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新章開始。ノインは静寂の森でアラドスタッド帝国第七皇子ルシウスを第一皇子ドルモアに買収されたギリアムの手から救い、シャドウウルフのアスラとライトウルフのディーヴァを毒から救いました。加えて、マンティスベビーのシクレアがピクシーに進化しました。その後のお話になります。では、本編をお楽しみください。
静寂の森の洞窟で暮らすようになってから、一週間が過ぎた。
今日もよちよち歩きながら、小枝を拾い集める。
集めた小枝は蔓で縛ってひとまとめにして、ディーヴァにくわえてもらう。
私の知識とシクレアの確認で薬草や香草の採取。あとは木の実ね。
集めた薬草や木の実は、ルシウスの収納魔法の中に収めてもらっている。
その中は時間が止まっているから腐らない。
本当に、ルシウスがいてよかったと思う。
それと、ディーヴァ。驚きのスキルを持っていた。その名も浄化。
物の汚れや悪いものを綺麗さっぱり消してしまう。
生物には使えないけど、洗濯や洗い物をする必要がない。
そして、飲水の濾過と煮沸もいらなくなった。
ルシウスが魔法で作った水は、あまり飲まない方がいいという話だったので、どうしたものかと考えていたのだけれど、その問題が解決したという訳だ。
ゴブリンが顔を突っ込んだ滝壺の水も、ディーヴァのお陰で綺麗に戻った。
水を貯めておく壺や水瓶なんかがあると、もっと助かったのだけど、残念ながらない。必要な分だけ、残されていた木製のカップに入れて使わせてもらっている感じだ。
あとはルシウスの持ってる皮袋。そこに水を入れておけるんだけど……。
大丈夫かな……。
今日は、私とディーヴァとシクレアが一緒に行動している。
アスラとルシウスは狩りに出た。
兎やリス、鹿なんかをとってくる。実際は魔物らしいけど、見た目は動物。
小型の解体は、私も手伝った。
かなり背筋が寒い思いをしたけど、生きる為だからね。
寒いといえば、もう三カ月もすれば、雪が降る。
まだ暖かいけど、それまでには何かしらの対策を考えておかないと、ルシウスはともかく私は生き延びることが難しいかもしれない。まだまだ幼児だからね。
やっぱり行くしかないよねぇ……。
《どうしたの、ノイン?》
シクレアが訊ねてきた。彼女は本当に私の顔色に敏感だ。
《このままここで生活を続けていくのは難しいと思ってね》
《どうしてよ? いいところじゃない?》
《そうなんだけどね、このままだと着るものがなくなっちゃうから》
成長すれば、今の服は着れなくなる。
魔物の毛皮で服を作るような器用さは私たちにはない。
いずれはエデンの園で暮らすアダムとイブのようになってしまう。
想像してみたけれど、葉っぱ一枚というのは、ハァハァできないと思う。
じゃなくて、やっぱり服は必要だよねってこと。
アスラとディーヴァから、人のいるところについての話は聞いている。
無理せずゆっくり向かった場合だと五日ほどはかかるらしい。
実はその辺りを考えて、食糧の保管などを行ってきていた。
食べるものに関しては、十分に集まっている。今日の狩りの結果次第では更に余裕も生まれるだろう。問題は水。水だけなのだ。
そろそろ決断しなきゃいけないときがきていると思う。
ルシウスが帰ってきたら相談してみよう。




