表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第六章:新年会? いいえ、波乱のフラグです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/149

117:芽生えるフラグ

 聖都を覆っていた夜は、長く重かった。

 謎の三人が姿を消し、街を埋め尽くしていた魔物も討伐された。

 戦いは――ひとまず、終わった。


 だが、それは決して()()ではなかった。


 瓦礫と化した街並み。

 泣き叫ぶ市民の声。

 失われた命の数は、決して少なくはない。

 結界を張っていた魔石の多くが砕かれ、聖大陸アストレアを護っていた障壁は大きく揺らいでいる。


 そして、何より――勇者に最も近い存在だったユーサーの死。

 さらに、聖女の命を狙い剣を振るってきたシオニーは、気を失ったまま鎖をかけられていた。


「待ってくれ! シオニーはユーサーを人質を取られていただけなんだ!」


 ソーマは声を荒げたが、騎士団長バランは厳しい目を向ける。


「彼女が聖女様を狙ったのは事実だ。事情があろうと……我らが見逃すわけにはいかぬ」

「……っ!」


 ソーマは言葉を失い、ただ連れ去られるシオニーの背を睨みつけるしかなかった。


 一連の騒動の後、聖堂の一室にて、ソーマたちは聖女アルマとバランに呼ばれ、事情を説明していた。


「……では、改めて伺います」


 アルマの声は震えを抑え、冷たく響く。


「あなたたちが相対した三人……彼らは魔族ではないのですね?」


 ソーマは重く頷いた。


「はい……。本人たちも否定していましたが魔族とはまるで違う。もっと……異質で、底が見えない存在でした」


 クリスが続ける。


「彼らは自らを『デスヴェル』『ヴェリディス』『ヴェリク』と名乗っていました。そして……『魔王の復活は近い』とも」


 アルマの顔に、深い陰が落ちる。


「やはり……。聖女が死ねば、封じられている魔王は蘇る。彼らの目的は……それだったのですね」


 静寂が満ちる。

 ソーマは拳を握りしめた。


(……結局、俺たちは何を守れた? 街も……人も……ユーサーも……)


 アルマの言葉が追い打ちをかける。


「魔王復活の時は近い。勇者候補に最も近い存在を失った今、世界の未来は……一層暗くなりました」


 場に漂う絶望を、誰も拭えぬまま波乱の聖女会議は終わった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 その夜。

 ソーマたちは教会の客室に泊まることになった。

 誰もが疲労困憊で、廊下を歩く足取りは鉛のように重かった。


 ソーマは部屋に入ると、そのままベッドに腰を下ろす。

 深い溜息が零れる。


(結局……俺は守れなかった。フラグを壊せる力があったはずなのに……ユーサーを……)


 拳を握り、頭を抱える。

 悔恨が胸を焼き、自分への怒りが全身を蝕む。


 ――その時。


 扉を叩く小さな音が響いた。


「……ソーマさん、起きていますか?」


 聞き慣れた声に、ソーマははっとして立ち上がる。

 扉を開けば、月明かりを背にしたクリスが立っていた。

 その顔には、強がりと不安が入り混じっている。


「……なんだか……眠れなくて」

「俺もだ」


 二人は小さく笑みを交わし、クリスは部屋に入った。

 彼女は窓辺に腰を下ろし、夜空を仰ぐ。


「……静かですね。あんなに騒がしかったのに、今は……」

「静かすぎるくらいだな。まるで、何もかも奪われた後みたいだ」


 口にしてから、ソーマは唇を噛んだ。

 クリスは首を横に振り、優しい声で言った。


「でも、ソーマさんがいたから……生き残れた人もいる。私も、シオニーも」


 その言葉に、ソーマの胸に熱が込み上げる。

 同時に――視界に赤いウィンドウが点滅した。


《クリスティーナとの恋愛フラグが発生しました――破壊しますか?》


(……なっ……!? 切り忘れてた……!? 今このタイミングで……!)


 鼓動が跳ね上がり、手のひらに汗が滲む。

 だがクリスはそれに気づくはずもなく、静かに続けた。


「……ソーマさんはいつも自分を責めすぎです。全部を背負わなくても……いいんですよ」


 その優しさに、胸の奥の緊張がほどけていく。

 気づけば、ソーマの腕がクリスの肩を抱き寄せていた。


「ソ、ソーマさん……?」

「……すまない。今だけでいい……こうしていないと、俺が……壊れそうなんだ」


 震える声。

 クリスは驚きに目を瞬かせたが、次の瞬間、静かに彼を抱き返した。


「……壊れそうなのは、私も同じです」


 二人の鼓動が触れ合い、熱が混ざり合う。

 視線が自然と絡み合い、距離は一気に縮まって――


《クリスティーナとの恋愛フラグが発生しました――破壊しますか?》


 赤い文字が点滅する。

 だがソーマは、もう迷わなかった。


 ウィンドウを無視し、クリスの唇に自らの唇を重ねた。


 柔らかい温もり。

 戦いの記憶も後悔も、すべてを溶かすようなひととき。


 長い口づけののち、二人はゆっくりと唇を離した。

 言葉はなかった。

 ただ、互いの瞳の奥に――確かな想いが芽生えていた。


 その夜、ソーマの部屋には、静かなぬくもりが灯っていた。

 やっ……やったんか!やったんか!?


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