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9.

「ところで、アルフィ。その、肩にのっているのは、君のペットだろうか?」


「「(主、今頃!)」」


「なんでしょうね? いつの間にか側にいたので、これってスライムですか?」

「おまえ、知らないで飼っているのか? っていうか、スライムは人のマネをしたりなんて器用なことはできないぞ」


ミイは、どうもラッセル様のマネをしているようで、眉間に皺のようなものを大きく作っていた。


「うーん、この世界のスライムはこういうのできないんですね」

「お前の世界にもスライムがいるのか?」

「架空の生き物としてなら」

「架空?」

「物語の中、だけですね」

「物語……か。確か、空想力がすごい世界だって書いてあったような」


ラッセル様が読んだ資料は、どうやら異界に渡ってきた人たちへの調査内容がかなり詳しく書かれていたようだ。


「ミーミーミー」

「うん? 何だろう。どうした?」

「ミー」


ミイは俺の手の上で横になり寝てから、すぐに置きがり、周囲を見回している仕草をした。


(ああ、レイが起きたのか。結構強い癒しをかけておいたんだけどな)


「帰ります」

「何があった、アルフィ?」

「アイザック様、レイキアが起きたみたいなんで、帰らせてください」

「待て待て、それをそのスライムが知らせたのか、そいつは危険だ! スライムにしては知能が高すぎる」

「ディラン様、大丈夫だと思います。この子からは悪意は一切感じませんので」


起きたレイキアを1人にするのが嫌なので、さっさと戻りたい。

少しイライラした俺をみて、アイザック様が目をやわらげた。


え、ここ、そんな目をするところ?


「わかった。アルフィ、すまないがレイキアを頼むよ。私たちはまだ少し話をするから」

「わかりました。今日は貴重な情報をありがとうございました。では」


取り繕うのをやめたので、堂々と闇の属性を使って、影の道から自室に帰ることにした。


***********************************************************


「って、あいつ光の属性じゃなかったんですかーー_」

「ああ、実はアルフィは3つの属性を持っている」


「「3っっっつ!!」」



「主―。あいつを信用しすぎでは?」

「ディランはアルフィが私に害すると?」

「いや。あれからは、そんなもんは一切感じないんですが」

「でも主、渡り人は別の意味で危険です」

「ふむ。ラッセルの意見を聞こう」

「俺が読んだ文献では、渡り人の危険性が指摘されています。彼らはあまりにも穏やかすぎるんです。危険察知能力が低く、それゆえ政治に利用されていることも気付けない。純粋すぎる人種だと記録されています」

「うん。そうだな。それは私も知っている」

「なら、どうしてアルフィを」

「私は彼が欲しいんだ」

「政治ですか」

「彼が誰からに利用されるのなら、攫って誰もいないところに行くかもしれないな」


にこりと優雅にほほ笑む主を前にして、二人はソファの上から立ち上がり、壁際に避難した。


「「(こ、怖えぇぇぇーーー)」」


「だが、その点は心配いらないと思う。なぜならアルフィは、2年間も私から隠れていたからね。危機察知能力もあるし、基本的に他人を信用していない。だから、彼は渡り人のなかでも特殊なほうだと思う」

「……主、もしかして、アルフィが偽っていたことをすごく気にしてます?」

「もちろんだ、ラッセル。事務官のアルフィも私なりに十分かわいがっていた。それなのに、あの子は私が恩人を探していると知っていたのに、姿を変えたまま私の側にいた。いつ、またそうやって別人になって姿を隠すかもしれないからね。

いったいどうやって、逃げないようにしたらいいのか、考えるのが毎日楽しみだ」

「(なぁ、ラッセル。これやばくないか? アルフィは、主の粘着質しらないだろ)」

「(俺はしらん。主の邪魔をして蹴られたくない)」


**********************************************************






「起きたか、レイ」


ベッドの上で膝を抱えて座り、生気のない顔をしたレイの瞳をのぞいた。


「……」

「レーイ。俺はここだ。見えてるか?」


こくりと一度頭を上下に動かしたが、その瞳はから次々に涙が盛り上がっては落ちていく。


「悪かった。おいでレイ」

「う……っ」

「ラッセル様たちとアイザック様のところに行っていたんだ。レイも連れていけばよかったな」

「も、置いてかな、で……」

「お前、もう、いっそ俺の子どもになるか?」

「なる!」

「即決か!」


とりあえず、疲れたので、レイと昼までたっぷり寝ることにした。




ーまだ、早朝なのに、扉は壊れそうなほど、ドンドコ叩かれていた。


「アルフィ! 起きろ!」

「……イーサン、自分は今日は午後からの勤務のはずですが……」

「悪い。人手が足りないんだ。非常事態だ。第3師団に派遣されていた10名全員が負傷して戻ってきた。いま救護室に全員運ばせた。自分は今からリベラ様に詳細を報告してくるから、彼らの側にいてくれないか」

「側にって、治癒じゃなく?」

「俺たちでは無理だ。重症なんだ」

「なっ、では6以上の方は?」

「今日は、朝方に各領から次々に応援の要請が入って、今は俺たちと団長しかいない。急ぎの伝令を出してやっと2名ほどが今こちらに戻ってきている最中だ」

「リベラ様は、いや、動けないのか」

「そうだ、非常事態中は団長は手を開けておかなくてなはらない。リベラ様は王族に何かあったときのために、力を温存しないといけないんだ」

「わかった。急いで救護室に向かう」




「レイ、起きてるか! 今から仕事だ。お前は、どうする?」

「アイザック様、呼んでるから、行く」


その視線が、窓を見ていた。

見ると、コツコツと白い鳥が窓をつついているのが見えた。


「ああ、入れないのか」


窓を開けてやると、鳥は一直線にレイの腕にとまった。

足には、手紙が取りつけられていた。


「第3師団も数名重傷者ありって、ある」

「レイ、アイザック様のほうにきた情報を後で俺にも教えてくれるか」

「うん」

「いい子だ」


レイの頭を数回なでた後、俺たちは急いで部屋を出た。




救護室に入ると、10人がひどい有様でベッドの上に横たわっていた。

なぜ、光属性者がやられたのか。


彼らは、治癒者であって戦闘員ではないから、後方で待機していたはずだ。

前線の第3師団がたった数名の重傷者で、後方支援の光属性者はすべてが重症。

まるで、狙ったかのように?



