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第15ラウンド ボクシングVS合気道

瑠希菜VS紀利華です。


……とはいえ合気道にそこまで詳しくないので、知っている方がいれば感想くださいwww

今回の登場人物紹介は江口です。



江口恭吾(えぐちきょうご) 湘南黄竜中3年 湘南堀岡ジム練習生 7月23日生まれ B型 169センチ 59キロ 右利き 好きな食べ物 数の子のわさび漬け 趣味 カラオケ


「腑狼」のメンバーの1人。

メンバーの中では立場は低めで、一番槍で行かされることが多い。

が、メンバーの事は居心地が良いと、本人は悪く言わない。

諒太曰く、4人の中では非力とのことで、カウンタースタイルを練習している。

両親は上っ面だけを気にする仮面夫婦で、それに反発する形で不良に手を染めた。

中学卒業後はボクシングに専念したいとのこと。

メンバーの中では1番のお人好しで、奥原にも2人きりの時は奢ったりしていることも。

(ちなみに近所で、奥原も江口の家庭環境は知っている。)

氷織のことも妹のように可愛がっている。

歌はプロ級。

 瑠希菜と紀利華はお互い喧嘩四つの体勢になって構えた。


瑠希菜のサウスポースタイル、紀利華は独特の右構えだった。


お互い前の手で牽制し合う格好になっていた。


(正直何してくるかが全く読めないな……力感も無いし……まあ探り一発入れてみるか……)


ダランと降ろしてる腕を見て、瑠希菜は鋭いジャブを放った。


が、次の瞬間だった。


瑠希菜の体重が一瞬下に行った。


そしてそのまま地面に説き伏せられた。


「は……!?」


瑠希菜が訳がわからないまま仰向けで呆然としていると、紀利華の右かかと落としが飛んできているのが見えた。


「チッ……」と小さく吐き捨て、瑠希菜は左ガードを上げてかかと落としを防いだ。


右側を見ると、右拳を左手で掴まれているのが見え、瑠希菜は素早く振り解いて脱出した。


「ヒュウッ♪ やるねえ、瑠希菜。」


紀利華が自分の連撃を躱した事を口笛を吹いて褒め称えた。


「……まさか私のジャブがあーいった形で止められるなんてね……何、今の。」


瑠希菜はまさかの事態に驚きを隠せず、紀利華に問い詰めた。


「合気道だよ、合気道。……小学校の時やってたんだよ。それが今、喧嘩で生きてる。そんだけだよ。」


(とはいえヒヤッとしたんだけど、今のジャブ……)


今の技は「隅落とし」。


合気道の基本の型だ。


「チッ……合気道か……めんどくさいのと当たったなあ……」


紀利華に合気道を明かされて攻めにくくなってしまった瑠希菜。


ジャブを一瞬見切っただけであっさり返されてしまったのだ、やりづらい事この上ない。


「じゃ……ちょっと()()()()()()。」


瑠希菜もガードを下げ、腰を低くして構えた。


まるでライオンが獲物に襲い掛かろうかという格好だった。


眼光も一層鋭くなる。


(やっぱり強いのはわかる……気を引き締めないとダメだ……!! 油断したら喰われる……!!)


紀利華は瑠希菜の目を見て、唾を飲み込む。


ギャラリーが息を飲む。


ひりつくような空気が2人を覆っていて、間に割って入れるような空気ではなかった。




 ジリッ、ジリッ……と、距離を詰める瑠希菜。


低い体勢で相手を見据える瑠希菜。


飛び込んでくるタイミングを伺う紀利華。


紀利華の額には冷や汗が浮かんでいた。


それだけ威圧感が凄いのだろう。


瑠希菜が先に仕掛けた。


下から右アッパーを放つ。


紀利華も顔を少し引き、間一髪クリーンヒットを逃れたが、顎先を掠めて皮膚が抉れた。


紀利華はこれを見て一歩距離を取った。


(危ない……一瞬でも遅れてたら倒れてた……寒気がした……!)


瑠希菜は尚もステップして距離を詰める。


瑠希菜はジャブを3発小さく鋭く放つ。


1回目のジャブより速度を上げているので、隅落としをする暇が無かった。


(ダメだ……! このままじゃ防戦一方になる……! 私も仕掛けないと……!)


