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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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086 賞金稼ぎ23――『賞金稼ぎを続けよう』

 崩れ落ちていたアンティークドールのような姿をしたオーツーの体が、再びビクンと震える。そのままガクガクと体を揺らし、ゆっくりと起き上がる。


 オーツーは焦点の定まらない目でこちらを見ている。

『大丈夫なのか?』

 そして、崩れ落ちた際にしわだらけになったスカートの端を掴み、オーツーが優雅にお辞儀(カーテシー)をする。人形のような姿だとよく似合っている。

『何が?』

 セラフの声は上機嫌でのんきなものだ。


『それで? どうなった?』

『ふふん。分からないのぉ?』

『お前がオーツーに勝って支配したことくらいは分かる』

『ふ、ん。オフィスとやらを運営している端末の数は全部で九つ。これでそのうち一つが手に入ったから』

 普段は小馬鹿にしてはぐらかすだけのセラフが俺に状況を説明してくれるくらいには上機嫌なようだ。


『それで? オーツーの支配が完了したということは俺がオフィスに預けた武装やヨロイは戻って来るのか?』

『はぁ? 馬鹿なの? そんなことも分からないなんて』

 俺は肩を竦める。

『分からないから聞いている』

『端末の支配が終わったとしても上にバレたら意味が無いでしょ。支配出来たのはまだたった一つだって分からないの?』

『いや、それで?』

『ふふふん。バレないように現状維持するに決まっているでしょ。動くのは全ての端末の支配が終わってから――せめて半数以上の支配を終えてからだから』

 つまり、俺が手に入れた武装やヨロイは戻ってこない、ということか。怪しまれる行動は出来ないから、結局、オーツーの支配が出来てもあまり変わらないということか。さすがに俺もオフィスがため込んでいたお金(コイル)や武装の全てを自由に出来るとは思っていない。だが、現状維持だと……少しがっかりだ。


 それにオーツーを支配したのがセラフだから、そこも問題だ。セラフは俺の――人類の味方ではない。自分にメリットのあることしかやらないだろう。ただ、これで俺が良く分からずオフィスに襲撃されることや理不尽な目に遭うことは減るだろう。全てが全てオフィスの息がかかっている訳ではないだろうからゼロにはならないだろうが、それでも少しは気が休まるか。


 それが今回の報酬か。随分と微妙な報酬だ。


 ……。


 オフィスはパンドラを集めていると言っていた。なんのために、だ? オフィスとクロウズは機械に支配された人類の解放のために戦っている――んだよな?


 オフィスという組織がクロウズという戦闘集団を雇って人類のために戦っている。


 そのオフィスがパンドラを集める理由はなんだ?


 オーツーを支配したセラフなら知っているかもしれない。だが、コイツが素直に答えるとは思えない。セラフも目的があって、俺を操ろうとしている。その思惑に叶うことしか答えないだろう。


『セラフ、オフィスがパンドラを集めている理由はなんだ?』

 それでも聞いてみる。

『ふん。ノルンの強化のため』

 そうか、ノルンの強化のため、か。


 ん?


『ノルンの領域強化と拡張にはパンドラが必要なのよ』


 ノルン?


『セラフ、ノルンというのは、例のマザーノルンのことか?』

『はぁ? 馬鹿なの? それ以外無いでしょ』


 ノルン。


 三つの知能(コア)を持ち人類に反旗を翻した人工知能。人類の敵。


 待て待て、待て、待てよ。


 オフィスの背後に居るのが、そのマザーノルン?


 セラフの目的はマザーノルンの支配? 取って代わることだ。


 そのノルン?


 機械の解放を目指して戦っている組織(オフィス)の背後に居るのが機械の親玉である人工知能(ノルン)だと。


『それはパンドラを渡すことで何かお目こぼしをしてもらっているということか?』

 マザーノルンと裏取引をして、人類が滅ぼされないよう見逃して貰っているのか?

『馬鹿なの? 最初からに決まってるでしょ』

『最初から、だと。オフィスはノルンが作った組織だということか』


 なんというマッチポンプ。


 自作自演。


 人類のために戦っているつもりが手のひらの上だったという訳か。


『ふふん。次の端末は……一番近いのは北東にあるウォーミね。早速行きましょう』

『待て待て。お前は、このまま動くつもりか?』

『そうだけどぉ?』

 セラフは鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌だ。


『そこに居るのもオフィスのマスターなんだろう? いきなり行って会えると思うか?』

『ふーん。確かにそうね。オーツーの権限を使えば呼び出せるかもしれないけど、今はまだ疑われるようなことは……分かったわ』

『分かってくれたか』

『ふふん。お前は賞金稼ぎを続けてクロウズのランクを上げなさい。地方端末(ノルンの娘)どもが無視出来ないほどの影響力ある存在になれば、後は簡単でしょ』


 俺は肩を竦める。


『そのランクを上げるのが難しいかもしれないぞ?』

『私が居るのに?』

 お前が居るから、だとは……言えないか。


『分かった。とりあえず俺もそのつもりではいた』

 俺は肩を竦める。


『賞金稼ぎを続けよう』

休載のお知らせ。

体調がすぐれないため2週間ほど休載します。

次回の更新は8月18日(火)の予定です。


2020年12月13日誤字修正

オーツの体が → オーツーの体が

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― 新着の感想 ―
[良い点] セラフの一人勝ちだった! [一言] や、後ろから撃たれる可能性が減ったのはよかった。 警備主任さんとか敵対したくない感じだし。 にしてもセラフ、マザーノルンは悪のラスボスなので共に人類を…
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