第10ラウンド 番長を尾行せよ!
今回は結構なギャグ回かなって感じです。
登場人物紹介は海華です。
保坂海華 湘南黄竜中3年(陸上部長距離) 2月5日 O型RHマイナス 161センチ 47キロ 右利き 3サイズB82(Bカップ)W55H81 好きな食べ物 キュウリの浅漬け 趣味 潮干狩り
瑠希菜の前の席の女子で、明るい性格で誰とも仲良くなれるスキルを持つ。
また、真面目な性格でもあり、努力家でもある。
瑠希菜のことは初日で「るっち」と呼ぶほどフランクな性格。
実家はナス農家で、3人きょうだいの末っ子なので後継の権利はない。
なのに何故かキュウリが好きという、ちょっと変わった趣向もある。
そんなこんなで1日が過ぎる。
瑠希菜は部活に所属していないので、さっさと下校準備をしようとしていたところ、山本のグループの谷口に声をかけられた。
「番長、今日どっか遊びに行かねえ?」
ひょんなことから不良グループのリーダーとなったわけだ、お近づきの印、と言うべきなのだろうか。
だが、瑠希菜にはそんな興味は一切無かった。
それに市内大会まであと2ヶ月、県大会までは3ヶ月までしか期間がない。
不良グループの遊びにかまけている暇は無かった。
「……めんどくさいからいい。行かない。」
そういって、瑠希菜は足早に下校していった。
で、取り残された4人はというと。
「なあ、番長ってなんでそんなに急いでるか、気にならねえ……?」
戸田が耳打ちする。
「なんだよ、尾行すんのかよ、番長を……見つかったら殺されるかもしれねえぞ……?」
江口は昨日の山本がワンパンチでノックアウトされた残像を覚えているので戦々恐々としていた。
谷口は前リーダーの山本に決断を委ねた。
「なあ、広大。どうする? 番長を追うか?」
山本は少し考えた後、こう決断した。
「そうだな、気づかれないように追おう。俺も堀岡さんの強さを知りてえからな。」
山本の決断に全員が頷き、無論全員帰宅部なので颯爽と教室を後にしたのだった。
4人が瑠希菜に気づかれないように後を追うこと数十分。
一定距離を保って自転車を走らせる4人。
瑠希菜は河川敷を走っていた。
それも制服のまま。
しかもそのフォームは一向に乱れることがなかった。
「凄えな、番長……どんだけ走るんだよ……」
谷口がそのストイックさに感心していた。
「だな……親のバイクでブンブン言わせてんのが恥ずかしくなるぜ……」
戸田も同感だった。
「しょうがねえだろ、この人の下につくって決めたんだからよぉ。黙って追おうぜ。」
江口もそれまた同感だった。
「とはいえ……アイツも……訳あってここに来たんだろ、わざわざ。……俺たちの家庭環境と同じで、な。」
山本はこの4人における家庭環境を想いながらそう言った。
瑠希菜の背中はそうこうしてる間に遠くなる。
山本達4人は必死になって後をつけていったのだった。
「……ボクシングジム……?」
山本が唖然とした表情で家のような建物を見た。
風の噂では、元世界王者が指導者として本格的にスタートするために建てたとの噂があったのだが、まさか瑠希菜の自宅とは思っていなかったので、ただただ呆然とするしか無かった。
「広大、入ろうぜ? 入るだけならタダだろ?」
谷口が催促する。
「そ……そうだな、堀岡さんの練習、気になるしな……」
4人は恐る恐る、「湘南堀岡ジム」へと入っていったのだった。
中に入ると、奥行きがかなり広く、サンドバッグやその他練習器具、リングまでズラーーーーっと並べられていた。
呆気に取られる4人。
「すげー……ここがボクシングのジムかよ……」
一週間くらい前にオープンしたからか、まだ真新しい。
それが少年心をくすぐった。
と、ここで、長身の中年っぽい男性が声を掛けた。
諒太だった。
「おう、お客さんか?」
「え……は、ハイ! そうです!」
諒太に受け応える山本。
「ウチの娘になんか用がありそう、って顔だな?」
