第24ラウンド プロ相手でも
今回は遠征回。
瑠希菜無双。
瑠希菜は遠征に出掛けていた。
それも諒太の言伝で東京のジムに。
日本最大規模を誇る「聖拳ジム」。
その女子プロのプロスペクトを相手にスパーリングを行う、ということだ。
胸を借りるつもりでやってこい、という諒太の助言を受け、瑠希菜はスパーに望むことになるのであった。
のだが。
約5人が10分で相手をしたのだが、14オンスなのにも関わらず全員を左ストレートでKOをしてしまったのだ。
ジム内がざわめいている。
中にはOPBFの二階級上のランカーもいるのだから驚きだ。
「……正直足りない……夏帆に勝つにはタイミングが足りない……」
瑠希菜はやや不満げに拳を握りしめる。
「ったく、成長著しいな、お前は……全員日本とか東洋とかのランカーだぜ?? それを圧倒しちゃうのかよ……」
諒太はボトルで水を飲ませながら感嘆していた。
まさかプロを圧倒してしまうとは予想外だったからだ。
諒太はその後、ジムのトレーナーと話していく。
と、ここで現世界王者が。
WBCスーパーフライ級チャンピオン・「天崎宏美」が瑠希菜のいるリングに上がった。
戦績は37戦32勝12KO4敗1引き分け。
現在2度防衛中の36歳だ。
アウトボクシングと堅いディフェンス、ここぞでのカウンターが持ち味の右ボクサーだ。
「へえ……現役の世界チャンピオンが……光栄だね。」
瑠希菜は少し笑う。
やっと渇望が埋められるのか、というくらいに。
「さて……見た感じ凄いパンチャーだったから……カウンター、狙うかな。」
天崎も臨戦態勢に入り、シャドーをする。
そしてタイマーが鳴った。
瑠希菜は先制でジャブを繰り出すが、天崎の前ではブロックに阻まれる。
(さすが……これくらいはガードしてくるか……)
(いいねぇ……初めて一年ちょいって聞いてたけど……まさかここまでなんてね……)
お互いにステップを踏みながら様子を見ていく。
瑠希菜はジャブ二発から左ストレートをガードの上から放つ。
天崎は左のタイミングでバックステップで威力を殺した。
(チッ……距離の取り方が上手い……足使ってどうにかしないとな……)
瑠希菜は様子を見てサークリングで詰めていくが、天崎も右ボディストレートから左フックを放つ。
瑠希菜は左をダッキングし、下からジャブを鋭く放った。
天崎も右打ち下ろしを放つ。
それはお互いの顔面を捉える。
(そっから……左、でしょ?)
天崎は左ストレートを予感したかのように、上体を引いて左フックを放つ。
だが、瑠希菜は違っていた。
ここで打ち出したのは左ではなく、右のボディーフックを放った。
ガラ空きだった脇腹にクリーンヒット。
天崎の顔が歪んだ。
ここで流れを掴んだのか、瑠希菜は左ストレートを放ち、後退させると最後は左オーバーハンドで天崎からダウンを奪ったのであった。
スパーリングを終えた後、帰り道で諒太は瑠希菜に話す。
「どうだ? スパーは。」
「……初めてだったけど悪くはないね。ただ……夏帆はまだ強くなってる。それは観て思った。だから少しでもダメなところを直してく、それだけ。」
「……そうかよ……だったらまだ、教える余地はありそうだな。」
「……こんなのじゃ勝てないから……追い込んでく。こっから。」
「……わかってるならいいさ。俺もビシバシ行くから覚悟しとけよ。」
親子であり、師弟関係でもある2人、ここから県大会に向けて追い込んでいくこととなるのであった。
次回から県大会です。




