第1部完結スペシャル「登場人物とトーク会を開こう!」Part2
Q.では、改めて自己紹介をお願いします。
紬希:「紬希恋白です」
凪咲:「凪咲尋斗です。僕も紬希も、美斗世第一高校に通う一年生です」
友田:「美斗世第一高校といえば、市内で一番大きなマンモス校だよね。学校生活は楽しい?」
凪咲:「えぇまぁ……最近は放課後ずっと紬希の巡回に付き合わされているせいで、中間テストの勉強が全然できてないんですけど……」
紬希:「大丈夫、次の期末テストを頑張ればいい」
凪咲:「いや、まだ終わってもないのに落ちる前提で話を進めるなよ……」
友田:「でも、二人ともちゃんと勉学には励んでいるみたいだし、今からでも頑張れば何とかなるんじゃない? お昼休みとか、隙間時間に勉強するとか――」
紬希:「駄目、昼休みは天登君の描いた漫画を読まないといけないから無理」
友田:「あっ、そそ、そうなんだ(焦)……」
凪咲:「紬希は自分のやるべきことをこうだと決めたら意地でも曲げないタイプなんで、テスト勉強しろなんてお説教は通じませんよ。僕も何度も注意したんですけど全然聞いてくれなくて、結局こっちが先に折れました」
友田:「い、色々と大変なんだね凪咲君も……」
紬希:「………(✌)」
〇
Q.お二人が出会ったきっかけは?
紬希:「朝、通学路の道角でゴッツンコしたのがきっかけです」
友田:「はい?」
凪咲:「いや、違うからな。何ラブコメの始まりみたいな出会い方をしたみたいに言ってるんだよ、誤解されるだろ……単に同じ高校の同じクラスだっただけですから」
紬希:「違わない。ホントの話」
友田:「そうなの⁉︎ へぇ〜、入学初日から青春やってるねぇ」
凪咲:「いやあの……正直言って入学した当時、僕はあまり他人と関わりたくなくて、初めて出会った紬希とも距離を置こうとしていたんです。でも何やかんやあって、結局彼女の傍から離れられなくなって、挙げ句の果てには半ば強制的に紬希の創った放課後秘密連合団のメンバーにまでさせられて、こうして毎日の巡回にまで付き合わされて……」
友田:「なるほどなぁ。そういうのを、『運命の赤い糸で結ばれてる』って言うんじゃないかな?」
凪咲:「いやいやそんなこと――」
紬希:「私の場合だと、赤じゃなくて白い糸になると思う」
凪咲:「いや、ツッコむとこはそこじゃなくて……」
〇
Q.お二人が所属しているチーム「放課後秘密連合団」とはどんな集団なのですか?
凪咲:「それは、設立者本人が存分に語ってくれると思いますよ」
紬希:「私たち連合団は、美斗世市で起こる様々な事件や問題を解決するために設立した、何処の勢力にも属さない独立したヒーロー組織なの。今だけでも仲間が全部で七人いるわ」
凪咲:「でもつい最近、悪魔使いの長雨を含めて三人抜けちゃったんですけどね」
紬希:「別に連合団に居るのが嫌で抜けた訳じゃないわ。例えこの町から離れていても、彼らは私たちの仲間だから」
凪咲:「確かに、困ったときはまた尋ねに来るって言ってたから、また近いうちに会えるかもしれないね」
友田:「なるほど、メンバーの出入りはあるけれど、仲間同士の絆は常に結ばれているという訳ですね。……ちなみに、設立したきっかけは何だったんですか?」
紬希:「高校に入ったとき、私が新しく『放課後秘密連合団』という名前の部活動を作ったの。最初は私と凪咲くんの二人で活動していたわ」
友田:「なるほど、部活として活動していたというわけですね」
凪咲:「まだ学校側からはみとめられていないので、事実上非公式のサークルなんですけどね。……てか、こんなふざけた名前のサークルが承認されることなんて絶対ないとは思いますけど……」
〇
Q.お二人の好きな食べ物は?