「そこ、いるの、ア、アルフィか」

「オルガ先輩!」


元第3師団でお世話になった先輩だった。

1年前に第1師団に転属になっていたが、彼も第7になっていたのか。


「先輩、すぐに治癒しますので」

「い、いい。俺は、大丈夫、だから、伝えて、くれ、団長に」

「治癒はすぐに終わります」

「すぐに、伝えないと、や、やばいんだ。頼む」

「わかりました」



オルガ先輩の話は、俺が危惧していたとおりの内容だった。

隣国の兵士がパニックになって暴動というのは表向きの報告だった。


パニックになったはずの兵士の一部が後方支援の部隊まで一直線に向かい、とくに第7師団の制服を着ていた先輩たちを狙ったそうだ。


そのときの第7師団の人数は11人。

1人、ここには足りない。


その1人が、隣国の兵士を手引きしたのだ。


「た、たのんだぞ、アルフィ」

「今からすぐにリベラ様のところに向かいます。先輩はもう寝て下さい」

「ありが、とう……」


先輩が気を失うように寝てしまったところで、部屋にいる全員に治癒をかけた。

すぐに起き上がることはできないが、身体の内外ともに小さな傷ぐらいしか残らないほどにレベル調整した。



全員の体調を秒速で調べたあと、リベラ様の師団長室まで影の道を使った。



「アルフィ・シモンズです」

「入れ」

「救護室からの緊急報告をお持ちしました」

「どうした!」


リベラ様が勢いよく立ち上がったために、椅子が後ろの壁に強く当たった音がした。


「リベラ様、全員大丈夫です。ただ、襲われたときの話を伺えましたので、報告にきました」

「そうか、……よかった」


リベラ様は、ゆっくりと息を吐くと、再び椅子に座った。


「戻ってきた師団員が1人足りないのはご存知ですか?」

「1人足りない? いや、そんなはずは。送ったのは10人だ」

「あちらに行く途中に合流した11人目がいたそうです。なので、第3師団に合流したのは11人です」

「11人だと、どこにいるんだその11人目は」

「もう、いません。その11人目は隣国の兵士を後方支援のテントに導き、そのまま一緒に逃げたそうです」

「それは」


リベラ様とイーサンから動揺を深く感じる。

彼らは、この件にはノータッチだとわかる。


唐突に扉が2度叩かれた。


「アイザック・レギアだ」


急いで、扉をあけて、アイザック様を室内に案内した。


「レギア公、第3師団の重傷者は大丈夫なのか?」

「うちは、3名だけだった。今回の襲撃は、うちの騎士ではなく第7師団の騎士が目的だと思われる」

「なぜ、うちが狙われるんだ」

「それは、まだわからない。だが、第3師団の最前線にいたものの証言だと、魔獣は確かに隣国アートラータとの国境に大量に見えたが、魔獣がこちら側に入ることはなく、向こうの騎士50名ほどが国境を超えて、逃げてきたようにみえたそうだ。

そのうちの、20名ほどが第3師団の騎士たちから急に姿を消し、その直後、第7がいる治癒班のテントから悲鳴があがったことがわかっている」

「その敵の20名はどうなったんだ」

「最終的に、むこうの騎士はすべてアートラータへ戻り、そのあと追って入ろうとしたうちの騎士らは、魔獣に阻まれたそうだ」

「戻っただと、1人も捕まえられずにか」

「彼らは、影の道を使った」

「全員が闇の属性だと、そんなことはあり得ない!」

「いえ、違うと思います」


全員の目が自分に注がれたのがわかった。


「アルフィ、良いのか?」

「アイザック様、敵が知りえている情報を今更隠しても無駄です」

「そうだな」

「なんだ?」

「リベラ公、これはまだ内密の事項だ。今からこの両名と一緒に私は影の道に入る」

「なっ」


アイザック様は一瞬で影の道に消えた。

そして、また、3人は姿を現した。


「なぜ、氷の属性の貴公が」

「闇の力をもったものが2人いれば私も影の道を使うことができる。恐らく、敵もこのことを知っている。これなら、全員が闇の属性でなくてもいい。それに、闇の魔力値が高いものが数名いれば、同時に影の道に入れるものは多いだろう」


リベラ様とイーサンの顔色が悪い。

それはそうだろう。

隣国がこの方法で第7師団を襲ったのなら、こちら側にまだいるかもしれないスパイが導けば、

彼らはいとも簡単に王城まで入ってくるだろう。


「レギア公……これは、ここだけの秘密にはできない事項だ」

「もちろんだ。だが今はまだ、王城内の全員に知らせるわけにはいかない。敵のスパイがいるかもしれないからな」

「11人目……か」

「その11人目の情報は、既にうちの諜報に追わせている」



(レイか。部屋を出るときに、あいつの防壁を3重にしたけど、心配だな)


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