第39ラウンド 頂点に立つために
第二章終了です。
第三章につながる内容になればいいかな、と思いますので頑張っていきたいですね。
瑠希菜はその後、他の高校の監督とも面談を受け、進路を決める日が迫ってきていた。
だが、当の本人は決めていた。
高校は「栖鳳大附属湘南」にすることに。
ただ練習を見てみないと何も分からないというのが実情としてあるので、学校が休みの日を利用して訪れることにしたのであった。
というわけで訪れてみた。
総勢25人の部員が、広い施設でサンドバッグを一心不乱に打ち込んでいる姿があった。
これが強豪校の練習か、と瑠希菜は思ったが、同時に諒太の練習の方がハードだったな、ということが脳裏に浮かんできた。
「ほー、来たかいな、瑠希菜。」
黒川が出迎える。
「はい、進学先を決めましたんで。ご挨拶と見学に伺おうかと……」
「それでウチに、か……歓迎するよ。そんで、ウチの練習はどうだ?」
瑠希菜は少し考え、こう告げた。
「正直……ジムの方がもっと必死にサンドバッグを打ち込んでますね。あと、パンチに強弱がある人が少ない、典型的アマチュアの、アマチュア戦のための練習って感じがしますね……」
率直な感想を、正直に述べた瑠希菜は、言葉は選びながらそう告げた。
「なるほどなぁ……けれどまあ、ウチもそれなりにはやってはいるんだけどね、流石世界チャンプの娘は言うことが違う。」
「恐縮です。でも……もう一個、あるんです、ここを選んだ理由。」
「? なんだ? 言ってみろ。」
「夏帆と約束したんです。全国の舞台でもう一回戦おう、って。だから色々お話を聞いて、一番近そうで……私の考えも尊重してくれたのがここだったというわけです。」
「………ハッ!! 面白いな、お前は本当に!! 気に入ったよ、ますます。よし分かった。4月から厳しいメニューを取り入れてみるか、俺も久しぶりに部員全体に、な。全員本腰を入れてやって……高みを目指すぞ、一緒にな。」
「はい、よろしくお願いします。」
黒川と瑠希菜は意気投合したようで、瑠希菜は改めて栖鳳大附属湘南高校に進学することを決めたのであった。
翌日。
ジムで紀利華にこの事を話すと。
「えーーーーーー!?!?!? 瑠希菜も栖鳳に!?!?」
「……紀利華、“も”ってなに? “も”って………」
「瑠希菜、アタシもそこに進学むんだよ!! 学業推薦で、だけどさ!?」
「あー……紀利華、成績いいもんね。」
「そうなんだよ!! ボクシングに集中できる環境下だからさ、行けてよかったなー、って!!」
どうやら紀利華も、瑠希菜とは別の方向で推薦を貰ったらしく、よく見るといつも着けていたピアスを外していた。
高校で真面目にやる、という覚悟の現れだろうな、瑠希菜はそう思った。
「……でもプロどうすんの? 私は高校で全部KOで勝たないと17で受けれないから……」
「そりゃあさ、プロもやるよ!! けど瑠希菜と同じ部活に入る!! マネージャーとして!!」
「……へ? ま、マネージャー??」
突拍子もない紀利華の答えに、瑠希菜は困惑の色を隠せなかった。
紀利華はそれについてこう話した。
「だってさ? 瑠希菜の練習を近くで見てきてさ、もっと近くで支えなきゃ……!! って思ったんだよ、普段の生活でもさ?? だから兎に角外で見て、プロでも活かしたいんだよ、そういうのを!!」
「……まあ……うん、それならいいんだけど。じゃあ……これからもよろしく、って事でいいのかな? 紀利華。」
「あったり前じゃん!! 瑠希菜はアタシの恩人だしさ? 少しでも返したいから、その恩を!!」
「……なんか照れ臭いな、確かにキッカケは私かもしれない、でも……私も、紀利華に刺激を貰ってる。私にはない感性を紀利華は持ってるから……羨ましいな、って。」
瑠希菜も紀利華をリスペクトしている、という旨を伝えると、紀利華は「何言ってんのさー!」と言わんばかりに肩を叩いたのであった。
その他に山本、谷口、戸田、江口、灼、海華もそれぞれ県立校に進学を決め、桜が咲く春にジムは同じながらもそれぞれの道を歩むことになるのであった。
そして迎えた入学式。
瑠希菜は紀利華と共にボクシング部を訪れた時、眉目秀麗な男子がサンドバッグを打ち込んでいるところを目撃したのであった。
次回から新章になります。
高校編はまずインターハイ編→国体編→全日本選手権編→U18アジアカップ編→ジュニアオリンピック編という感じで進んで行って、それと並行して灼の奮闘記も同時に書こうと思います、彼は「もう1人の主人公」なので。
瑠希菜の過去のバックボーンも、インハイ編では掘り下げていこうと思っているので、そこも併せて書ければいいかなー、という風に思っていますので、次章もよろしくお願いします!!