紬希:「いまはべへいふもの」
凪咲:「こら、口にものを入れたまま喋るな」
紬希:「(モグモグ、ゴクン)……これおいしい」
友田:「そんな大きなケーキよく一人で食べられるね。僕だったら絶対後々胃もたれしそう……紬希さんは甘いものが好きなの?」
紬希:「多分、甘いものなら延々と食べ続けていられると思うわ」
凪咲:「一体どんな胃袋を持ってるんだよお前は……」
友田:「へぇ、かなりの甘党なんだね。凪咲君は何が好きなの?」
凪咲:「僕は……お豆腐が好きです。あとひじきとか、かぼちゃとか、ネギとか」
友田:「い、意外と質素なんだね……」
〇
Q.タイムマシンに乗れるとしたら、過去と未来、どちらに行きたいですか?
凪咲:「未来に行ってみたいです。未来の自分がどんな仕事をしているかとか、ちょっと気になります」
友田:「凪咲君は僕に似てるところがあるから、案外僕みたいに記者とかやってたりするんじゃないかな?」
凪咲:「記者ですか……ちょっと憧れるかも」
友田:「紬希さんは、未来と過去、どちらに行きたいですか?」
紬希:「未来に行くなら五日後、過去に行くなら昨日がいい」
友田:「おお、やけにピンポイントですね。何か理由があるんですか?」
紬希:「五日後に、家の近所のドーナツ屋さんで新メニューが出るから。六連繋がりのチェーンドーナツ。あれ食べてみたい」
凪咲:「あぁ、あの学校から降りたところの交差点前にある『カイザー・ドーナツ』で新発売する奴でしょ。僕なんか三連でもうお腹一杯になったんだけど……」
紬希:「三連くらいでギブアップするなんて、まだまだね」
凪咲:「いや、別に張り合ってないからね?」
友田:「なるほど、新作のお菓子が出るのが待ち切れないわけですね……ちなみに、過去だと昨日に戻りたいっていうのは?」
紬希:「昨日数学の試験前テストに落ちて居残りさせられて、放課後の巡回ができなかったの。だから、昨日のテストを受ける前まで戻って、過去の自分にテストの答案用紙を見せる」
凪咲:「いやそれただの不正行為! てか、昨日玄関でいくら待ってても来なかったのはそれが理由かよ!」
紬希:「放課後秘密連合団の日々の巡回は欠かせないものだから、一日抜けただけでも致命的なの。……だから、私はもう一度、この手で昨日をやり直す」
凪咲:「……いや、カッコ良く言ってるつもりかもしれないけど、やってる事はただの反則行為だからね?」
友田:「いやぁ、そこまでして部活に打ち込もうとする姿勢、見事です!」
凪咲:「あの、褒めなくていいです。こいつなら本当にやりかねませんから……」
〇
Q.最近頑張っていること、挑戦していることを教えてください。
凪咲:「最近、筋トレとかジョギングを毎日欠かさずやるようにしています。高校生になるまでは興味すら無かったんですけど、紬希に連れ回されるようになってから、体力付けなきゃ、って思うようになって」
友田:「それはすごいね! 筋トレとか、自発的にやれる子って少ないんじゃないかな?」
凪咲:「いや……というより、むしろやらざるを得ない状況になったというか……連合団に入ってから、僕の周りには何かしら能力を持った子ばかりが集まるんで、いつも何も力を持たない僕だけ置いてけぼりを食らうんです。だから、少しでも彼らについて行けるようにならないといけないと思って……」
友田:「そ、それは大変だね………」
紬希:「大丈夫。いざという時は私が凪咲くんを守るから、心配しなくていい」
凪咲:「うん、ありがとう。きっと僕のことを思って言ってくれたのだろうけど……でも、できれば人前であまりそんな事は言わないでほしいな。……僕の方がすごく恥ずかしくなるから」
紬希:「本当。顔赤くなってる」
凪咲:「だから言うなって……」
友田:「いやいや、二人はいいコンビだと思うよ。いいなぁ、隣にいつも頼もしい仲間がいてくれるっていうのは。紬希さんは、最近ハマってることとか、ありますか?」
紬希:「最近、連合団の巡回も兼ねて、人知れず建物の屋上から屋上へ糸を張って移動する練習をしているの。縦横無尽に街中を駆け回るのが楽しくて、ハマってる」
凪咲:「またそんな危ない事やってたのかよ。ス◯イダーマンかお前は」
友田:「あなたの親愛なる隣人になる日も近いかも知れないね……」
〇
Q.百万円あったら、何をしたい?
