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ガーランディア防衛戦(1)


 

 ルシウスがノインを連れて城内に入った直後――。

 バルコニーの片隅ではロディとアリーシャが向き合っていた。


「アリーシャ、君はシャンティを連れてノイン様の元へ!」


「分かりました! あなた、ご武運を!」


 両親の遣り取りに小首を傾げているシャンティをアリーシャが抱き上げ、城内に駆け込んで行く。それを尻目に、ロディはノルギスの側に駆け寄り跪いた。


「陛下、護衛をお許し下さい」


「許す。だが死ぬなよ。わしがノインに叱られるからな」


「お言葉ですが陛下、それはお互い様かと……」


 ロディが苦笑して諫めると、ノルギスは哄笑した。


「確かにそうだな。ではお互いに死なぬようにしよう」


 そんなノルギスとロディの遣り取りを聞いて、ゼルビアは薄く笑んでいた。


(感謝するぞ。ノルギス王)


 ゼルビアはロディとアリーシャが重用されていることが嬉しかった。二人がデルフィナ王国を出た経緯に少なからず負い目を感じていたのである。


 ゼルビアは決して何もしなかった訳ではなかった。ロディとアリーシャに対する仕打ちを見咎め、幾度も改めるようにとルリアナに言ってきた。

 だが、ルリアナは耳を貸そうとさえしなかった。


『あの子は心の成長が遅いだけです。根気強く接していれば、いずれ必ず分かるようになりますわ。愛情深く、教え諭していきましょう』


 そう言っていた王妃が突然死した。証拠は残されていないが、やったのはルリアナだった。口うるさく戒める母を邪魔に思っていたところをドルモアに唆され、与えられた毒で亡き者にしていた。

 ゼルビアは王妃のことを想いルリアナを疑うことはしなかった。ただ不信感は抱いた。この一件でゼルビアは、ルリアナだけでなく、その歪みに感化されている節があるロディを遠ざけるようになった。

 なにしろ暗殺者。ロディはデルフィナ王国に根強く残る優生思想に傾倒している節もあった為に、ゼルビアは叛意と弑逆を怖れて手を拱いたのである。


 かつて、ドルモアから出された提案を呑んだ理由もそこにあった。


『特権階級などというものは飾りでしかありません。人の本質はそこにはないということを実感させるには、側に置くことが理解を深める近道でしょう。とはいえ何の能力も持たぬ者を側に置いても意味はありません。デルフィナ王国では、暗殺に長けた者を側仕えとする慣習があるようですから、身分を持たない暗殺者を育成してみては?』


 ゼルビアは幼いドルモアの聡明さに惑わされ、口車に乗せられた。まさか自国民を用いた凄惨な選別を見せられるとは思ってもみなかった。


 騙されたと憤慨し抗議したことでアラドスタッド帝国との関係は悪化したが、図らずもその生き残りであるアリーシャと触れ合うことで、ロディの歪みは消えていった。


 そして現在では夫婦になり、子供もいる。


 ゼルビアは多くの失敗をしてきたという自覚がある。自身を愚王だとさえ思っている。その采配によってどれだけの者を苦しめてきたかと悔恨の日々を過ごしている。

 そんな中で、運命の荒波に翻弄されても、乗り越えて幸せを掴んだロディとアリーシャを見ると救われたような気がするのだった。

 

 



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