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第42ラウンド 似て非なるもの

悠馬が過去を語りかける場面まで書きます。

久しぶりの投稿なので、悠馬の女嫌いをどこまで書けるかどうかですねww

 基本に立ち返り、悠馬を迎え撃つ瑠希菜。


一方自分のスタイルの弱点を見抜かれ、逆に面白くなってきた、と笑みを浮かべる悠馬。


瑠希菜はコツコツとジャブを当てていき、悠馬は大きなウィービングで避けながらもカウンターを合わせようと試みるが、瑠希菜もディフェンスは鍛えていたため、ショルダーブロックやヘッドスリップを駆使してパンチをいなしていった。


(チッ………パワーバカかと思ってたが、ディフェンスもいいじゃねえか………俺の動きにもう対応してきてるって証拠だな………)


(一瞬も油断できないな………ここまで上手いとジャブだけじゃ苦しい………!! もっとバリエーションを織り交ぜないと!!)


突破口を開きたい瑠希菜は、密着戦に出た。


ガードを固めて前進し、悠馬の懐に潜り込む。


(やるじゃねえか………俺のウィービングを潰しにかかってやがる………!!)


悠馬も密着戦に応じるようで、グッと脚を踏ん張らせ、腰を落とす。


そして強引に左を被せる。


瑠希菜はガードしながらもサークリングをしていく悠馬を逃さずにサークリングで捕らえていく。


更にショートストロークの右フックを放ち、悠馬の鼻柱を打ち抜いた。


だがお返しと言わんばかりに、悠馬も右フックを瑠希菜の顔面に叩き込む。


互いにリーチが長いので、肘を畳む格好にはなってしまうが、それでも威力は十分だ。


(コイツ………思った以上に喧嘩慣れしてんな………俺相手にここまで張り合えるのはそうそういねえぞ………?)


(ただのエリートじゃない………!! ()()()()()()()()拳だ、近距離(クロスレンジ)ならどうにかできると思ってた私が甘かったな、これ………!! だったら………!!)


瑠希菜は一度離れ、ノーガードになった。


喧嘩ファイトスタイルに身を投じるようだった。


(俺相手にノーガードだと………? ムカつくな、ぶち殺す………!!)


悠馬が一気に拳を振り回していく。


瑠希菜も上等と言わんばかりに左を打ち下ろし、右アッパーを思い切り打ち上げていく。


「………オイ、オッサン………いいのか? こんな大味な真似して大丈夫か?」


灼が急に喧嘩ファイトになった2人を見て、これはボクシングなのかと問うた。


しかし諒太は笑みを浮かべながら見ていた。


「心配すんな。プロに行くんだったらああいうスタイルで行かなきゃいけねえ時もある。御子柴に関しても………ありゃ本気だぜ、瑠希菜は無論だが、な。むしろ今の瑠希菜のスタイルが本来のスタイルだ。喧嘩で培った野性と………リングで身につけた根性とで、な。」


2人は残りのラウンドも終始殴り続け、この日のスパーリングは終了したのであった。





「どうだったよ、御子柴は。随分と打たれたじゃねえかよ?」


諒太は瑠希菜にスパーリングをした感想を聞く。


「どうだった、か………強いのは確かだった、でもエリート選手にはないものを感じた………承認欲求に飢えてるよ、御子柴くんは。ボクシングを始めた時の私に似てる、でも違う………私は見返したい一心だったけど御子柴くんは………()()()()()()()()()()()()()()()というか………そんな感じがした………」


「そうかー………ただまあ、センスはあるからな、ウチには欲しい人材だが………俺も似たモンを見た。根っこは熱いんだろうけど、心に穴がぽっかり空いた感覚だな、アイツに関しては。他の奴らとは違う、反発心じゃねえ………()()()というのか、そういうのが強く見えたな。」


「………それで、御子柴くんは?」


「今山本が一緒にいるはずだが………心配か? 御子柴のことが。」


「………まあ、チームメイトだしね。女性を見下している感覚がね、御子柴くんから消えてくれればいいんだけど、今日のをキッカケに。」


瑠希菜は立ち上がり、シャワーを浴びるために更衣室へ向かっていった。




 その頃御子柴は、というと。


山本と共にいた。


こちらも共に、シャワーを浴びながらではあるが。


「お前よ………瑠希菜になんであんなに敵愾心を向けてんだよ?」


「………気に入らねえだけだ、()()()()()()()()()からな………」


シャワーの音だけが流れ、沈黙が漂う。


山本がここで話を切り出す。


「まあ………俺もお袋が何回も再婚しては離婚して、を繰り返してたからよぉ………気持ちは分からなくもねえ、そんでイジメみてえなことしてたからな、複雑な感じを埋めるために、な。」


「………アイツにはどう思ってんだよ?」


「曲がったことを許さねえヤツだからな、瑠希菜は。ま、本人が湘南に来た経緯からしたら納得だけどよ? アイツに分からされてなかったら、今俺は昔よりも碌でなしになってんぜ。悪い奴じゃねえし、寧ろいい奴すぎんだ。だからああやって俺らみてえな奴らがついてくんだ。」


嬉々として瑠希菜を語る山本、悠馬は聞いていて不審な顔を浮かべていた。


だが山本と共通点を覚えたのか、悠馬はフウ、と息を吐いた。


「………そうだな、俺の過去を………話しておくか。」


「過去? 女嫌いの理由か?」


「まあ……それもあるな、だが………クソ野郎にしか恵まれてねえ人生だぜ? 俺の人生は。」


「いくらでも聞いてやる。お前、最初は印象は最悪だったけどよ、今じゃあ俺は同情できてる。瑠希菜と氷織以外は俺みてえな奴らばっかだからな、御子柴程度の話は幾らでも聞いてやる。」


どんと来い、という山本の器の広さに、悠馬はシャワーを止める。


「………悪いな、山本………実は俺は………」


悠馬は一息吐いて、こう言った。


「俺は、()()()なんだ。」

次回は、悠馬の過去を山本が聞いていく形になります。

そしてこれを聞いて、瑠希菜が動きます。

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