凪咲:「えっ……何をしたいだろう? 紬希は何をしたい?」
紬希:「百万じゃ足りない」
凪咲:「はい?」
紬希:「百万じゃ足りない。一億欲しい」
友田:「一億! そ、それだけのお金を一体何に使うおつもりで……」
紬希:「無人島を買って、そこに新しい秘密基地を作るの」
凪咲:「えぇ……学校の裏山にある井戸の地下だって、もう十分に立派過ぎる秘密基地じゃないか。あそこは月歩さんや僕らで頑張って整備したっていうのに、あれでもまだ満足できないっていうのか?」
紬希:「別にあそこが不満なわけじゃない。ただ、将来的に連合団はもっと大きくなっているはずだから、拠点を増やさないといけないと思って」
友田:「な、なるほど……連合団が一大組織になる未来を見越して、将来必要な経費のことまで考えていたんだね。流石です!」
凪咲:「いや、無理して褒めなくていいですから。……それに、仮に一億円で無人島を買えたとしても、そこに秘密基地を造るのは難しいと思うよ」
〇
Q.お二人の座右の銘を教えてください。
凪咲:「波風立てない高校生活を送りたかったので、『他人事には見て見ぬ振り、面倒なことには決して首を突っ込まない』と決めていました。高校に入る前までは……」
友田:「――ということは、高校に入ってから変わったんですか?」
凪咲:「高校に入って紬希と出会ってから、その座右の銘は見事に打ち壊されました」
友田:「おぉ……ちなみに、紬希さんの座右の銘は?」
紬希:「『他人事を見過ごさず、どんなに面倒なことでも力になってあげる』です」
友田:「なるほど、お二人の考えは見事に真逆だったというわけですね」
〇
Q.自分が生きている中で大切にしていることは何ですか?
凪咲:「えぇ……そんなこと、考えたこともないです。何せまだ十数年しか生きてませんから。紬希は何かある?」
紬希:「……私にとってのヒーローの在り方、そして貫くべき本当の正義とは何なのか――」
友田:「おお、なんだか凄い哲学談義が始まりそうな予感! それでそれで、あなたにとってのヒーローの在り方とは?」
紬希:「『勧善懲悪』」
凪咲:「四字熟語で言いくるめちゃったよ! そこはもっと深いとこまで掘り下げていくべきだろ⁉」
友田:「では、貫くべき本当の正義とは?」
紬希:「私が見て正しいと思ったものは正義。それ以外は悪」
凪咲:「そんな自分勝手な正義があってたまるかっ!」
〇
Q.好きな映画や音楽を教えてください。
紬希;「スーパーヒーローの出てくる映画は一通り全部見ています」
友田;「おっ、ヒーローものですか。好きなんですか?」
紬希;「別に好きで見てる訳じゃない。実際に人助けする時の参考になるから見ているだけ」
友田;「な、なるほど、ヒーローになる勉強をするために見ているという訳ですか……凪咲君は?」
凪咲:「映画は、どちらかと言うと大衆受けするハリウッド映画とかより、芸術性の強いマイナーな作品が好きです。音楽は、よくお父さんが古い音楽を好んで聞いていたので、僕もその手の音楽をよく聞いてます。ロックンロールとか、ジャズとか」
友田:「へぇ〜そうなんだ! じゃあちなみに、今この店内に流れてるジャズの曲名とか分かったりするの?」
凪咲:「いえ、流石に曲名までは……でも、この時折わざと音階を外していくような弾き方は、多分モンクのピアノだと思うな……」
友田:「凄い! 演奏者まで当てられるんだ!」
凪咲:「この人は弾く癖が強いので、ずっと聞いていたら、そのうち嫌でも覚えちゃうと思いますよ」
紬希:「演奏者を当てられる能力……やっぱり、連合団に引き入れたクマッパチの目に狂いは無かった」
凪咲:「……いや、別にこれは特別な能力でも何でもないから。それに、そんな能力を持ったところで一体何の役に立つっていうのさ?」
友田:「みんなの知らない音楽知識を披露して自慢できる」
凪咲:「やりませんよそんなこと!」
紬希:「うん、立派な能力ね」
凪咲:「どこが⁉︎」
〇
Q.あなたが無人島に一つ何か持って行けるとしたら、何を持って行く?
