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 *



 私たちは必要なものを揃えて静寂の森の洞窟へと帰った。

 今度は、アスラにロディとルシウス、ディーヴァに私とアリーシャが乗った。

 

 着いた頃には深夜になっていて、私は眠ってしまっていた。

 別に油断したわけではない。

 そうしても構わない理由に気づいたからそうしたってだけだ。


 その理由とは、エルモアが出現しなかったこと。

 もし二人との遭遇が危機なのであれば、エルモアが現れていなくてはおかしい。

 それに、エルモアは私をこの森に送る前にこう言っていた。


(分かりません。僕には、あなた以外の心の内を知ることができないんです。なので、判断はあなたにお任せしなくてはいけなくて……)

 

 あのときは、ロディとアリーシャの気持ちを知ることができなかった。

 だから、私が判断ミスしちゃってたっておかしくはないな、と思ったわけだ。


 とかなんとか、いろいろ理由はつけてるけど……。


 幼児って、我慢できないのよ。

 眠いと寝ちゃう。本当に抗えない。

 二人は信じるに足る優しさを見せてくれたし、もういいかなっていうのが正直なところ。あの場で死んでたって不思議はなかったし、他にどうしようもなかったからね。


 それで、朝を迎えたわけだけども……。


 私が目を覚まして部屋を出ると、既に朝食の準備が済ませられていた。

 しかも焚き火を囲む形じゃなくて、四人掛けのテーブルと椅子が用意してある。

 たぶん、ロディが収納魔法から出したものだと思う。

 真っ白なテーブルクロスが敷かれた上に、スープとパンと焼いたお肉。

 流石というかなんというか、元世話係の二人は洞窟でもテキパキしていた。


「おはようございます、ノイン様」


「おはよう、みんにゃ」


「おはようノイン」


「おはようございます。あら、涙の痕が。失礼します」


 アリーシャがタオルで顔を拭ってくれる。嬉しくて抱き着いてしまう。


「ノイン様……!」


 アリーシャも感極まったように抱きしめ返してくれる。

 そんな幸せな遣り取りをした後で、朝食の席に着いた。


 ああ、ちゃんとした食事だわ……!


 久しぶりだったので、がっついてしまった。


「そんなに急がなくても、料理は逃げないよ?」


「わかってりゅけど、おいちいんだもん」


 私とルシウスとの遣り取りを、ロディとアリーシャは微笑んで見ていた。

 そういえば、二人はルシウスの素性を知っているのだろうか?


 訊きづらい。と、思っていたら、ルシウスの方から話してくれた。

 昨晩のうちにルシウスがこれまで起きたことを、すべて話してくれていたらしい。

 情報の擦り合わせが済んでいるようで、私は何の説明もする必要がなかった。


 幼児の口で説明するのって、大変だからものすごく助かる。


 本当に十二歳なのかと疑っちゃうくらい、ルシウスはしっかりしている。

 もう、好きすぎて思わずぎゅっとしがみついていしまう。


「ノイン? どうしたの?」


「ルチウちゅ、ありがちょ。だいちゅき」


「えへへー。ありがとう。嬉しいな」


 ルシウスが頭を撫でてくれる。もう朝から天国です。

 幸せ気分でほわほわしていると、ロディが咳払いした。


「ルシウス殿下、昨夜話した通りですが、お決めになっていただけたでしょうか?」


「決めりゅ? なんのこちょ?」


「ノイン様、私たちはガーランディア王国へ帰還するのですよ。それで、ルシウス殿下にどうするかをお訊ねしているのです」


 アリーシャの言葉に、私はぽかんとしてしまった。

 

 

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