ゲームは1日30分!それ以上は一秒たりとも許さん!
チラリと珠『タマキ』が俺の方を見た。まだゲームを続けたい……そんな顔だ。だが許さん。
もうそろそろ30分経つ。
「駄目だ。早くゲーム機をしまえ」
「……うん」
「カズ!あんた鬼だよ!人じゃないよ!」
「そうだよ!おい珠君。ゲームしていいぞ!」
お袋や弟がうるさいが家のルールに口を出さないで貰おう。
「お父さん。もう少しでね?クリアなの」
「だから何だ?早く勉強しろっ!」
「カズゥゥ!」
「鬼がよぉぉ!」
お袋にはひっぱたかれて弟には罵倒されたがそれでも何も変わらん。ゲームは1日30分。
ゲームなんかいつでも出来る!でも小学生でいられる時間はほんの一瞬!大人になってから小学生にはなれん!
「中学生になったら1日1時間ゲームしていい。ほらっ勉強だ!」
「いぃぃっ!痛いぃぃ!」
珠の首根っこを掴んで持ち上げ勉強部屋に放り投げた。
「勉強は1日1時間!テストで50点以下取ったら取った分ゲーム禁止だ!」
「あんた……本当に私の息子かい?」
「兄貴には人の心が無いのか?なんて酷いこと言うんだよ……」
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今日も胸が痛かった。
寝る時になると毎日思い出す。
(……心臓がかなり弱く特殊ですね。ドナーが見つかるか……見つかったとしても正直一年生きられるか……)
医者が俺にそう言った。
(……ごめんなさい。でも私には貴方を支える自信がありません)
土下座して離婚を迫った元女房がそう言った。
「胸が痛くて寝れねぇよ」
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学校帰り。お墓参りが終わって少しお腹がへった。さぁてそろそろ僕は行くよ。お元気で……ってのはもう死んでるのに失礼かなぁ?
「珠君来てくれてありがとなぁ。お寿司でも食べにいかんか?」
おじいちゃんおばあちゃんの提案はかなり魅力的だったが僕は断った。早く帰らないと。
帰る前にもう一度お墓に手を合わせて頭を下げた。
「僕は帰ります。お母さん」
ひき逃げか。お母さんは即死だったらしい。人って簡単に死ぬんだな。今生きてるってだけで僕はメチャクチャ幸せなんだな。
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(珠君が一年持たないって言われた時は『ゲームぐらい好きにやらせてやれ』『勉強なんてしたって意味ないだろう』と思ってたけど……)
(兄さんが正しかった。兄さんだけだったんだな。珠君の未来を諦めてなかったのは……)
おばあちゃんとおじさんが言った。小学四年生だった僕も(何で僕は病気なのに勉強をさせられゲームも少ししか出来ないんだろう?)とお父さんが嫌いだった時もあった。
(でも胸が痛かったと思うよ。病気の息子を普通の子供と同じように扱うってのは辛かったろう。兄さん。そういやいつも心臓を擦ってた)
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「ただいまー」
「おかえり。向こうのじいちゃんばあちゃんは元気だったか?」
「うん。お母さんも元気そう?……だったよ」
「はっ!死んだ人間に元気も元気じゃないもあるか。飯。作るわ」
「うん」
エプロンを着けてお父さんは台所に立つ。冷蔵庫から野菜を取り出し心地よい音を奏でながらそれを切る。仕事して家事もして……すごいよなぁ。
「お父さんゲームやっていい?」
「時間は守れよ」
「はーい」
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・
「やばっ。30分経った!」
お父さんが料理を黙ってテーブルに並べていく。いつもより豪華だ。相変わらず怖い顔。分かったよ。今やめますよ。あー。いいとこだったのに。
「……やめなくていい。今日からゲームは1日1時間やっていい」
「えっ!?何で!?」
『ゲームは1日30分』絶対的な我が家のルールだ。僕は人生で1日に30分以上ゲームをした事がない。驚いた僕はお父さんを見た。お父さんと見つめ合う形となる。
「……辛い手術。長い入院。よく耐えた。珠。中学入学おめでとうな」
お父さんが泣いている。
僕は中学生になっていた。




