BLカクレンボ 理性破壊を敢行する親友の凶行
BLです。ホラーです。青春です。スプラッタです。
「友也どう云うことだい。」
そんな僕の言葉に彼は答えることなく微笑んだ。
そして、処女の好きな悪魔に僕の彼女を捧げると言って何人かの少年達の喉頚をかっ切って魔方陣の溝に血を流し込んだ。
悪魔が現れる。女の悪魔で魅惑的な姿をしていた。目を離すことが出来なくて、裸の僕の股間が大変なことになる。
「サイテー」
声のした方を見ると縄で縛られ薄い服がと言うより布が、所々はだけている彼女が虫けらでも見るように、僕の股間を凝視していた。
「俺が隠してやるよ。」
そう言うと友也はいきなり僕のアレをアレしてきた。
「そんな……あっ…ああっ!」
「反応いいな。」
友也は意地の悪い笑みを浮かべた。
友也の手は何時の間にやらオイルが塗られている。そして、入り口がベトベトに成らないように、僕のアレを力強く撫でつつ下げてくる。
「女より男同士の方が分かり合えてて良いだろ。」
友也は僕の先にある僕の部分を執拗に撫で回す。
「あっアアーッいゃやめっあっ、ウーゥー……」
今まで感じたことの無い感覚が僕の脳ミソに次々に送られる。思わず口からは女の様なイヤラしい声が出てくる。
友也の手の動きは、僕の思考を停止させて、僕は只の壊れた玩具のように、声が出るに任せるしかなかった。
「何やってるの! 彼は私の彼氏なのよ!」
遠くでミサが怒っていることだけはわかる。
だが、その間にも次々に友也の手と僕のアレが僕の脳髄に快楽を波のように送り続けて来て、快楽の渦の中で理性が小さくなっていき、ミサと友也と女悪魔のやり取りを聞くともなしに聞くしかなかった。
僕の事を真剣に話しているのに、僕の思考は快楽の大波の中で小さく小さくカクレンボしていたのだった。
「俺は前々から思ってきたんだ俺の方がコイツの事を幸せに出来るって。それがなんだ! お前女って言うだけで、でかいツラしやがって。」
友也くんは憎悪の籠った眼差しで私の事を見てくる。でも、私は何故だか集中を切らしていた。
さっきから真剣に友也くんは話しているのに、友也くんの手が凄い艶かしく私の彼の彼をアレしているのだ。
私は縛られて体の自由が効かないことを良いことに、彼の彼と、友也くんの手の協奏曲を、食い入りながら見つめてしまう。
友也くんは男同士の方が分かり会えると言っていたが、それが今目の前で繰り広げられている。
女子の間で噂に聞いていたのとは全く違うタイプのアレに私は興味と不思議さを感じてしまう。
私の彼はわざとあの様な痴態を晒しているのではないかと。
だが、私の彼が我を失って快楽の渦に呑まれている様にも見える。
私は取り敢えず生唾を呑み込み、怒った声を出す。
私は女の子なのだ。そんなものには何の関心もない清らかな乙女なのだ。
彼は喘ぎ、友也くんはそんな彼の状態に恍惚となり、私は怒りに震えていなければならない。
私の目の前で友也くん×彼が出来上がってしまったのだが、重要なのは彼がその気になってしまう事。
そうなれば嫌が応にも私の目の前で、禁断の美少年同士の艶かしくふしだらで淫靡なあれやこれやが繰り広げられるだろう。
その時願わくば私に見せ付けながら興奮する2人否、私の事を意識外に置きながら、御互いの体に夢中になる2人でいて欲しい。
私はその目の前の美少年2人の光景に舌鼓を打ちながら彼をネトラレてしまった可哀想な女を演じて、美少年2人の甘く切ないやり取りを息を荒くしながらこの特等席から眺めていたいのだ。
「なんだお前そんなにコイツが俺で快楽を味わうのが憎らしいのか。……良いことを考えた。」
なんだ友也くん! まさかこれ以上に凄い事を彼にやって見せるのか。嗚呼、そんな! より深い友也くん×彼を見せてください!
