第53ラウンド 幕間・灼のボクシング奮闘記②
今回も灼の回。
ただし、日常回。
夏休みのある日。
練習を終えた灼は、氷織と食事にファミレスに行っていた。
どうやら彼女が灼に相談したいことがあるようで…………。
「あ、あの………灼くん………」
「なんだよ、相談したいことってよぉ………」
「………が、学校の友達、って………どう、作ったらいいのかな、って思っていて………どうすれば、いいのかな、って………」
「………は?? そんなことか???」
灼も決して友人が多い、というわけではないため、この相談をするにはやや力不足だ。
だが氷織のためとあれば、効かないわけにもいかない。
「…………学校での友達が私、いなくって………ただ進学のために勉強して、ボクシングを合間にやって………皆様には良くされてますけど、このままでいいのかな、って………」
「なーるほど………高校で、充実させたいか………嫌われたくねえ、ってところか?」
「………ハイ………ずっと、友達もいなかったものですし………」
「そうか………事情は俺も聞いているからな、いいとして………育ちがいい、ってのは悪いことじゃねえがな、だがお前にはそれが仇になっている気がするんだよな………」
「育ちの………良さ?」
「正直俺らはな………瑠希菜はともかく、親に反発してる奴らが多い。御子柴だってそうだし、獅童だってそう、俺も親父に反発していた、だがまあ、氷織は良くも悪くも育ちの良さが垣間見えているんだよ、そりゃあ、標的にもされるだろうしな………湘南はそういう奴らが多い、それは分かるだろ?」
「………そう、ですね………」
「育ちがいい、ってことは悪いことじゃねえが………標的にされやすいのも事実、友達をこの湘南で作る、ってなったらよ………俺らといた方が安心じゃねえか?」
「それは………そうなんですけど、自分を変えたくって………今でも十分なんですけど、私自身が変わらないとなんとも言えないというか………瑠希菜さんにも、迷惑をかけてしまうかもしれないし………」
「………いいんじゃねえのか? 別によ………甘えてらんねえ、って言うのは俺も理解はできる、けれどお前が急に変わってよぉ、瑠希菜が困惑するだけじゃ、ねえのか? 変わりたいと思うのは勝手だ、けども瑠希菜はもとよりそうだろうし、少なくとも俺は………そのままの、ありのままのお前が好きなんだよ。」
「………そ、そういうものですかね………??」
「真面目なのがお前の魅力だろ? 別にダチなんてよ、自然にできるもんだし、気楽に行きゃいいんじゃねえの? 俺だってダチは多い方じゃねえが同じ中学だった奴も俺を慕ってるからな、“縁”ってのはなかなか切れるモンじゃねえ、それを忘れたらどうもなんねえとは思うぜ?」
この言葉に、氷織は目を丸くした、それと同時に肩の力が抜けたような表情になっていた。
「そっかー………そういう、見方もあるのかー………あ、あの!! 灼くん!!」
「………なんだよ?」
「そ、その………相談に乗ってくれてありがとうございました!! も、もし良かったらこの後………す、水族館にでも行きませんか!?」
「急に唐突だな………いいぞ、ちょうど息抜きしたかったところだしな。」
そういうわけで、氷織と水族館を訪れることになった灼だったのだが………。
案の定、あの体格差なため、危うく幼児誘拐に間違えられかけることがしばしばあったのだが、無事に1日を終えた灼なのであった。
うーん………ラブコメ回はもっと出す方がいいのか、キャラ毎に好意を抱いている描写があるのは大事なのだろうか、と思うんですよね、ああいう興行も書く小説で。
悩みどころではある。
次回はガチスパー回。
灼vs諒太の師弟対決です。




