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第16ラウンド 瑠希菜VS氷織

今回はマススパーの回ですね。

長身の瑠希菜と小柄な氷織とのマッチアップの構図は、対インファイターですね。


今回の登場人物紹介は氷織です。


藤光氷織(ふじみつひおり) 湘南黄竜中2年 湘南堀岡ジム練習生 7月20日生まれ A型 147センチ 35キロ 右利き 3サイズB72(Bカップ)W54H74 好きな食べ物 シャケおにぎり 趣味 料理


瑠希菜が助けた、元いじめられっ子の少女で、学校でもジムでも瑠希菜や腑狼メンバーの直属の後輩。

気が弱く優しい性格ではあるのだが、我慢強い性格でもあり、練習では妥協をしていない。

選手としてはパンチ力の無さが致命的であり、練習では毎回トイレで吐いているほど運動能力も高い方ではないが、諒太に徹底的にディフェンスを叩き込まれたことで前後左右の出入りが上達してきており、ヒットアンドアウェイのアウトボクサーに進化している。

作中では癒し系の立ち位置。

 湘南堀岡ジムが雇ったトレーナーは2人いる。


元フェザー級世界13位の坂井怜太と、元日本ミニマム級王者の友寄清二郎。


諒太が紀利華に付きっきりでボクシングを教えているので、瑠希菜と腑狼メンバー、氷織はそれぞれにミットを持ってもらってパンチを打ち込んでいった。


心地よい音が鳴り響き、声もよく出ている。


ミット打ちを瑠希菜だけ8ラウンドを終えた後、諒太が紀利華に声を掛ける。


「紀利華、スパーリング……見てみねえか?」


「見たいっす!!」


「よーし、瑠希菜! 氷織! リングに上がれ!! マスだ!!」


瑠希菜と氷織は言われるがままヘッドギアとマウスピース、瑠希菜は16オンスのグローブ、氷織は14オンスのグローブをそれぞれ付け、リングに上がった。


審判は坂井がやることになる。


タイマーが鳴り、2人はリング中央で拳を合わせた。


2人ともガードをしっかりと高く掲げて構えていた。


(さーて……氷織がどう来るか、かな……小さいから本来は当てにくいんだけど……ま、対インファイターの練習にはなるか。)


瑠希菜はサークリングしながら氷織の様子を伺っていた。


(()()()()()()()()怖い……これが瑠希菜さんの威圧感……! 普段とリングだったらまるで違うな、やっぱり……)


フウ……と一つ息を吐く氷織。


いきなり踏み込み、ダイレクトの右をボディーに氷織は放った。


瑠希菜は体を丸めて衝撃を逃す。


(瑠希菜さんには何発も入れないと無理だ……! とにかく大きい人にはボディ、ボディを!)


氷織は懐に入り込み、左右のボディフックを瑠希菜に連打する。


しかしまあ、お察しの通りパンチ力が氷織には皆無すぎるので、ダメージはない。


というのもこの2人の身長差であれば、このようなケースも織り込み済みである。


(リズムの変化はない……パンチもまあそれほどでもない、なら……左アッパーを当てて右フックで脱出!)


瑠希菜は右ボディに合わせて左アッパーを放ち、軽く側頭部に右フックを当てて右回りでサークリングをして脱出した。


(手応えはなかったな……ちょっと掠ったくらいで……父さん、()()()()()()()()()()()()叩き込んだね? 氷織に……)


やりにくいな、と瑠希菜は感じていた。


一方の氷織は。


(危ない……! リズムを掴まれてた……下見てなかったら倒されてた……!)


冷や汗が氷織に滲み出ていく中、スパーリングは続いていった。




 「瑠希菜、あんなに速いんですね……リズムを掴んだら一瞬だ……!」


紀利華は諒太に向かってこう言った。


「……まあこういうのは俺が教えたからな。アイツのパンチ力は女子プロの中で見てもトップレベルだ。相手を観察してパンチを合わせる。瑠希菜にはパンチ力を生かすための細かい技術を叩き込んだ。いわばパンチの強弱だ。素手による喧嘩なら思いっきり殴りゃあ倒せるさ、だがボクシングは違う。殴り合いのようで()()()()()()()が行われてるのさ。ただアイツは氷織みてえな極端に小柄なやつと戦ったことがねえ。瑠希菜には小柄なインファイターが当たってきても大丈夫なように……インファイトを今叩き込んでる最中だよ。」


「でも……あの子に勝ち目あるんですか? 見た感じパワーは無さそうですけど……」


「……さあね……ただアイツは地頭はいいんだ。やられっぱなしで終わるタマじゃねえ。絶対に踏み込んでくる。氷織はどう距離を潰してクリーンヒットを狙うか……瑠希菜がどう動くかを見とけ。」




 リングでは、意外な展開を迎えようとしていた。


なんと瑠希菜の方から攻め込んできたのだ。


ジャブ、ジャブ、ジャブ、とトリプルで連続して当てた後、左ストレートをガードごと氷織を打ち抜く。


瑠希菜のフライ級と氷織のアトム級では3階級も違う。


瑠希菜のパワーパンチを当てられ続ける氷織は後退させられた。


だが瑠希菜も冷静だ、1発ずつ丁寧に、ジャブを当てていく。


氷織も叩き込まれたディフェンスでなんとか凌いでいるとはいえ、攻めなければ遠い距離からサンドバッグにされるだけだった。


氷織は意を決してダッキングで懐に潜り込んだ後、ジャブの打ち終わりに飛び込んで左フックを放った。


瑠希菜はスウェーバックでこれを避けたが、氷織はすぐさま着地して右ボディストレート、更には垂直ジャンプからの顎への左フックを立て続けに放ち、瑠希菜を下がらせた。


瑠希菜は足を使い、被弾を回避するが、氷織もお構いなしに迎撃してくる。


だが、当たらない。


瑠希菜は完全に距離感を把握しているようだった。


氷織は右ボディストレートを放つ。


だが瑠希菜はこれを待っていた。


小さくコンパクトな右フックを、氷織の顎に目掛けてピンポイントで放つ。


カッ……という小さな音と共に、見えていなかった氷織はグラついた。


瑠希菜はこの一瞬を見逃さず、左打ち下ろし、右アッパー、左フックで氷織を薙ぎ倒したのだった。




 バシャッ!!!


バケツから水が大量に氷織の顔に降り注いだ。


「あ……あれ? スパーは……」


目が覚めた氷織が辺りをキョロキョロしながら諒太に問いかけた。


「お前の意識が飛んだから終了だよ。……ったく、お前、懐に入ろうとしすぎててディフェンスを忘れてたろ。……まあ、瑠希菜相手ならそうするしかなかったかもしれねえけど、攻撃に集中しすぎてディフェンスが疎かになったらダメだろ。」


「……すみません……」


「いーよ、謝ることじゃねえ。むしろ無茶振りさせたんだ、俺が。申し訳ねえのは俺の方だよ。……まあでももうちょっとフェイントだったりを入れてみてリズムを乱してみるのも良かったかもな。」


「ハイ………課題にします……」


氷織は落ち込んでいる様子だったが、収穫アリ、といったところだろう。


紀利華もスゴイと言ってくれたことだったし、ひとまず今日はこれで……と諒太は思い立ったのだった。

次回はまた抗争に戻ります。

次に叩くのは朱雀中なんですが、ここで「もう1人の主人公」が出てきますのでお楽しみください。

次回の登場人物紹介は紀利華です。

ではまた来週。(どう見ても瑠希菜と氷織はミスマッチでしたねw)

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