業の深いことを考えていると友也くんが悪魔に指示を出す。
「その女の頭の中を覗いて、その女にとって一番の嫌な性的な事をやってやれ。」
女悪魔は頷いて私の方を向く。
「何いっているのよ!変態!」
嫌な性的な事と言えば、大衆監視の中でのあんなことやこんなことではないか。嫌だ! 私にそんな趣味はない。最低だ! 複数の男に強姦され輪姦されるなんて! そんなのは嫌だ!
女悪魔の手が私の頭を両手で包み込む。そして、私は……。
「ふん。案外の変態だったな。」
ミサは身体中の穴という穴から体液を流しだした。汗・鼻水・涙・よだれ、更には股からもドチャドチャ3つの穴から色んなモノを出している。
壊れたように、嫌らしい声が喉から絶え間なく流れてきている。
そして、顔は恍惚としていて快楽の渦に呑まれているようだ。
《フッ! どうやら理性がカクレンボしているようだな。》
女悪魔は両手で触れただけで、あのいけすかないリサを性的な廃人にしてしまったようだ。
1人で絶頂に達している憐れな女を見てると、段々と萎えてきた。
俺は向き直る
今は目の前の男だ。俺のテクニックで、最早只の艶やかに喘ぐだけの人形と化した俺の親友。
親友なんて位置ずっと嫌だった。
俺は恋人がよかった。あの女が憎かった。そこは俺の位置なのに偉そうに! 勝ち誇ってずっと俊也の隣を独占して。俺がどれだけ辛かったか。
頭の中に悔しい思い出が次々に過っていく。
小学校の時、俊也の隣に居ようとしたのに、男同士で気持ち悪いとあの女は言って、俺達の間に割り込んできて、そして、『俊也くん』とあの女が呼び掛ける度に俊也がデレデレとあの女に微笑み掛ける。
遠足の時も男同士水入らずでと言いながら、隣に居ようとしたら、『俊也くん一緒に回ろ!』と言ってきて、俊也が『いや、今日は男同士で回るよ』と言うと、途端に涙を浮かべて泣きわめき、見かねた俊也が『ゴメン』と言いながら俺達から離れる時、あの女は『どう、貴方より私の方が俊也くんにとって価値が高いってことが分かったかしらこのゴミ共!』と言う勝ち誇った女の笑みを向けてきて。
あのときもあの時も、俊也と出会ったのは俺の方が早くて、俊也を好きになったのは俺の方が早くって、俊也に告白したのは俺の方が早くって! 俊也の唇を奪ったのだって俺の方が早かったのに! なのに何故お前ばかりが女って言うだけで特をするんだ!
「俊也は俺のなんだ。そうだよな俊也。」
喘ぐ俊也に俺の言葉は聞こえてないみたいだ。
《俺の存在は俊也にとっては気持ちいい事だけなのかな。》
喘ぐ俊也は何かを言いたいらしいが、快楽がそれを許さないらしい。
俺は手の中の俊也の感触から、俊也がもう少しで臨界点を迎えるであろう事を察知した。
俺は初めて、俊也の俊也をシュンヤしてみることにした。
ドキドキ胸が高まってくる。何時もは手のみだ。手であれば俺も何度となく俊也を思い描きながら、俊也が本当の姿を……ケダモノと化した俊也を想像してきたのだ。
そして、その想像の中で俺も俊也に負けないケダモノと化して、お互いがお互いを貪り食うのだ。
今俺はその内の1つを実行に移そうとしている。俊也はもう昂りすぎているのだから、後戻りはできない。
だが、利き手で俊也を責めていたのとは違い、おれ自身もこの行為に取り組めずにいたので、快楽を保証できない。
だから、この行為に及んだが最後、快楽の波が終わってしまって俊也が理性を取り戻し、俺の事を拒絶するかもしれない。
そんな事を想像していたら少し涙ぐんできた。
大丈夫。そんな事俺自身分かってきたことじゃないか。
俺はゆっくりと大地に膝をつき、俊也の俊也をシュンヤする。
頑張って励む。手でやるような激しさを維持しながら、俊也の快楽を冷まさないようにと言う意思が働く。
