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《アスラ! ディーヴァ! 力を貸して!》


 私の体から雄叫びと唸りを上げてアスラとディーヴァ、ラーマまで飛び出した。左右に分かれて二匹のマーマンに襲い掛かる。それに合わせて、ルシウスが真ん中のマーマンに駆け寄り腰の鞘から剣を抜き放った。両刃の長剣で逆袈裟に切り上げる。


 マーマンは、まさか攻撃をされると思っていなかったようで防御が遅れていた。咄嗟に槍で防ごうとしたみたいだけど、ルシウスはその隙間を斬って駆け抜けた。


 静かに血が散るその脇で、アスラがマーマンの槍ごと大剣の打ち下ろしで真っ二つにしていた。ズルリと左右に断たれたマーマンが地面に倒れ、黒い染みを作っていく。


《ラーマ、手を貸すか?》


《いらない! ここは僕とママでやる! パパはノイン様と行って!》


 ラーマはディーヴァと一緒になってマーマンに襲い掛かっている。小さいのに、とっても勇敢で頼もしい。アスラもディーヴァも、ラーマの返事に誇らしげだ。


「ノイン! ジェネラルを討つよ!」


「分かってる! アルト! シクレア!」


《ノイン、足を開いて!》


 アルトが私の股の間を潜るようにして、私を背に乗せる。


《先に行くわね!》


 シクレアは私の胸から飛び出し、先に駆けているルシウスの側に向かった。


 マーマンジェネラルの顔からにやけた笑みが消え、敵意が剥き出される。



【名称】マーマンジェネラル

【真名】???

【種族】魔人

【性別】オス

【魔物ランク】B

【スキルA】水撃

【スキルB】投擲

【スキルC】魚人ノ呼子

【スキルD】???



 アルトに乗って進んでいる間に、私は敵の情報を確認した。

 目に映る魔物の光はずっと赤のまま。しかも見たことがないくらい赤い。


 いえ、これは……!


 何かおかしい。赤い中に、黒ずんだ靄が漂っているのが見えた。

 陽炎のような揺らめきがマーマンジェネラルから放たれている。


 私は嫌な予感がして、みんなに声を掛けようと口を開いた。


 その瞬間、ピシリ――という音がした。世界が止まり、色を失う。


 これは、エルモアの訪れ。てことは、やっぱり何かあるのね。


(ええ、挨拶をする間も惜しい事態です)


 視界の端から、クピドのエルモアが現れる。

 今回は宙返りをせず、切羽詰まったような顔をしている。


(ノインさん、ギリアムを覚えていますか?)


 ええ、ルシウスのことを裏切った護衛騎士でしょう?


(この村のマーマンによる襲撃は、あの男が関わっています。いえ、はっきり言いましょう。あのマーマンジェネラルは、ギリアムに従っています)


 え、従っているって……まさか私と同じ力があるってこと⁉


 エルモアはかぶりを振る。


(そうではありません。あれは魔法による従属のようです。何もかもを滅ぼそうとする邪悪な意思が感じられます。あれは、僕の知らない力です)


 エルモアが知らない⁉ なによそれ⁉ そんな魔法があるの⁉


(あります。僕が把握しているのは、僕から生じ、僕の上で育まれ、僕に還るものが持つ力だけです。外から来たものの持つ力に関しての知識は皆無なんです)


 それって、まさか他の惑星から侵略に来た何かがいるってこと⁉


(はい。おそらく、他の星の力だと思われます)


 エルモアが言うには、隕石ではないかということだった。そこに宿っていた邪悪な意思が、感応する対象に力を貸し与えている可能性が高いらしい。


(ノインさんはもうお気づきでしょうけど、僕は万能ではありません。できることは限られています。ですので、気づくのが遅れてしまいました)


 それは、仕方ないよ。気を落とさないで。


 私は、肩を落とすエルモアにそう声を掛けて慰めた。

 エルモアは、自分の上で起きているすべての事象を網羅することはできない。

 人のように、一つの場面を見聞きするのが精一杯なのだそうだ。それでも、望んだ場所の情報を得られるのだから、十分すごいんだけど。


(それで、その邪悪な力を与えられている者なんですが……)


 ドルモアって訳ね。


 エルモアが眉を下げて頷く。


(どうも、僕は欺かれていたようなんです。ドルモアは口数が少ないですし、ほとんど一人でいますから、情報を得るには、その周囲からが主だったんです)


 エルモアはそれが当たり前になっていることに最近になって気づいたそうだ。そこに違和感を覚えてドルモアを探ろうとしたところ、見事に遮断されてしまったらしい。


(僕がもっと早くに気づいてれば)


 エルモア、そういうのなし。弘法も筆の誤りって言うでしょ? 惑星だって失敗することもあるわよ。というか、エルモアが諜報活動みたいなこと始めたのって私が転生してからじゃない。十年も経ってないんだから、気にする必要なんてないない。


 そんなことより――と、私は心の中で語気を強める。


 ギリアムはどこにいるの?


(まだ、この村にいます。今は、村長の家で食事中です)


 分かったわ。ありがとう。もう行って。


 エルモアが力を込めて頷く。


(分かりました。ノインさん、お願いします!)


 冷たく聞こえなかったか心配したけど、気持ちが繋がっているから分かってもらえた。私は怒りが冷めないうちに、マーマンジェネラルと戦いたかった。

 でもそんな心配は不要だったわね。最後にギリアムのことを聞けて良かった。


 こんな惨状を作っておいて、呑気に食事してるなんてね……!

 ルシウスを殺そうとしたことも忘れてないわよ……!

 必ず報いを受けさせてやるわ……! ギリアム……!

 

 

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