百日後に死ぬ人間
ルール:「そう、俺は不死身だ」を必ず本編に入れること。
「あなたはあと百日で死ぬ」
寝ているとき枕元で黒いローブを着た女がそう言った。
「なんだお前」
「私は死神。運命を伝えにきた」
「へえ、なら死神だっていう証拠みせてみろ」
ローブからのびてきた手が俺の首元に触れるだけで死にそうになった。
「わ、分かった……で、死神はその運命を伝えてどうしたい?」
「この運命は変わらない、と伝えにきた。それだけ」
すると死神は消え去った。
二日目。俺はコンビニで立ち読みしながら考えた。死ぬことについて。ニートな俺に恐怖心はない。
「百日後の死……あの漫画のワニみたいだ」
あのワニはヒヨコを救って事故死した。俺はどうだろう。ただカスのように死ぬだけだろう。
「危ない!」
店内に叫び声が聞こえる。と同時に大量の破片が足元に飛んできた。
車が突っ込んできたのだ。目の前にはボンネットが見えた。
危なかった、死ぬところだった……のだろうか。
百日後に死ぬと俺は死神に言われた。
その運命は変わらないとも言ってきた。
言い換えれば百日後まで死なないんじゃないのか?
十日目。死の恐怖を克服できたわけではないと悟った。マンションの手すりを乗り越えることはできなかった。
六十日目。近くで火事が起こった。悲痛そうな顔つきで「夫を助けて」とばあさんが声をあげていた。俺は死なないことを思い出した。
そう、俺は不死身だ。
「ちょっと通りますね」
消防隊員の横を通り抜け、家のなかへと入っていく。火は強い。だが俺は突き進む。すると老人がいた。夫か。
「かつぎますね」
外へ運ぶことだけを考えた。玄関が見える。
人影が見えたので、その人に老人を渡した。
それにしても火の勢いが強いせいか、皮膚がめちゃくちゃにアツかった。
いや、これ服が燃えてる!
意識が朦朧とする。これは死ぬ――。
百日目。
死神が現れた。
「無敵と不死身は違いますよ」
ベッドに寝ている俺はやけどの重傷だ。
「そこまでされると死の運命は早まるものです」
「マジで?」
「死神は命を奪うだけですので」
どこで俺は勘違いしたんだろ。まあいいが。
「で、命を奪うのか?」
死神は小さくうなずく。そして鎌をこちらに向ける。
怖くはない。
「運命を受け入れたの?」
「まあ百日もあれば……いや、ワニみたいになれたからだな」
「ワニ?」
ヒヨコを救ったワニ。憧れたわけじゃないがなれないとも思っていた。でも結果としてなれたのだ。
死ぬのは癪だが、そう思うと悪くない。
執筆日:21年12月24日