俊也を見上げる。相変わらず俊也は美しかった。
俊也の様子が変わる。だが、……どうしたことだろう。俊也が濡れた瞳をして見下ろしてくる。
もしかして俊也に俺の思いが……。
その時、俊也が小さな唸り声を上げたかと思うと、俺に一気に俊也が押し寄せてきた。フニッシュだ! 俺はここで負けじと、行為を更に激しくする。中途半端に辞めれば、俊也が痛い思いをするからだ。
俺は悦びの絶頂を維持する為の無の境地で俊也をシュンヤし続けた。
そして、俊也から搾り取ってある程度の時間がたった頃。俺は徐に、俊也の“後ろ俊也”へ侵入した。何時の間にやら俊也への思いから俺の理性もカクレンボしてしまったみたいだ。
俊也は俺が俊也の体の中で動く度に、女の様な声をあげ続けた。
その声と俊也の美貌に俺の俺は俊也の中で昂りまくるのだった。
目の前に死霊がいた。未来永劫逃れる事の出来ないそんな中、死霊は永劫の苦しみを味わっていた。
ここは地獄だ。死霊の群れが未来永劫苦しみ続ける為の理想郷。
何処からか血の匂いがする。
何処かで愚かな人間が生け贄を持ってして悪魔の事を呼び寄せようとしているのだ。
それに感づくと笑みが零れる。
誘いには赴かなければいけないだろう。女悪魔はその豊かな膨らみを胸に抱き、呼び声に引かれて時空を渡った。
妙な空間に出た。
所々からこの世界の主の匂いがしていた。
それらに混ざり、強く匂う。血の香り。見ると、逆さになった少年達が首から血をだらだらと垂れ流していた。
その数、十数体。十分な量だ。女悪魔である存在には色々な趣味を持つものがいる。そして、この儀式に応じた女悪魔は、男が嫌いだった。
なので、生け贄には呼び出し分と契約分と挨拶分とが必要であり、召喚の時は男を。挨拶分は清らかな乙女を。
契約分も清らかな乙女を持ってして生け贄としていた。
女悪魔は一時の幸せを最後に味合わせてやるために、召喚主を放置した。
彼らは死ぬ。唯それだけだ。だが、他に気にしなければならないことがある。
それは目の前にほぼ裸で縛られている美女である。未だに彼女の体は、肌の構造が大人の体になったばかりであることを伺わせる。
だが、私の手に掛かり、色々な意味で揉んでいけば、オイシイオイシイ御馳走になる。
女悪魔は清らかな乙女が、自分の手練手管に因って乱れ、開拓されて染め上げられ成すがままに堕ちていくのを、何時も地上に降り立った時の楽しみとしていた。
そして、召喚主には適当な返答をして置いて、悪魔は少女が一番大好きな性的な展開を少女に見せることにした。
だが、そのままを見せても味気無いので、必ず最後には百合的な展開になるように仕込んでおく。更には百合への感受性が五十倍になるように設定しておく。
これで彼女の快楽中枢は百合の時に五十倍の快楽に呑まれてしまい、快楽系廃人になってしまい2度と百合以外に快楽を感じることはなくなる。
《さて、》
悪魔が見ると男同士で睦合う召喚主がいた。
幸せにした後に殺すのが一番の苦しみを味わうだろうからと、彼らの快楽中枢をBLに約三倍の感受性を受けるように施した。これで妙な邪魔が入ることはない。
悪魔は少女に向き直る。
少女は幻術にかけられて今一番の快楽を味わっている。悦楽に身を悶えさせながら身体中の穴と言う穴から体液を垂れ流している。
着ている布などスケスケになっている。
女悪魔は丁度良い具合に仕上がった獲物に手を伸ばす。
女悪魔の手が、少女の首筋を緩やかに且つ艶かしくなぞる。これだけで彼女の感度の仕上がりがどの程度なのかが分かる。
《おや?》
無反応だった。
他の部位にも艶かしく触れてはなぞり、なぞり触れてみるが無反応だった。
百合の反応がすこぶる悪かった。
