持っていたくてな」


 ごまかすように言う僕に、アイムがにやりと笑いかける。


「へぇ、勇者様がそんなにソーマにご執心とはな」

「う、うるさいっ!」


 思わず声を荒げる。


 だが、胸の奥に誇らしさが湧き上がっていた。

 ソーマが作ってくれた旗を纏うことで――どんな困難にも立ち向かえる気がしたのだ。


 しかし、その矢先。


「……止まれ」


 ジェラウドが低く唸り、盾を構える。

 アイムの耳が僅かに動く。


「……何か来る」


 森の空気が変わった。

 生暖かい粘りつくような瘴気が、足首に絡みつく。


 ざわり、と木々が揺れた瞬間――


「ここでいいかしら」


 ツィーナの声が背後から響いた。

 僕たちの列から一歩下がり、妖艶な笑みを浮かべる。


 両手を広げ――


「来なさい、私の愛しい子たち」


 地面が蠢き、森が呻く。

 無数の蛇が土から這い出し、木々から落ち、地面を埋め尽くすように現れた。


「っ……!」


 黒、緑、赤――色とりどりの鱗。

 視界いっぱいにうねる蛇の波に、全身の毛が逆立つ。


「構えろ!」


 僕の声で仲間たちが一斉に武器を抜いた。


 ジェラウドが盾で蛇を弾き、エーデルの氷で凍てつかせる。

 アイムの短剣が閃き、数匹の蛇を斬り伏せる。


 だが――


「数が……多すぎる!」

「きりがない……っ!」


 蛇は倒しても倒しても尽きることなく湧き出し、やがてジェラウドが膝をつき、エーデルが杖を落とし、アイムが地に崩れ落ちた。


「こんな……ところで……」

「まだ……死にたく……」

「たす……け……」


 仲間たちの声が掠れていく。


 残ったのは、僕とシオニーだけ。


「な、何が目的だ!」


 僕の叫びに、ツィーナは唇を歪めた。


「決まってるじゃない。勇者と聖女候補を殺すことよ。そのために……一年以上もあなたたちに付き合ってあげたんだから」

「っ……!」


 裏切り。

 その事実に血の気が引く。


 だが剣を握る手は、震えながらも離さなかった。


「……ここで僕たちが倒れても、意思は繋がれる。僕たちの絆は消えない!」


 マントを握りしめ、旗を胸に押し当てる。


「これを作ったソーマに……必ず託される!」


 その名を口にした瞬間、ツィーナの表情が変わった。

 にやりと笑みを浮かべ――その姿が、溶けるように変化する。


 蛇を模した艶めかしい衣装、紅の瞳。


「……ソーマ、ね」


 艶やかに囁く声。

 僕の背筋に戦慄が走る。


「殺すつもりだったけれど……気が変わったわ」


 視線は、震えるシオニーへと注がれる。


「シオニーを助けたいでしょう?」


 彼女は黒い蛇を掴み、僕の前に差し出した。


「助けたければ――この子を飲みなさい」

「……っ!」


 胸がざわめき、胃が捻れる。

 黒蛇の瞳は、深淵の闇を映していた。


「やめて、ユーサー! そんなの……!」


 シオニーの声が必死に響く。

 だが僕の足は、勝手に前へと進んでいた。


「……僕は……仲間を……愛する人を、見捨てられない!」


 蛇を掴み、喉へ押し込む。


「ぐああああああっ!」


 体が灼ける。

 血が逆流し、内臓が焼かれる。

 吐き気と共に血を吐き、膝をつく僕に、シオニーが駆け寄る。


「ユーサーっ!」


 その腕に支えられながら、霞む視界で彼女を見た。


「ユーサーを助けたければ……聖女会議で――聖女を殺しなさい」


 ツィーナの声が冷たく響く。

 シオニーの顔が絶望に歪み、震える声で答えた。


「……わかった……! わかったから、ユーサーを……!」


 僕はその手を掴もうとした。

 だが力は、もう残っていなかった。


(……すまない、シオニー……)


 口の中に血の味が広がる。

 意識が遠のく。


 最後に思い浮かんだのは――ソーマの顔。


(……魔王が復活して、勇者に選ばれたら……もう一度、一緒に……)


 共に笑い、未来を語った日々。

 背中を預け合った戦い。

 あの旗の輝き。


(……僕がいなくても……ソーマなら……きっと……)


 胸の奥で、最後の祈りが灯る。


 団旗に描かれた夜空の星々と、架け橋の先に広がる光を胸に抱き――僕の意識は、闇へと呑まれていった。

 これにて第6章完結です。

 第6章も無事に毎日投稿する事が出来ました。

 いやぁ自分で決めたストーリーですが後半書くペースが明らかに落ちました。

 まぁその辺の感想も含めて近況報告で書かせて頂きます。

 物語はこのまま第7章へと移ります。

 第7章も毎日更新目指して書き続けます。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

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