第32ラウンド 青竜との抗争
この回から青竜中との抗争に入りますが、まあ、予想通りの展開になるんじゃないかな、と。
県大会が終わった週の月曜日。
瑠希菜はジムに戻り、いつも通りの教室で、海華といつも通りに話していた。
「あのさー、るっち。親から許可貰ったからさ、今日からジム来ていい?」
「……まあ、いいよ。元々そう言ってたからさ、海華。私は全然いいけど……」
「よかった! じゃあ教えてね、るっちのジム!!」
なんて、談笑していたら山本が。
「あ……あのよ、瑠希菜……手は大丈夫か?」
瑠希菜本人がOKしたのもあるが、もうすっかり気安い呼び名になったものだ。
「ん? まあ、しばらくこのまんまだよ? その分トレーニングはするけどさ?」
「あー……あのよ、今日会長が居なくて休みだったろ? だから青竜中との抗争に移ろうって俺たち話してたんだわ。」
「……だったら勝手に行けば? あとは灼に聞いて。アイツにだけは伝えてるから。第一怪我してるのに行けるわけないじゃん、抗争なんて。」
「そっかー……というか、保坂もウチに来るんだろ?」
「まー、そりゃあね!? 綾沙の事は感謝してるけどさ、アイツ一層真面目になったし!! けどヤンキーに絡むなんてまっぴらゴメンよ、私は!!」
「いや、ジムの話してんだよ、俺は……」
……妙に噛み合わない話ではあったが、なんだかんだで海華が湘南堀岡ジムに加わる事になったのであった。
そして夕方。
瑠希菜は手取り足取り、ボクシングの基本を海華に叩き込んでいった。
ジャブの打ち方、ストレートの打ち方、ガードの基本姿勢や足の捌き方など、一から自分がそうだった時のように教え込む。
海華は持ち前の運動神経を如何なく発揮していく。
だが、瑠希菜と比べればいくらか軽い方で、バランス型、というのが瑠希菜のミット持ちをした上での主観であった。
「海華さー……やっぱり体力あるよね、前々から思ってたけど……流石陸上部だよ。」
「……てかるっちもすごいよー……右手一本でミット受けてくんだからさ……」
「そういうわけじゃないよ。父さんの見よう見まね。」
「そういやあさ、お父さんは? 今日いないって山本から聞いたけど……」
「父さんなら解説の仕事で東京。世界戦なんだよ、今日。WBO世界スーパーフライ級の防衛戦。」
「だぶりゅー……びーおー………???」
「世界主要団体は世界が認めているので四つ。『世界ボクシング協会』WBA、『世界ボクシング評議会』WBC、『国際ボクシング連盟』IBF、『世界ボクシング機構』WBO……これが今のボクシング界の世界で最も権威のある団体って言われてる。その内のWBOという団体が今日の父さんの解説の仕事。」
「なんでそんな別れてるの? てか、それぞれの団体にチャンピオンがいるわけだし……」
「色々一悶着あった末にこうなった、って話。それぞれの汚ったない大人のゴタゴタだよ、要は。」
「あー……聞いちゃいけないやつ聞いちゃったんだ、私……」
「まあ、私は昔からボクシングの環境にいたからね、見る立場ではあったけど。やる側になってからより一層、そう思うようになったけどさ。」
ジムには紀利華や氷織もいる。
休みとは伝えたはずなのに、この二人は何故か来ているのだが。
氷織はともかく、抗争に参加するはずだった紀利華がいる理由が分からないのは瑠希菜の中にはあった。
「……まあ、最初はこんなもんだけど……海華、サンドバッグそこにあるから打ってって。」
「分かった。」
瑠希菜は紀利華と氷織をリングに上げ、ミット打ちを手がけて行ったのであった。
その頃、山本達は。
青竜中との抗争場所に全員が集まっていた。
朱雀中、白虎中の面々も集まっており、完全総力戦の様相を呈していた。
青竜中の軍団が集合した時、開戦の火蓋が切られたのである。
次回はケンカパート。




