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3

 

「準備はよろしいですか?」


「はい。よろしくお願いします」


 私はアデル先生と向かい合い一礼する。兵たちは壁際に移動し、ルシウスが審判役として中央に残り片手を上げる。いつも通りの流れ。最初は緊張してたけど、今はもう随分と慣れた。心が乱れることもない。


「はじめ!」


 ルシウスが合図を出すと同時に、アデル先生が木剣を振りかぶって向かってくる。振り下ろしからの振り上げ。いわゆる、燕返し。アデル先生の得意技。

 私は振り下ろしを躱し、逆袈裟切りがくる方向に体を向けて軽く真上に跳ぶ。そして体の前で交差させた木剣で、アデル先生の攻撃を受ける。

 木剣がぶつかる硬く短い音が鳴り、手が一瞬で痺れる。振り抜かれると、アデル先生の姿が遠ざかる。私は地に足がついていないので、アデル先生の膂力を利用して体を後ろに流しているのだけれど、攻撃を受ける度にいつも思う。


 これ、七歳の少女相手に打ち込む力じゃないわよね。


《アスラ! ディーヴァ!》

 

 呼び掛けると、アスラが私の胸から現れ、唸り声を上げてアデル先生に飛び掛かる。ディーヴァは背中から出て私を受け止め、すぐにアスラの援護に向かう。


《シクレア! 出てきて!》


《呼んだー? あら、またやってんの?》


《うん、頼まれちゃったからね》


《興味深いわよね。あのアデルって奴》


 シクレアは私の肩から出てくるなり、治癒の鱗粉を振り掛けてくれる。お願いしなくても、状況を見て察してくれるのが私の仲間たちのすごいところ。


《どう? もう治ってると思うけど》


《ありがとう。楽になったわ》


 アデル先生の一撃は、力を受け流しても手首や指にかなりの痛みが出る。腕と肩、脇もそう。全身に衝撃が響いて骨が軋む感じがする。シクレアに回復してもらわないと、次は受けれない。逆に言うと、回復さえしてもらえれば何度でも受けれる。


 躱して、受け流して、動きを乱して隙を生む。そこを仲間に突いてもらう。それが私の戦い方。というか、自分の力じゃ決定力に欠けるから、それしかできないのよね。


 アスラとディーヴァが交互にアデル先生に襲い掛かる。一匹ずつだと、アデル先生の相手にはならないんだけど、二匹だと手数が増えて、アデル先生も手間取る。


 アスラが襲い掛かっているときは、ディーヴァがスキル陽斬を使って光の中から斬撃を飛ばして援護。ディーヴァが前に出ると、アスラがスキル影斬を使って、影の中から斬撃を飛ばして援護する。

 それだけだと見切られちゃうんだろうけど、二匹は賢いから、同時に襲い掛かったり、スキルだけで攻撃したりとパターンを変える。それでもアデル先生は致命打を受けない。だから、そこに私とシクレアも加わって、更に複雑化させる。


 アデル先生は、視線を忙しく動かさなきゃいけなくなるから疲労が溜まるって言ってた。下手に攻撃すれば、防御が間に合わなくなっちゃうかもしれないから、その見極めが大変なんだそうだ。それはそうよね。だってこっちは見極められないようにするのに必死になってるんだから。簡単にあしらわれたらたまったもんじゃないわ。

 

 

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