瑠希菜の圧力に圧されたのか、紀利華は大振りの右アッパーを放った。


瑠希菜は右にヘッドスリップをしてこれを悠々自適に避けた。


すかさず瑠希菜が左ストレートを放つ。


頬を掠めて紀利華の右側を通過した。


紀利華は反撃で右のミドルキックを放つが、これをしゃがんで亀のようになって瑠希菜は避けた。


紀利華はこれを見て、股関節を上に動かし、瑠希菜の脳天目掛けてかかと落としを振り落とした。


瑠希菜はしゃがんだまま左に避け、かかと落としが空振りした隙を突き、元バレー部の跳躍を活かした「カエルパンチ」を左拳で、紀利華の顎目掛けて放ち、紀利華の顎が跳ね上がった。


後ろへよろめいたあと、紀利華は尻餅を突いた。


辛くも立ち上がるが、急所にヒットしたのか、足がふらついていた。


「まだまだ……!!!」


紀利華の目は死んでいなかった。


「そう来なくっちゃ……」


瑠希菜も薄ら笑いを浮かべている。


その後も紀利華がカウンターや隅落とし、投げを狙う構図になったが、()()()()()()()()以上、瑠希菜には行動が筒抜けだった。


フェイントを織り交ぜながら、コンパクトに右フックやジャブを叩き込み、左フックを側頭部(テンプル)に決めて紀利華をグラつかせた後、右ボディフックからの左ボディストレートを肝臓と横隔膜の間に決めて紀利華を悶絶させ、紀利華はコンクリートに蹲って嘔吐した。


瑠希菜の完勝で、この喧嘩は決着が付いたのだった。




 蹲って息を吸う紀利華を、瑠希菜は跪いて黙って見ていた。


ギャラリーが2人の元に集まる中、2人の間には紀利華の荒い呼吸以外に何も聞こえなかった。


「……大丈夫?」


抑揚のない声で瑠希菜が紀利華に問いかける。


紀利華は顔を上げた。


「なに……よ……!! アタシを薙ぎ倒したクセに……!! 人の心配する不良が何処にいるってのよ……!!」


瑠希菜はあいにく、不良の掟を知らない。


事実()()()()()山本達のリーダーになったというだけで、ヤンキーのルールなど何も知らないからだ。


慈悲を掛けるのも仕方ない事だった。


瑠希菜は山本達の方を振り向いた。


「……アンタ達、先帰ってていいよ。紀利華は私が送る。」


「お、おう……」


ここは出る幕が無いと判断した山本達は、バイクに乗って帰宅して行った。


瑠希菜は4人が視界から消えたあと、紀利華を肩を貸す形で担ぐ。


「ちょっと……!! 紀利華をどうする気よ!!」


紀利華の舎弟から怒号が飛ぶが、瑠希菜はアッサリした形で答えた。


「手当てする。」


そういって、スマホで近くのコンビニを検索し、瑠希菜は自転車を押しながら公園を後にした。


紀利華を担ぎながら。




 コンビニで保冷剤と水を買った後、駐車場で待機していた紀利華に手渡した。


「……なんでそんなに……優しくすんのよ……瑠希菜……」


「……別に? ()()()()()()()()()だから。」


紀利華は保冷剤を持ちながら俯いていた。


一方の瑠希菜は淡々としていた。


紀利華の顔は若干ではあるが腫れている。


沈黙が2人の間に流れる。


暫くして、紀利華が重い口を開いた。


「……今まで喧嘩で負け知らずだった……それは事実だよ……だけど……アンタにアタシは負けた……」


「……うん。」


「……合気道ではそれなりに結果……残してたんだけどさ、もっと強いのと会って……それで腐っちゃって、母さんにも反発しちゃってさ……そこから喧嘩に明け暮れてたんだ。でも勝ってたから誰にも負けない、って思ってたんだけど……」