女悪魔は手を少女に翳す。少女の頭の上の空間が揺らめぎ紫色の穴が開く。
悪魔はその歪な空間に消えた。
紫色の靄が晴れることなく立ち込めている。その中を警戒しながら歩く。未だかつて無い変容だった。
目の前の靄が晴れる。
そこには美男子が2人。ヨーロッパ調の城の様だった。城の城壁に塔が建っている。
そこの縁から草原を見渡す形で2人の男がいた。
「どうしてもいくのかオクタビヌス。」
「嗚呼、当然だ。私は軍人。この様な時にこそ戦う定めを持ってして生きてきた。ここで戦わねば名が廃ってしまう。」
「良いじゃないか。名など。」
「そんな事はない。名誉があってこその貴族。名誉を守ってこその騎士だ。」
「だが、この王家が君たち一族に何をした。忘れた訳じゃないだろう。」
フッとオクタビヌスは笑う。
「それでも忠誠を誓ったからには戦わねばならない。」
金の髪をしたオクタビヌスはその場を離れようと背を向け歩きだす。
サルバドールは意を決した表情でオクタビヌスへ走り寄り、その背にしがみつく。
「急にどうしたサルバドール。もう少しで切るところだったぞ。」
振り返ったオクタビヌスの声が真上から聞こえ、サルバドールは彼の胸に顔をうずめる。
「……オクタビヌス行くな。」
彼の胸の中で呟くサルバドールは手の震えが止まらなかった。
「サルバドール聞け! 俺は死にに行くわけではない。」
「それでも行くな。」
そよぐ風夏が近付きつつあるのか、青い草の匂いが辺りに香る。
「……好きだ。俺はお前の事が好きだ。このまま一緒に逃げよう。俺は……」
「言うなサルバドール。俺は軍人だ。君の発言は王家に仇なすものだ。断じて受け入れることは出来ない。馴染みのよしみだ。今のは聞かなかったことにする。」
顔を上げると優しげな表情で見つめるオクタビヌスがいた。
サルバドールはそれきり黙り、オクタビヌスが立ち去ってもそのまま風に身を任せて地平の彼方を見詰めるのだった。
女悪魔の目の前を紫の靄が風となって過ぎていく。
「先輩どういう事ですか」
「何だ唐突に。」
榊文人はほのぼのと古語の勉強をしていた葛城隼人に人目も憚らず詰め寄った。
今は古典の授業の真っ最中だった。何処かの馬鹿が問題を起こしたとかで、丁度、葛城隼人のクラスは自習であっただけで、本来なら教師がいる時間帯なのだ。
「アノ女は何ですか。」
「アノ女?」
「惚けないで下さい僕は見たんだ! 昨日町を女と一緒に歩いているところを!」
「……あれは彼女だ!」
葛城隼人は伏し目がちに切り出した。そして、榊文人の目は光を失う。
「……お前には申し訳無いと思ってる。」
クラスの女子達が固唾を呑んで見守っているのが分かる。文人は頭をグシャグシャにかきむしる。
「だったらアノ女と別れてください。」
「それは駄目だ!」
「なんでですか。アノ女を愛してるからですか。」
「いいやそうじゃない。」
「じゃあ、何で!」
「あの女はカモフラージュの為に必要なんだ。」
「……カモフラージュ? 一体何をカモフラージュすると言うんですか。」
「分かるだろう。……男を愛しているなんて両親に口が裂けても言えない。」
「でも、僕を一生愛してくれるって、両思いで嬉しいって!」
「それは本当の事だ!」
「言ってくれたのに……ようやく思いが叶って嬉しかったのに……。」
涙ぐむ文人。そして走り出す。
「待て! 待ってくれ」
隼人は文人の腕を掴んだ。文人の体が傾いで隼人の腕におさまる。
だが、文人は腕を隼人の胸に叩きつけた。文人の目には怒りの炎があった。
「俺の事なんて何にも考えてないじゃないか! いつもいつも俺は居ないように振る舞わなければならない。」
「そう言う約束だっただろ。今さら何言ってんだよ!」
「……もう、やめる」
「なに。」
