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第40ラウンド 生意気な同級生

今回から高校編の開幕です。

新キャラが続々出てきますので、僕も脳内がバグらないように頑張りますwww

とはいえ、紹介は一部だけですけどww

 瑠希菜と紀利華は、サンドバッグを叩いている男子生徒を見つけて呆気に取られていた。


スラっとした長い手脚から鋭く速く、重い拳を次々と繰り出していくのだから、それが音で伝わってきていた。


しかも顔も、眉目秀麗でいかにも女子にモテるような容姿をしていた。


瑠希菜がバッグを置いて準備をしようとしたところ、その男子から声を掛けられた。


「オイ、お前………噂の()()()()()か………?」


「…………は??」


何のことかさっぱりと分からない瑠希菜は、この問いかけに唖然としていた。


そして感じ取った。


この男子はヤバいヤツだ、と。


「………技術もへったくれもないザコを監督は良くもスカウトしたもんだな………どうせフロックなんだろ? 三ツ矢に勝った、ってのも。」


この言葉に瑠希菜はカチンときたのか、一気に詰め寄った。


「なによ、アンタ………さっきから偉そうに、何様なのよ?」


すると、その男子はグルっと勢いよく振り向き、瑠希菜を睨む。


「………悪いが………俺は女が嫌いだ。特に………()()()()()()()()は、な。」


侮蔑の目を向けていた、その男子。


感じは悪いのは事実で、瑠希菜も反射的に殴りそうになったが、右拳をギュッと握るだけで睨みながら耐えている。


「ちょっと? 2人ともさ、一回落ち着こ? 喧嘩したってしょうがないじゃん?」


紀利華が間に割って入る。


だが男子は蛇が睨むような顔で紀利華に詰め寄る。


「………テメエはアウトオブ眼中だ………失せろ。」


「はあ? アタシもボクシング部員なんだけど。マネージャーとしてさ?」


男子は紀利華に興味が失せたかのように、目を逸らした。


「………()()()()()()()()()。女は皆、クソ野郎だって相場は決まってる。誰かに媚びを売らねえと生きられねえ………弱い生き物だ。」


男子は苛立ちを吹き飛ばすかの如く、サンドバッグに向かって左ストレートを放った。


吊るしてあるチェーンが、ガシャン、ガシャン、と大きく揺れた。


「………瑠希菜、行こう? あんな奴に構うだけ、時間の無駄。いい?」


「……分かってるよ………」


瑠希菜は更衣室へ向かっていき、着替えながら考えていた。


(………女がどうこう、ってアイツは言ってたけど…………あんな事を言う奴は()()()()()()()()()()………広大たちと関わっててよかった、確かに実力はある、でも心の奥が………暗すぎるくらいに暗い………昔の私とも違う、恨みや憎しみ………そんなのを感じるな………)


バンテージを巻きながら、身体を軽く解してから練習に臨んだのであった。





 男子部長の「記虎空河(きとらくうが)」と女子部長「城田小夜葉(しろたさやは)」の自己紹介をされた後で、1年生の男子13名、女子5名の自己紹介をすることになった。


瑠希菜に突っかかってきた男子は「御子柴悠馬(みこしばゆうま)」と言うらしい。


どうやら瑠希菜と同じで、推薦で来た生徒のようだが、爽やかな顔の、裏の黒い顔を知っている瑠希菜と紀利華は、訝しげな顔になった。


練習終わりに帰宅する時も、瑠希菜と紀利華は走りながらではあるが、悠馬の話になる。


「………ホント、御子柴ってヤツさ、生意気もいいところじゃない? 顔だけのヤツ、マジでアタシ嫌いなんだけど。」


「………ただ、ボクサーとして考えたら強いと思う………それに………」


「………それに、何? 瑠希菜、御子柴の肩を持つわけ?」


「……仲良くなれる、なんて思えない。けれど御子柴くんには何かしらの闇が見える。広大たちも、アンタも………似たようなものだったけどさ、御子柴くんだけは違う………私にもわかんない、だけど分かる、絶対に女性関連で何かあった、そうじゃなきゃ『女が嫌いだ』なんて言葉は絶対に出てこないと思う。」


「………けれどやっぱアタシには御子柴は無理だわ。頭凝り固まった偏見ヤローに………付き合えるなんて頭おかしいとしか言えないって。」


「まあ、変わったヤツなのは認めるよ。ただ、どうにかしないといつか御子柴くんは孤立すると思う………私には、何か重い十字架を独りで背負ってるように見えるからね………」


「ほっときゃいーでしょ、あんなヤツ!! 碌な事ないのこっちだっての!!」


悠馬への愚痴が飛び交う中、2人は湘南堀岡ジムまで向かって行ったのであった。





 ジムに到着した後、妙に空気が悪いことに気づいた瑠希菜と紀利華。


その原因は、というと。


「げっ………なんでいんのよ、御子柴………」


「あ………? なんで、って………今日から入会してんだ、文句あるか……?」


なんと悠馬がジムに来ていたのだが、相変わらず人付き合いが悪いのか、山本達が怪訝な顔をしているのが見えた。


と、悠馬は急にサンドバッグから離れ、リングに勝手に立った。


「オイ、堀岡………早く上がれ。」


「………?? まあいいや、私も御子柴くんに色々聞きたいことがあるから………アップなしでもやったげるよ。」


瑠希菜は速攻で着替え、グローブを嵌めてリングに上がった。


リングサイドで諒太から話を聞く。


「悪いな………行く宛がねえんだとさ、御子柴曰く。俺もどういう意図かは知らねえが、同級生なんだろ?」


「そうだね………ただ、感じは悪いけど。」


「ただな、めんどくせえヤツ、ってのは俺も分かる。色んな意味で、な。今日は3分8ラウンドの予定でやるからな、アイツの意図を探ってこい。」


「………オッケー。」


瑠希菜はマウスピースを嵌め、大きく毛伸びをしてタイマーが鳴るのを待った。


一方、御子柴はまるでコーナーを自らの玉座のように背に寄せて踏ん反り返っていた。


そしてタイマーが鳴る。


2人はリング中央で拳を合わせた、次の瞬間だった。


腕をダラン、と下げ、身体を屈ませた格好に悠馬はなった。


「ああ、言っとくと………俺は女には情けはかけねえ………フルボッコにするまで辞めねえぜ? 俺はよ………」


「こっちだって手加減はしない………アンタの偏見、取っ払ってあげるから………」


悠馬とは対照的に、瑠希菜はガードを高々と掲げて様子を見る戦法を取った。


互いにサウスポースタイル、しかしこの後、想像を絶する激闘になることを、諒太は予感していたが、他のメンバーはただ、固唾を呑んで見守るだけで、想像もへったくれもなかったのであった。

次回はスパーリング回。

悠馬の女嫌いの理由は後ほど明らかになりますが、結構重く仕上げてますのでお楽しみください。

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