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 アリーシャの具合が良くなったので、三人で私の部屋に戻った。

 そこで私は、二人に疑問を投げかけた。

 母が気味悪がって私から離れた上、待遇も悪い状況。

 それなのにどうして、こんなに私に良くしてくれるのか。


 すると二人は顔を見合わせたあとで苦笑した。


「実は、私とアリーシャは、帰る場所がないのです」


「え、どうちて?」


「ルリアナ様に逆らったからです。ロディ兄様も私も、後悔してはおりません」


 二人は、私の母ルリアナから一緒に帰るように言われていたらしい。

 それを断り、私の側仕えになると言ったところ、追放を言い渡されたのだとか。


「どうちて、ちょこまでちて……」


「決まっています。ノイン様をお一人にしたくなかったからです」


「私とアリーシャは、ノイン様がお産まれになったときから、そのつもりだったのですよ。ですが、ルリアナ様とは意見が食い違ってしまいまして……」


 ロディとアリーシャは、母……というか、その実感がないからもうルリアナって呼ぶことにするけど、ルリアナから私が死産になることを知らされていたそうだ。

 だけど二人は、ルリアナとは考え方が違った。

 私の産声が上がった瞬間、奇跡だと感じたらしい。


「ルリアナ様は、我が子の死体に、神に追放されるような、忌まわしい者が入り込んだと決めつけておられました。それで、自分とは赤の他人であると」


 ルリアナ合ってる。でも私、忌まわしくはないよ。

 前世の記憶を引き継いでるってだけだよ。


 こういう経験をしたからこそ言えることだけど、親子って、最初はきっと赤の他人なんだよね。記憶があるかないかの違いだけでさ。最初の魂だって、もしかしたらこの体が合わないって感じて、宿替えしただけなんじゃないかな。それか、間違えたか。


 ロディとアリーシャが、ルリアナに言ったのは、正にそういうことだった。

 だけど、ルリアナは聞き入れなかったらしい。


 ロディとアリーシャは、そのことで私に謝った。自分たちがルリアナを引き留めることができていれば、私に寂しい思いをさせなくて済んだのにって。


 この二人は、心まできれいなんだから……。


「わちゃち、ちゃみちくないよ。ロディとアリーちゃが、いちぇくりぇたもん」


「ノイン様……!」


 二人は感激したような仕草で目を潤ませた。

 私も二人の優しさが嬉しくて感動したけど、罪悪感が湧いて苦しかった。


 私さえいなかったら、二人はこんなことになってなかったのよね。


「ごめんにぇ。わちゃしのしぇいで」


「何をおっしゃいます! 私たちは、幸せなのですよ!」


「苦だと思ったことなど、一度としてありません!」


 ロディがアリーシャと一緒に跪いて、私の手を取る。そして頭を下げた。


「私たちは、生涯、ノイン様にお仕えします」


 私は泣きたいのをぐっと堪えて頷いた。


「ありがちょう……」


 二人に秘密を打ち明けたかった。だけど、それで見放されたらどうしようという恐怖の方が大きくてできなかった。きっと二人には、そんな心配もいらないのに。

 

 

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