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第18ラウンド 凶熊・式見灼

この回は激突。


意地と意地がぶつかり合う。

 江口を助けに向かい、砂浜へとやってきた瑠希菜。


が、瑠希菜は湘南の土地勘があまりなかったため、山本達の方が先に江口が人質となっている現場へと到着していた。


「………あれ、アンタ達も来てたの……?」


「瑠希菜さん……アンタを止めるためだ。会長に言われてな。そんで江口を助けんのはお前らに任せるって。」


この山本の発言を聞いた瑠希菜は顰めっ面になった。


不快だったのだろう。


「……いくら父さんに言われようがさ……! ()()()()()私はアンタ達のリーダーになったの!! 仲間がヤバいって時に助けにいかないって何よ!!」


瑠希菜は珍しく感情を表に出していた。


仲間思いな一面が、元来の気の優しさが全面に出ていた。


「……ほんっっっと……アンタってヤツはよぉ……無鉄砲なんだよ、そういうところが。……分かった。会長には俺らが連絡しとく。だからアンタは仕留めに行け。朱雀の『凶熊』を、な。」


「……分かった。じゃ、恭吾はお願いね。」


そう言って「腑狼」のメンバーは、ビーチへと足を踏み出した。




 「……来たか……」


灼が呟く。


灼は舎弟に命じ、金属バットやら何やらを持たせた舎弟を「腑狼」に向かわせて襲わせた。


総勢50人ほど。


統制自体は取れているわけではなかったが、勢いだけはある。


だが、ボクシングで力をつけた3人はこれには動じない。


山本、谷口、戸田は、次々となぎ倒して行き、瑠希菜が灼へと向かうルートを作らせる。


「番長!! アンタは先に行け!!」


瑠希菜は頷き、灼の舎弟の群衆を中央突破で猛ダッシュをかけた。




 叫び声を挙げながら突撃する瑠希菜。


「チッ……灼を守れ!!」


5人ほどの部下が灼の周囲を固める。


だが、瑠希菜はものともせず、パンチを使うまでもないと、膝蹴りやエルボーで次々となぎ倒していった。


遂に瑠希菜と灼が対峙した。


灼は186センチ体重96キロの巨漢だ、女子の中でも長身の瑠希菜でも首の角度を高く見上げる格好になった。


「お前が……コイツのリーダー、か……」


灼はそう、ボソッと言い、江口の首根っこを掴んで投げ捨てた。


瑠希菜は丁度到着した山本に江口を預ける。


「……広大から聞いてるよ。アンタが朱雀の熊さん?」


「……どう呼ばれようが勝手だが……俺には『式見灼』……って名前があるからな。」


灼は独特の構えでファイティングポーズを取る。


「……私は堀岡瑠希菜。……後のボクシング世界王者。」


瑠希菜も静かに自己紹介し、サウスポースタイルでガードを高く上げる。


江口は声を上げる。


「やめとけ、番長……!! ソイツはマジでヤベエ……!! 下手したらアンタより強えぞ……!!」


「オイ、喋んな!! 安静にしてろ、恭吾!!」


瑠希菜は江口の方をチラッと向く。


そしてまた、灼の方に視線を戻す。


「……分かってるよ……()()()()()()()()()()()()()()ってことくらい……」


「……フン……言ってくれるな。だが()()()()()。お前は江口とは格が違うってことくらいわかる。」


互いの学校のリーダー、最強格同士がぶつかり合おうとしていた。




 トントン、とステップを踏む瑠希菜に対し、灼はどっしりと構えている。


これだけでも緊張感が互いの陣営に漂っていた。


下手に仲裁に入ろうものなら、二人に殺されかねない雰囲気だった。


身長差15センチ、体重差40キロほど。


体格差は歴然なのに纏う雰囲気はお互い同じという地獄絵図のような空気。


どちらが最初に手を出すのか____________


空気が張り詰め、全員固唾を飲む。


同時に前足を踏み込んだ両者。


お互いノーモーションの利き手の拳を繰り出す。


拳と拳がぶつかり合い、素手ながらも衝撃がビーチ内に響く。


その風圧が響く。


その後、二人は一進一退の殴り合いになっていった。


だが体格に勝る灼が優勢となっていった。


しかし瑠希菜も一歩も引かず、ボディへの攻撃を中心に殴っていくが、筋肉なのか脂肪なのか、硬い。


今までよりもずっと。


しかも灼の拳の軌道も独特だった。


ディフェンスもいい瑠希菜でも全てを避けきれない。


だがこれも、諒太から事前に聞いていた。


(ボクサーは空手経験者が多い、って話だった……灼のは正にそれだ……! 極真空手、変わった軌道なのに衝撃がある……!! だからって萎縮するわけにはいかない!!)


瑠希菜は歯を食いしばり、左のオーバーブローを顎に向かって放つ。


ボディに目が行っていた灼はまともにもらい、後ろにたたらを踏んだ。


だが、すぐに持ち直し、ツーステップで一瞬で間合いを詰めると、右上段蹴りを瑠希菜に向かって放った。


完全に意表を突かれた瑠希菜は左目にまともに貰い、拳を地面に突いた。


一瞬で瞼がカットされ、左目からは鮮血が飛び散った。


目に血が入り、視界もぼやける。


だが瑠希菜もお構い無しだった。


スタっと立ち上がると、左アッパーを渾身の一撃で繰り出し、灼を宙に浮かせた。


着地と同時に膝が落ちた灼を右のロングフックで吹き飛ばして倒した。


灼の左目の下も腫れるほどの威力だった。


これでお互い1ダウン。


しかも殺し合いなのかと思われるほどの全力の殴り合い。


お互いがお互いの強さを認めている証でもあった。


「……正直ここまで強いとはね……」


左手の親指と人差し指でカットした部分を抓って抑え、ガードを高く掲げる瑠希菜。


しかしその目は獲物を喰らう目というより、相手を威嚇する目だった。


「それは俺も同じだ……俺の蹴りを喰らってすぐ立てるヤツなんざお前くらいだ、堀岡。」


灼も負けないという意思表示の目をしていた。


再び睨み合う両者、だがこの後、誰も予想していない、意外な展開を迎えることになるのだった。

次回も死闘になりますが、最後はそうなるの!?……みたいな感じになります。


来週もまたお楽しみに。

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