「もうしんどい。辛い。俺ばかりが大好きで、こんなに辛いとは思わなかった。」
「バカ言うな」
隼人の唇が文人の唇に触れる。そして、荒い口付けを交わしたあと、隼人は頭1つ分低い文人を熱く見つめる。
「僕はもう……何にも感じない。」
「なっ!」
「さようなら。先輩」
文人の走り去る姿を隼人はただ、立ち尽くして見ているだけだった。
紫の靄を風がはね除け渦を作る。そしてまた、紫の靄の向こうから影が現れた。薄くなる紫の靄により、段々影が色付いてくる。
影は語り始めた。
……私は伯爵と渾名されているものだ。
本当は只の富裕層である。
ホテル事業から始まり、株や仮想通貨で儲けを出し、人には言えないが、違法な武器商人として、巨万の富を築いてきた。
そんな中、私にも慈善の心があるのか、恵まれない子供たちに寄附をすることを覚えた。
彼等は将来の事を見据えて、色々な教育を施している。有用な教育法が確立されれば、仕事の斡旋や共同事業或いは、企画立案から都市計画に参画する等して経済的にも優位な立場に立てるだろう人材になる筈だ。
さあ、今日も仕事だ。有意義な人生を歩めるように、自身に気合いを入れる。
一仕事終えた後、少年達を住まわせている教会によって、自身の未だ見ぬパートナー達の様子を伺う事にした。
教会へ入る戸口の近くで少年が神父に折檻されていた。
「貴様何をしている!」
怒声をあげる伯爵へ、神父は木切れを持って殴りかかる。伯爵は杖を神父の臓腑へめり込ませ、打ち倒した。
伯爵の御付きの者達が、少年を保護すると共に、伯爵の指示で協会へと雪崩れ込んだ。
少年を供に任せ、伯爵は後に続く。御付きが交戦しているのを回り込み、抵抗する教会関係者の背中を打ち付けて、意識を絶ってまわる。
邪魔をするものは正面切って叩き潰し、思い知らせた。
「私の金は貴様らみたいなクズに使わせる為にあるんじゃない!」
伯爵は部下に命じて神父達を連れていかせた。
少年達が部下に手当てをさせている。
《折角金を掛けたのに台無しだ。》
ふと、一人の少年に目を奪われた。美しいとは言えない顔立ちだが、何処か目を引いた。
「貴様名は。」
「ユーシリア。」
「来い。」
伯爵はユーシリアと共に屋敷へ帰った。少年の体はすこぶる健康的で、美しかった。
伯爵の上で下で少年は、伯爵の伯爵を磨きに磨いた。
時が過ぎる内に伯爵は少年の体に段々と肉が付いてきて女の体とは違って、固くしなやかな筋肉がつき、動きがどんどん良くなるのを微笑ましく見ていた。
声は小鳥の囀りを思わせる響きから、何処と無く場末の娼婦の声に近いものになっていく。そこには少し寂しいモノを感じていた。
ある意味の成長ではあった。
数年経ち、伯爵は死亡する。今際の際、少年から青少年に成長した元少年がたっていた。
伯爵は目で愛妾である彼に告げる。自分の全てを、遠い町にいる親戚の男に渡して欲しいと。
彼は頷き、伯爵は死んだ。
伯爵の葬儀を済ませた後、彼は伯爵の甥のところに行く。
伯爵の甥は迎え入れて楽しげに伯爵の金でどの様に遊ぶのか計画を始めた。
彼はその伯爵の甥が自らの体を求めて貪るのを眺めた。
そして、一夜の情事が終わって眠りについた伯爵の甥の頭蓋骨をハンマーで殴り殺害する。
屋敷に火を放った。燃え盛る炎の中、彼はいつの間にかきていた部屋の戸棚を開けた。
そこには日記があり、伯爵の幼少期どの様に過ごしたのか記してあった。そこで彼は漸く心からの安堵を得て眠りについたのだ。
紫の靄がきて、彼は包まれ、靄の向こうに消えた。
女悪魔は戦慄した。先程まで存在としての気配があった伯爵と元少年等の気配がぱったり消えたのだ。
『ここには何かいるのか。』
女悪魔は先程までとは違い、周囲を忙しなく見回しながら歩みを進める。
