表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第六章:新年会? いいえ、波乱のフラグです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/149

103:機械竜の力と不安のフラグ

 戦いの直後、ソウル町はまだ煙の匂いに包まれていた。

 砕けた壁、焼け焦げた瓦礫、倒れた屋根――

 町の至る所に、昨夜の影との戦いの爪痕が刻まれている。


 だが、町人たちの表情は絶望ではなかった。

 むしろ、そこに宿っていたのは希望だった。

 影の魔族は討ち倒された。

 外壁を覆っていた闇は、クリスの結界で祓われた。


「みなさん、本当に……ありがとうございました!」


 瓦礫を片づけていた若者が、ソーマたちに深々と頭を下げる。


「いや、俺たちはやれることをやっただけだ」


 ソーマは手に持った木材を積み直し、額の汗をぬぐった。

 ジョッシュは子供たちにせがまれ、炎で薪を燃やして仮設のかまどを作っていた。


「へっ、腹が減ってちゃ復興もできねぇからな! ほら、よく燃えるだろ!」

「すごい!」

「あったかい!」


 子供たちの歓声に囲まれ、ジョッシュは得意げに鼻を鳴らした。

 一方、エルーナは治療所で負傷者の応急処置を手伝っていた。


「動かないで。……はい、これでしばらくは持つわ。ちゃんと安静にしてなさい」


 患者の肩を叩く手つきは冷静だが、その表情はどこか柔らかかった。


 クリスは祈りを込めながら回復魔法を施し、人々の疲れを癒していた。

 光に包まれるたび、患者の顔には安堵の笑みが広がっていく。

 町全体が痛みに呻きながらも、確かに前へ進もうとしていた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 ――復興の手伝いを終えた一行は、中央広場に近い宿屋に泊まることになった。

 戦いで消耗した体は鉛のように重く、湯と食事でようやく人心地がつく。


 宿の主人は涙を浮かべ、ソーマたちに厚く礼を述べた。


「皆様がいなければ……ソウルはもう影に呑まれていたでしょう。本当に……ありがとうございます」


 夕食の卓に並んだのは、簡素ながら温かな料理だった。

 焼き立てのパン、野菜のスープ、煮込んだ肉。

 その一つ一つが、戦いを生き延びた町の今を示していた。


「うんめぇ……! やっぱ戦ったあとは肉に限るな!」


 ジョッシュは骨付き肉を豪快にかじり、満足げに唸った。


「こんなに温かい食事……当たり前のことが、こんなにありがたいなんて」


 クリスはスープを口に運び、思わず目を細める。

 エルーナはワインを一口含み、窓の外を見やった。


「町の灯り……消えなくてよかったわね」


「俺たちは……ちゃんと守れたんだな」


 ソーマは仲間たちを見回し、静かに言った。

 その夜、一行は柔らかな寝台に身を沈め、久方ぶりの安らかな眠りを得た。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 翌朝。

 町の人々に見送られながら、一行は王都への帰路についた。

 ギルドが用意した魔獣馬車に乗り込み、車輪の音が石畳を叩いて遠ざかっていく。

 馬車の中は、穏やかな揺れと木の軋む音だけが響いていた。


「……なぁ、せっかくだし新装備の説明、ちゃんと聞かせてもらうぜ?」


 ジョッシュがバットを撫でながら口火を切る。


「昨日は戦いっぱなしで、詳しいこと聞けなかったからな」

「そうだな」


 ソーマは頷き、膝に置いた竜機剣(ドラグニル)を見下ろした。

 赤と金に輝くその剣は、まだ僅かに熱を帯びているように思えた。


「まず……この剣は銃にも変形する。昨日使ったように、魔力を込めた弾丸を撃ち出すこともできる」


 ソーマはグリップ部分を示し、説明を続ける。


「それだけじゃない。剣モードで引き金を引けば、弾丸に込められた魔力が刃を纏うんだ。昨日、最後に影を断った一撃……あれはその機能を使った」

「つまり、弾丸を変えれば……属性攻撃ができるってことね」


 エルーナが目を細め、片眼鏡を押し上げる。


「ああ。炎の魔弾を込めれば炎を纏った斬撃になる。氷なら氷、雷なら雷。使い方次第で戦術は無限に広がる」

「すっげぇじゃねぇか!」


 ジョッシュは感嘆の声を上げる。


「そりゃあ昨日の魔族も一撃で斬れるわけだ!」


 ソーマは新たな鎧へと視線を移す。


「それと……竜機装(ドラグレギナ)のことも話しておくな。魔力を込めれば左腕から魔力のシールドを展開できる。昨日、巨大な拳を受け止める時に使ったやつだ。それだけじゃない。脚部に仕込まれた魔力駆動で、一瞬だけ速度を跳ね上げられる。間合いを詰める時や、逆に緊急回避に使える。ただし、魔力の消費は激しいから乱発はできない」

「守りと速さ……まさに盾と翼の役割ですね」


 クリスが感嘆の息をもらす。

 ソーマは一瞬言葉を止め、真剣な顔になる。


「……でも、まだ一つ切り札がある。俺としては……使うことがないことを願ってる」


 その声音には、重い響きがあった。

 仲間たちは詮索せず、ただ静かに頷いた。


「クリス。世界樹の杖はどうだった?」


 ソーマが問いかける。

 クリスは樹命杖(ユグドラシルロッド)を抱き、目を閉じて微笑む。


「今まで以上に……聖なる力が増幅されるのを感じました。祈りを込めたとき、まるで世界樹そのものが私の背を押してくれるようで。……あの結界の広がり方は、私自身も驚きました」

「クリスがいてくれたから、町は救われたんだ」


 ソーマは穏やかに言った。


「俺の竜炎撃棒(ドラグスマッシャー)もよ、炎の威力が増したぜ。殴ったときの火力が前より強ぇ。おかげで影の群れも一気に蹴散らせた」


 ジョッシュがおニューバットを掲げ、ニヤリと笑う。


「少しでも強くなってるのなら、それで十分よ」


 エルーナが冷静に返しながら、片眼鏡を指で軽く叩いた。


「私は……この竜眼照準(ドラグスコープ)から流れ込んでくるの。敵の魔力の流れ、距離、風速……狙撃のための情報が鮮明に流れ込んでくる。正直、少し怖いくらい。まるで……世界のすべてを見通すような気がして」

「でも、それがあるから影の魔物を倒せた。……昨日、あれがなかったら俺たちは押し潰されていた」

 ソーマは真剣な眼差しでエルーナを見つめ、言った。

「……そうね。じゃあ、ありがたくこの眼を使わせてもらうわ」


 エルーナは一瞬目を逸らし、そして小さく笑った。

 馬車の車輪がゴトリと音を立て、外の景色は徐々に緑から石造りの街並みへと変わっていく。

 それぞれの武具は確かに力を増しており、一行の心には新たな自信が芽生えていた。

 だが同時に、ソーマの胸の奥には小さな棘が残っていた。


(これだけの力を与えられても……魔族はさらに恐ろしい力を持って現れる。俺たちがどこまで抗えるのか……)


 揺れる馬車の中、ソーマは剣を見つめ、静かに心に誓った。


「必ず……この力で、皆を守る」


 こうして、一行は王都へと戻っていくのだった。

 個人的に設定説明する回が楽しい。

 読者の方の反応が少し怖いですが……


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