表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/56

第8ラウンド 袂を分かつ

トーク中心の回、新章に向けてのプレリュードです。


登場人物紹介は諒太です。


堀岡諒太(ほりおかりょうた) 43歳 4月26日生まれ O型 北海道恵庭市出身 元世界三階級制覇チャンピオン(スーパーライト、ウェルター、スーパーウェルター)、現大枦ジムトレーナー、新ジム会長就任予定 180センチ 73キロ プロ通算59戦55勝(47KO)3敗1引き分け 右利きオーソドックススタイル


瑠希菜の父で、世界で中量級三階級を制覇した名王者で、ウェルター級に至ってはIBFで20度防衛を達成している。(WBAも七度目の防衛戦兼統一戦で獲得したが、即返上している。)

また、4団体制覇王者でもある。(WBCスーパーライト級、WBOスーパーウェルター級も獲得している)

180センチの長身と長いリーチを活かしたプレーが持ち味で、ジャブの速度は世界でもトップレベルだった。

右利きのオーソドックススタイルのシンプルなスタイルではあるが、必殺のボディーブローでKOを量産した。

温厚な性格で、心優しき人格者、人望が厚いのではあるが、行動力が凄まじいので、たびたび周囲を振り回している破天荒な性格でもある。

瑠希菜をボクシングに誘い、ボクシングの師匠でもある。

 瑠希菜と摩耶は隣同士に座る。


切れた右目のガーゼが痛々しい瑠希菜に対し、緊張した面持ちになっている摩耶。


応援には来ていたようだが、最後の試合以外は見ていなかったので、どう現していいか分からない様子だった。


諒太は大枦と話し込んでいるので控え室には不在だった。


「そのー……さ、瑠希菜……なんで、ボクシング始めたの……?」


摩耶が切り出した。


それでも重苦しいままだったが、瑠希菜はこう答えた。


「別に……父さんがボクシングやってたから、とかそんな理由じゃない。私も……燻ってたのを父さんが引っ張り出した、ってだけだから。」


まあ、建前なのだが、淡々と答える瑠希菜。


摩耶も話し込む。


「……カッコよかったよ? 今日……決勝しか見てないけど……」


「そりゃどーも……そもそもなんで摩耶は今日来たの……? 別に来なくても良かったじゃん。」


瑠希菜の言葉に言葉が詰まる摩耶だったが、言葉を絞り出す。


「……なんて言うんだろ……()()()って思って……」


「謝るってなに? 別にもうどうだっていいんだけど、バレー部のことは。」


「その……学校に来て、とかさ、バレー部に戻ってきて、とかってさ……よくよく考えたら自分勝手だったな、って思ってさ……だから……ゴメン……」


しんみりとした表情になっている摩耶を、瑠希菜は咎める気は無かった。


「……まあ何でもいいよ別に……とにかく……私は先に行くから。」


そういって瑠希菜はペットボトルの水を飲み干す。


「瑠希菜さ……ボクシング、続けるの?」


「今更何言ってんの? 目標があるのに今更あの学校には戻れないよ。湘南に転校して……父さんと二人三脚で、世界チャンピオンになるって、私の中で目標立ててるから。」


摩耶は瑠希菜の意思を聞き、持っていた袋をベンチに置いて立ち上がった。


「そっか……転校、しちゃうんだね……」


「まあね。」


「……頑張ってね、瑠希菜……私が言える立場じゃないけどさ、その……()()()()()()さ、招待、してよ? 試合にさ?」


はにかんだ笑顔で摩耶は瑠希菜にそう言った。


瑠希菜も微笑を浮かべる。


「わかった。」


「それじゃ……ね?」


と言って、摩耶は立ち去っていった。


袂を瑠希菜は自分と分かったのだとわかった時、摩耶は帰り際に泣いていた。


自責と後悔が……一気に押し寄せていったのだった。



 一方、大枦と話している諒太は、というと。


「諒太……本当に、独立するんだね?」


「ええ……会長には……本当にお世話になりました。」


「……オドオドしてた田舎者の君が……俺のところを旅立つ、か……フフ、運命とは、分かんないものだね、こればかりは。」


「……そうですね……会長がいなければ、今の俺はありませんから。」


「……プロジムの運営は想像以上に難しくなるからね。対戦相手の決定や、試合会場のオークションも海外に進出を考えているんならあるしね、そういうのは。でも俺は諒太ならやり切れると信じているよ。頑張ってこい。」


「ありがとうございます……それでは、失礼します。」


諒太は控え室にいる瑠希菜を迎えに行き、車に乗った。



 家に帰る途中の車内で、瑠希菜は一言呟く。


「……父さん……」


「……なんだ?」


「まだ……父さんには言ってなかったんだけどさ……私……()()()()()()()()()()()。」


「……そうかよ。」


「……だから……もっとさ、私……頑張るから。よろしくね、これからも。」


「ハハッ、何言ってんだよ、照れ臭えな……ま、そう言うんだったら……俺も妥協はしねえぞ?」


「分かってる……」


「そういやあ、母さんから茶碗蒸しの材料買ってこいって言われたからスーパー寄るわ。ま、明日寿司だからな、出前の。胃腸を回復させとかねえと、食いてえものも食えねえだろ?」


「そうだね。」


2人を乗せた車はスーパーへ向かって発信していったのだった。


帰宅後、茶碗蒸しを堪能した後、翌日には寿司に舌鼓を打った堀岡家だったのだった。



 三月いっぱいで独立するので、それまでは大枦ジムで練習するのだが、その間に引っ越し準備をしていく。


諒太に関しては転校手続きもしなければいけないし、制服の準備もしなければいけない。


転校先は、「湘南黄竜(しょうなんこうりゅう)中」に決まった。


だが、いわくつきの学校で、()()()()()()だった。


諒太も色々検討した結果だったのだが、そもそも湘南は不良が集まる町だ、闘争本能を鍛えるには丁度いいと判断したようだった。


瑠希菜も一年以上ぶりの登校だったので、不安は多少あったのだが、ボクシングで得られた自信を胸に新学期を迎えることとなった。



 新学期。


4月1日。


湘南堀岡(しょうなんほりおか)ジム」の旗揚げと共に、瑠希菜の新生活が始まった。


始業式までジムで諒太のミットを打ち込む瑠希菜。


トレーナーは2人雇ったのだが、選手は瑠希菜1人だけ。


とはいってもトレーニングコーチと、カットマン要員で雇ったので、万全の体勢ではあったのだが。



 4月6日。


始業式の日だ。


3年3組に入った瑠希菜は先生に紹介されて自己紹介をする。


「堀岡瑠希菜です……横浜から来ました。これからよろしくお願いします。」


ペコ、っと頭を下げて、空いた席に座った瑠希菜。


しかし、このことが()()()()()、瑠希菜の学校生活に()()()()()()()()()()()()()のだった。

新章に向けての準備は整いました。

次回から中学3年生編、「スケバン編」です。

ある出来事がキッカケに瑠希菜も巻き込まれていく、って話ですんで、思春期の成長と共に書きたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