凪咲:「僕は携帯電話かなぁ。それなら誰かに連絡取って助けに来てくれるかもだし……紬希なら、絶対にクマッパチを持っていくよね」
紬希:「クマッパチは物じゃない。この子は私と一緒に無人島へ行く相方なの。だからノーカン」
友田:「えぇ……それだとルール違反になりますけど……」
凪咲:「紬希はクマッパチを一人の人間として見ているんで、何を言っても聞かないと思いますよ。彼女のクマッパチに対する愛情は計り知れないんです」
友田:「どうしてそんなにクマッパチへの愛が強いんですか? 何かしらの特別な思い入れがあるとか?」
紬希:「……ヒミツ」
友田:「何で⁉︎」
凪咲:「よくよく考えたら、紬希が人助けを始めたのも、放課後秘密連合団を立ち上げた理由も、全てこの子のためだって言ってたし、僕が連合団に初めてスカウトされたのも、クマッパチの鶴の一声がきっかけだったらしくて……だからある意味、僕を連合団に引き入れた張本人でもありますね」
友田:「凄い……全ての始まりにはこの縫いぐるみがあったというわけですね」
凪咲:「なんか、僕ら連合団を影で操る権力者みたいで、怖いですよね……」
〇
Q.最近うっかりやってしまった失敗談を教えてください。
凪咲:「僕、実は結構おっちょこちょいで、よく色々なポカをやらかすんですよね。この前だって、ユナイターズカフェに入ろうとして井戸で足を滑らせてお尻を打ったし、足元に居たチッピに気づかず尻尾を踏んじゃって散々怒られたし、コーヒーをこぼして宿題を濡らしちゃうし……」
友田:「あ~なるほど。ちょっとした些細なポカでも、実際にやらかすとかなりガックリきますよね。でもまぁ、そんなツイてない時もありますよ」
凪咲:「はい……でも、高校に入学したあの時、家の玄関先で紬希とぶつかるポカをしていなかったら、今みたいにこうして自分も連合団の一員になれていなかったと思うし、紬希に振り回されては色々な事件に巻き込まれるようなこともなかったと思うし……案外ちょっとしたことが、大きく未来を変えてしまうこともあるんだなーって」
友田:「あぁ、確かにそうだね。よくよく考えてみたら、二人がこうして親密になったのも、道端でぶつかるところからだものね」
凪咲:「はい、お恥ずかしながら……」
友田:「紬希さんは何か最近やらかしてしまったこととか、ありますか?」
紬希:「……糸を張って街中を駆け巡っていた時、電柱から伸びていた電線を掴もうとして、線が千切れて落ちたことが何度かある。あれは流石に痛かった」
凪咲:「いや、それはやらかしたというより、もはや立派な事故だよ! しかも公共物に被害まで出してるしさ! 何時だったか夜中に停電騒ぎがあってびっくりしたけど、発端はお前かよ!」
紬希:「――てへぺろ」
凪咲:「真顔ですっとぼけるな! しかもなんかキャラがブレてるし! 友田さんも何か言ってやってくださいよ」
友田:「う~ん……そうだね、いくら町の巡回とはいえ、公共のものを壊して騒ぎを起こすのは良くないと思うな」
凪咲:「はい、友田さんも僕と同意見で有罪確定! ちゃんと反省しろよ」
紬希:「むぅ……」
○
話し込んでいるうちに日も暮れて、僕はふと腕時計に目を落とす。時間も時間だし、今日はこの辺にしようか。そう思った僕は、持っていた質問用紙をテーブルの上に置き、息を吐く。
「さて、と……じゃあそろそろ時間だから、この辺でトーク会を終わりにしたいと思うんだけど、二人とも言い残しておきたいこととか、ないかな?」
「裁判長、私は無罪です」
「さっき終わった質問を蒸し返すな」
手を上げてそう進言する紬希さんに対し、凪咲君の容赦ないツッコミが一撃。
「じゃ、録音の方はこれでおしまいにしよう」
僕はそう言って、テーブルの隅に置いていたボイスレコーダーの録音を止めた。
「二人とも、今日はありがとう。僕としても満足のいくイベントになったよ」
そうお礼を言うと、紬希さんが食べ終わってすっかり空になったケーキのお皿を横に置き、ナプキンで口元を拭いながらつぶやいた。