紀利華の目から涙が溢れる。


自尊心を傷付けられた思いと、負けた悔しさと、その相手に情けをかけられた自分の惨めさという意味で。


「……アンタにコテンパンにされた……!! 悔しい……! 悔しいよぉ………!! ヒグッ……うう……」


嗚咽を漏らす紀利華を瑠希菜は背中を摩る。


「……正直さ、紀利華の合気道には驚かされたよ。今の話聞いてるとさ……アレ、努力して身に付けたものなんでしょ?? それは嘘じゃないのは分かったし、それを喧嘩に活かしていたのは分かった。私もボクシングやってるから分かるよ。……けど下手に殴ったら最悪……人、殺しちゃうから手抜いてたけどね、多少。」


「こんな時に同情しないでよ……!」


フォローする瑠希菜を、紀利華は突き放そうとしていた。


瑠希菜は溜息を軽く吐き、紀利華にこう言った。


「……それで? アンタは()()()()()()()()()()? 一回負けたくらいで?」


「……え? そ、それは……」


「ウチ来る?」


「いい……けど……」


「……じゃ、着いてきて。案内するから。」


そう言って、瑠希菜は自転車の鍵を解き、漕ぎ出した。


紀利華も後を追った。




 湘南堀岡ジム(瑠希菜の自宅)に到着した2人。


暗闇ではあったが、紀利華はその大きさに圧倒されていた。


「これが瑠希菜ん家?? デッカいね……」


紀利華は瑠希菜のスケールの大きさに圧倒されていた。


「……先月建ったばっかだからそんな大きくはないよ?」


「え!? 瑠希菜、先月来たばっかだったの!?」


「よく分かんないんだけどさ、父さんから『()()()()()()()()、ってさ。不良校の環境で、って。あのグループに入ったのは成り行きだから。」


紀利華は唖然としていた。


瑠希菜の強さのルーツはそこにある、と。


「……瑠希菜!」


「……うん、紀利華なに?」


「アタシもボクシングやらせて!! ……悔しい想いしたまんま……人生終わりたくない!! もっと……強くなりたい!!」


目が真剣だった。


元々紀利華を誘う予定だった瑠希菜は微笑を浮かべ、承諾した。


「アンタが強いのは分かったからさ……絶対もっと強くなるよ。ただその代わり……良い? 一個、条件。」


「いーよ、瑠希菜の頼み、断る理由無いし。」


「青鳳と戦う戦力で……白虎の皆を連れてきて欲しい。時期が来たらまた言うから。それまではジム、好きに使って良いよ。」


「なに? そんなこと?? ……ハハ、アタシも捨てたもんじゃないね! いいよ、乗るよ、その話!!」


「ありがと。……まあ今日遅いからさ、明日来れるんなら来なよ。」


「んじゃ……これからよろしく! 瑠希菜!!」


2人はガッチリと右手で握手を交わして、紀利華は帰宅していったのだった。




 翌日。


学校帰りでジムを訪れた「腑狼」メンバーと氷織。


そこで見た光景とは。


諒太が見守る中でシャドーボクシングをしている紀利華の姿があった。


まだぎこちなさは残っているものの、筋自体は良かった。


「……紀利華、来てたんだ。」


瑠希菜が呟くと、諒太が反応した。


「オウ、瑠希菜おかえり。……お前、とんでもねえの連れてきたな。センス、めちゃくちゃあるぞ。」


と、ここでタイマーが鳴る。


「よし! 休憩だ、紀利華!!」


「押忍!!」


紀利華の顔は笑っていた。


充実しているような顔だった。


「……私が認めた子だから……あと元々合気道やってた、っていうからカウンター上手いと思うよ。」


「ほー、そうかい。……とりあえずお前ら着替えて来い。で、その後ストレッチとシャドー!!」


諒太が指示を送ると、全員更衣室へと向かっていった。


「紀利華……どうだ? ボクシング。」


「楽しいっす!!」


紀利華は眩しい笑顔で諒太に返す。


諒太はそれを見て笑みを浮かべた。


「よし、あと5ラウンド! その後で足捌き教えてやるから着いて来い!」


「押忍!!!」


合気道をやっていた関係でスタミナも十分にある紀利華はその後も初練習を難なく熟していったのだった。


こうして紀利華がジム練習生に新たに加わり、また更にジムが活性化していったのだった。

仲間は今後も増えていきます。

抗争を通して、になりますけどwww


さて、次回は瑠希菜と氷織のマススパー回です。

登場人物紹介、次回は氷織になります。

また来週、お楽しみくださいませ。

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