「え? ってことは……堀岡さんの親父さんですか!?」
ジイっと4人を見る諒太に対し、驚いた反応を見せる山本以下4人。
クール系の瑠希菜に対し、太陽のような朗らかさを持つ諒太とは似ても似つかなかったからだ。
「そうだけどよ……お前ら、何しに来たよ。」
「ああ……えっと、見学に……」
「そうかよ。じゃ、テキトーに座っとけや。」
「「「「あざっす!!!!」」」」
そう言われた4人が見た光景は、一心不乱にシャドーボクシングを高速で熟す瑠希菜の後ろ姿だった。
4人はこの時思った。
勝てる気がしない、と。
リビングに諒太に招かれた4人は、夕食を振る舞われていた。
そこで色々事情を聞いた諒太はというと。
「なーんでえ、そういうことか。瑠希菜に昨日シバかれて……強さを知りたかった、ってわけか。」
「そうなんすよー。マジであそこまでつえー人知らんかったんでね。もう今じゃあ番長っすよ、番長。」
去年までの瑠希菜の事情をよく知っている諒太は番長、という単語を聞き、爆笑していた。
「ハハハハハ、マジで!? アイツ、お前らに番長って呼ばれてんの!? いやー、おかしい話があるもんだなあ!」
この笑い声に唖然としていた4人。
何がおかしいのか、全くわからないでいた。
「いやー、わりいわりい……アイツ、去年まで不登校だったんだよ。いじめられててさ。でまあ……アイツをボクシングに誘ったらさ、これが面白えんだ。ジムに行った初日に左ストレートを爆音だぜ? 爆音!」
山本の肌に鳥肌が立つ。
そりゃあ……意識を飛ばされる訳だ、と。
と、ここで入浴を終えた瑠希菜がリビングに来た。
「……って、アンタたち……なんで来てんの、ウチに……迷惑なんだけど。」
「まあまあ、瑠希菜。そう言うなって。コイツらお前の強さ知りたくて来ただけだから。」
瑠希菜は呆れ顔で椅子に座った。
「番長、あのさ……イジメられてたって、マジ?」
「ホントのことだけど……それが何?」
「いや……奥原を助けたのがそれかー……って妙に納得しちまってさ……」
「まあ何でもいいんだけどさ。私もボクシングやってる、って言ってなかったのもあるし。……ただ大会近いからあんまり深くアンタたちと関わっても得はないかな、って思っちゃってさ。」
と、ここで山本が切り出した。
「あのさ、堀岡さん……俺らもボクシング、やらせてくれねえか……!?」
「は? 今朝もそうだったけど、広大さ……アンタ何でもかんでも急すぎ。そこまでして強くなりたいの?」
「まあでもよ……堀岡さん、アンタがボクシングやってて舎弟の俺らがやってなかったらカッコつかねえだろ。ボクシングをやってるってだけでも相手をビビらせられる。だからやらせてくれ。」
頭を下げる4人。
瑠希菜は訝しげな顔になった。
そして一息つく。
「別にいいけどさ。人増えて困ることなんてないし。でもそういうのは父さんに頼めば? 丁度今いるんだし、目の前に。」
これには諒太も同感だった。
「まあ瑠希菜の言う通りだ。急に気持ちが芽生えたんだろうけどよ、入会云々はまず会長の俺に頼め。その代わりちゃんと練習には来いよ。まあここら辺不良がお前ら含めて多いからよ、入会さえしてくれりゃあ、お前らの溜まり場にはしてやる。だから練習だけは真剣にやれ。俺から言えることはそれだけだ。」
やるからには本気で向かってこい、というメッセージではあるのだが、4人は基本バカなのであまり理解はしてなそうではあったが、真面目にやらなければしばき倒すというオーラが二人から伝わってきて、承諾せざるを得なかった。
「「「「よろしくお願いします!!!!」」」」
こうして湘南堀岡ジムのジム生が4人、加わることになるのだった。
知ってた。って言う人は多いと思いますが、元々こういう予定でしたwww
第二章ではもう十数人はジム生が増えるかな、って感じなんで、そんな感じでお願いします。
次回は大枦会長を紹介します。
お楽しみに。