「……任務完了」
「あれ? ひょっとして今回のトーク会も、予め連合団の任務に組み込まれていたの?」
僕からの問いに、紬希は無言のままコクリと頷く。
「放課後の時間に行うことは、全て放課後秘密連合団の任務だって決まっているから」
「いや任務って……ただ取材を受けただけじゃないか」
「取材を通して、私たち放課後秘密連合団のことをより多くの人に知ってもらえる。これも立派な任務の一つ」
どうやら紬希さんは、今回僕が持ち掛けた取材を通して、自分たちが行っている活動を世間に広めたかったようだ。でも、別にこの取材内容を誰に公表する訳でもないし、単なる自分の自己満足だけで終わらせようと思っていたのだけれど……
でも今回、こうして二人と話せる時間を持てて、凪咲君と紬希さんのことをより詳しく知れたと思う。もし次に同じような機会があれば、この「ユナイターズ・カフェ」にお邪魔して、今度は二人とはまた違うメンバーを取材してみるのもいいかもしれない。
「では、今回はこれでお開きということで。お二人とも、今日は取材に付き合ってくれてありがとう」
そう言って僕は席を立つ。二人の方も立ち上がり、僕にお辞儀を返してくれた。
「あら、もうお帰りですか?」
キッチンの方から、小兎姫さんがやって来る。
「はい、お会計お願いします。お二人の分も、僕が」
「ふふっ、お代は結構ですよ。ユナイターズ・カフェでは、初めてお越しくださったお客様限定で、お代は頂戴しない決まりになっていますから」
「えっ、そうなんですか? あ、ありがとうございます……では紬希さんと凪咲君の分を――」
「あぁ、あの子二人はこのお店が開店した時からの常連さんだから、全てのメニューを無料で注文できるんです」
「えぇ⁉ それって凄い特権じゃないですか!」
そんなにサービスしてしまって、このお店の経営がきちんと成り立つのだろうかと心配になってしまう。
「まぁ、僕はいつもコーヒー一杯だけしか頼まないから、このお店への経済的損失はあまりないと思うんですけど、紬希の方は――」
「小兎姫さん、今日もごちそうさまでした」
「いえいえ、お粗末様でした」
巨大なケーキを丸ごと一つ平らげてしまった紬希さんは、小兎姫さんにお礼を言ってぺこりと頭を下げると、小兎姫さんも同じくぺこりと頭を下げた。甘いお菓子が大好きだという紬希さんにとって、カフェのメニューを全て無料で頼めるサービスには、計り知れない恩恵を受けていることだろう。何だか少し羨ましい。
「またいらしてくださいね。ユナイターズ・カフェは、あなたのお越しを何時でもお待ちしております」
ウサギの仮面を付けた小兎姫さんに見送られながら、僕ら一行はカフェを出た。学校の裏山という目立たない場所にあるものの、内装も雰囲気もなかなか良かったし、小兎姫さんが淹れてくれたコーヒーも美味しかった。
今は特定の人しか訪れないような秘密の集い場所みたいになっているけれど、これから先、紬希さん率いる放課後秘密連合団のメンバーが増えれば、あのカフェも賑わいを見せることだろう。
カフェのある裏山を下りてから、僕は凪咲君たちと別れた。二人とも今日の取材を楽しんで受けてくれたみたいで、僕も内心ホッとしていた。この企画は今後も続けていきたいと思っているから、今度はまた別の人を呼んで、あのカフェで取材をすることにしよう。
――さて、次回はどんな人から、どんな知らないお話を聞けるのだろうか。そんな期待に胸を膨らませながら、僕は美斗世市を後にしたのだった。
□
主人公&ヒロインとのトーク会、いかがだったでしょうか。私作者自身も、実際に自分の作ったキャラたちと会話するのはどこか新鮮で面白いものがありました。
今回はメインの二人からお話を聞きましたが、また次回も別の方をお呼びして、こんな感じのユルいトークをしていこうと思っていますので、その時はまた、気軽に読んでいただけると嬉しいです。
――それでは、また次の回でお会いしましょう。トモクマでした。




