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第41ラウンド 「悪魔王子の型」(ハメド・スタイル)

後の展開でも、カギを握ってくる「ハメド・スタイル」。

小説で再現するのがマジで大変なんですが、頑張って書こうと思いますw

 悠馬は瑠希菜に対してノーガードのスタイルだった。


対男女の余裕からか、それとも本来のスタイルなのか______サウスポーのスタイルではありながら、独特でやりにくいのもいいところである。


対して瑠希菜はガードを挙げ、ステップを踏みながら様子を見る。


瑠希菜は大きく右足を踏み込み、リードジャブを放った。


が、次の瞬間、悠馬は大きくウィービングをしたかと思えば、その体勢から右アッパーを繰り出した。


大振りだったため、幸いにも被弾はしなかったが、迫力のある拳に見ていたメンバーは響めきの声を挙げる。


(………!? なに、今の………!! めちゃくちゃ下からアッパーが………!!)


瑠希菜が動揺した一瞬を見逃さない悠馬は、変則的な動きをしながら左右の拳を次々と放っていく。


長身で、3階級上のフェザー級を主戦として戦う悠馬を相手にすれば、下がらざるを得なかった。


しかし、諒太は瞬時に見抜いていた。


悠馬のボクシングスタイルを。


「………『悪魔王子の型(ハメド・スタイル)』、か………」


「え………!? こんな変なボクサーがいたんですか!?」


紀利華が驚きの声を挙げ、諒太の呟きに反応した。


「………1990年代に世界フェザー級を席巻したボクサーが………使っていたスタイルだ。その偉大な世界王者の異名から、その名が付けられたんだよ………しかし日本で、しかも高校生でこのスタイルを使う奴がいるとはな………」


「じゃ、弱点ってあるんですか!?!? 世界王者を取ったくらいのスタイルなんですよね!? 何処なんですか、弱点は!!」


「弱点は、その大きな動きにある。大きく動けば的を絞りづらくなるが………その分パンチまでの無駄な軌道が増える。つまりは………動きに合わせるように小さいジャブのカウンターを丁寧に小突いてダメージを与えていく、シンプル且つ、一番難しいことをしなきゃいけねえのが………御子柴が今使っているスタイルの戦い方なんだよ。いわば()()()()()。」


攻略の難しい悠馬のスタイルを捌かなければいけない、その事実に直面している最中である。


瑠希菜は苦戦を強いられ、やや防戦気味になりながら第1ラウンドのタイマーが鳴り響いた。





 コーナーで水を含みながら、諒太のアドバイスを受ける瑠希菜、その返答は。


「………()()()()()()()、ってこと?」


「そうだ。御子柴はウィービングを多用してくる。ボディは狙わなくていい、とにかく追いすぎずに会わせてジャブをコツコツ打て。」


「………おっけ。最初戸惑ったけど、打ち出しのクセは掴んだ、行けると思う。」


インターバルのタイマーが鳴り、2人はリング中央に立った。


悠馬はいつも通りだったが、瑠希菜はスタンスを先ほどより狭くし、右手を前に出し、迎え撃つ体勢を整える。


(はーん? ベタ足で俺を止めようってのか………?? だが俺の動きについてこれていねえ、お望み通り嬲ってやるよぉ!!)


ウィービングをしながら左オーバーハンドを放つ悠馬、しかし、瑠希菜は直線的に突っ込んでくる悠馬に対し、ノーモーションのジャブを放った。


(チッ………もう適応しやがったか………こりゃ強えな、見直したぜ………)


(流石に強い、強いけど………こっからが私のターンだ!!」


2人の激戦の様相は、間もなく激化していくことになるのである。

次回も引き続き。

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