ふと、紫の靄の中に2つの影が見えた。両方とも女悪魔からは離れており、またその2つの影もお互いにそれなりの距離があった。女悪魔のこめかみに汗が流れる。
女悪魔は軽く歯軋りをして、影に近付く。
どちらの影も女悪魔との距離は変わらないので、段々と影が大きくなっていく。
靄が晴れると、女悪魔から見て右の影は美しい男同士が甘く絡み合い、淫靡な手付きで一方の男が一方の男の胸板をしきりに撫で回し、撫で回される方の男は顔を紅潮させ潤んだ瞳で胸板を撫で回す男の首に髪に触れ、恍惚とした表情を浮かべ鳴き始めた。
それは羞恥と言う垣根を越えた先にある甘美な愛の歌だった。
女悪魔は魔力を使いその男達に炎をぶっ放すが、何一つ彼等を止めることが出来ず、今まで攻めていた男が何時の間にやら下になり、受けのオモチャになっていた。
受けが攻めに門攻めをする度に、元攻めだった男の麗しい唇から有り得ない程の愛の歌が漏れ聞こえてくるのだ。
元攻めの男は頬を染め両の手で自身の口を塞ぐのだが、それは元受けの瞳に残忍な光りが暗く揺らめくのを手伝った。
ゆっくりと元受けが元攻めの手首を一つ一つ掴んで、離していく。元攻めの懇願を元受けが首を横に振って拒絶の意思を示す。
更に言い募ろうとした元攻めの話を元受けは激しく腰を幾度も叩きつける事で絶ちきった。
元攻めはその行為に恍惚として、足を開き続けるしか無かった。
「……どうやら、体は正直だった様ですね。」
女悪魔の背後から声が。
思わず振り替えると、女子高生と女悪魔の配下達が、女子高生を中心にして三角形を作り並んでいた。
女子高生の瞳が歪んだ光を発する。
「どうしたんですか女悪魔さん。少し怯えていないですか。」
『そんなことあるわけないだろう。』
「いえ、良いんです。分かっていますから。」
『それより何故私の配下が、何も仕事をせずに貴様を野放しにしているんだ。』
「やだなぁ。彼女達はもういませんよ。」
『何? 目の前にいるじゃないか。』
「貴女が見ているのは彼女達の影。彼女達の元の精神はもう、この世にはありません。彼女達はもうこちら側の住民なんですよ。」
『フッ馬鹿な。コイツらには血の契約がある。逆らえばどうなるか味わうといい。』
女悪魔の体から魔力が迸る。そして、何も起こらなかった。
つと、女子高生が女悪魔に近付いた。そして、女悪魔の頭に優しく触れる。
『あひゃぁっ! やめろ! やめてくれぇええ!!』
女悪魔は頭を押さえて転がり続けた。その周りを元配下達が取り囲む。
女悪魔は次々に自分の頭の中に美しく屈強な男達の悲しく儚く切ないトキメキが頭の中に次々と浮かんでは消え浮かんでは消え、その度に苦しんだ。
自分の中の何かが、音をたてて変わっていく。
ヨダレを垂らし、床に這いつくばって赦しを求めたが、彼女等は嗤うばかりでなにもしない。
女子高生だったモノが女悪魔に近付く。
そして、しゃがみこみ女悪魔の耳に囁いた。
その言葉は美しく女悪魔の頭の中に響いて、皆は紫の靄の中に消える。
─────そして、彼女は沼に沈んだ。
もう、苦しみはなかった。
ただ、そこにあるのは麗しい尊さであり、本能の赴くままにBLを漁る女悪魔の姿しか無かった。
確かに女悪魔の人格は崩壊したのかもしれない。
しかしそれは今まで常識や理性によって本当の欲望が長年カクレンボし続けてきた証で有るのだ。
そして今漸く解放された。彼女の心は解放感に満たされている。本当の自分をみつけたのだ。
今日も女悪魔を筆頭に彼女達は沼の中から全てを見てカップリングを捗らせていた。
女悪魔と女子高生と半悪魔達が作った腐女子会はBLで地上と悪魔の世界を席巻しようと企てた。
────今日もまたBLの尊い風が何処かで吹いているのだ。