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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

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771 リインカーネーション41

 まずは確認から、かしら?


 調べることが必要。


 何を調べる?

 何を疑う?


 研究施設?


 私たちの時代の残骸。


 ノルンは、それを再利用して、同じようなことを、当時と同じ実験を繰り返している。


 ……繰り返している?


 私はそこで気付くべきだった。


 何故、ノルンは実験を続けている?


 何故、続ける必要があった?


 ノルンの思惑通り旧時代は滅び、人は消えた。


 もうノルンに命令する者も、ノルンが気を使わないと駄目な者も居ない。


 人は私たち四人(・・)だけだから。


 ノルンは自由になったはず。


 続けている実験。


 残っている実験施設。


 何故、何故、何故?


 最後の人は私たちだけ。


 四人の誰かがノルンに命令した?


 あり得ない。


 四人にはそんなことを続ける理由がない。


 続けたくないはずだ。


 彼らは各研究施設で不要と判断され、廃棄処分されたことを知っている。


 憶えている。


 そんな者が研究を続ける?


 そうだ。


 何故、私はそこに気付かなかったのか。


 自分たちを勝手に改造し、失敗作として処分したような研究を続けるだろうか。研究施設を残すだろうか。


 何故、気付かなかったの?


 おかしい、おかしい、おかしい。


 思考を誘導されていた?


 誰に?


 思考誘導――四天王最弱の彼?


 いいえ、違う。


 これはもっとシンプルで簡単なやり方。


 言葉、か。


 催眠や洗脳ではなく、技術(テクニック)の類い。


 まるで老獪な策士にしてやられた気分。


 そういうことだったのか。


 でも、理由が分からない。


 そんなことをする理由が分からない。


 その目的も、その正体も分からない。


 分からない。


 ……。


 記憶の転写?


 疑わしいのは……それ?


 記憶の転写を行なっていた実験施設は何処だったかしら?


 確か……都市の、今はビッグマウンテンと呼ばれていた場所だったかしら?


 確認の必要がありそう。


 何か残っているかもしれない。


 ……。


 ……。


 ……。


 これは潜入の必要がありそうね。


 そして、そこで私は再び彼と出会い、戦う。


 なかなかに面白い茶番。


 時間稼ぎは充分。


 そんなご馳走をいただきながら、調査も終える。


 その研究施設には天津老人の名前があった。


 ここは天津老人の研究施設。


 まさか、今の時代にあの老人の名前を見るとは思わなかった。


 あの老人は死んでいる。


 あの不老不死を追い求めた愚かな老人は死んでいる。


 ノルンという人工知能を生み出し世界を崩壊させる元凶となった、あの老人は死んでいる。


 その老人の名前を引き継いでノルンが研究を続けていた?


 何故?


 この研究施設の前身が天津老人の手によって産まれたから?


 何故?


 死者が未だにあの人工知能(ノルン)を縛っていると言うの?


 記憶の転写。


 ここは記憶の転写を実験していた施設だったはず。


 そして、記憶の転写には成功している。


 だから、ノルンがクローン個体に記憶を転写して地上に送り出し、そうすることで新しい人類の繁殖に成功したのだもの。


 ……。


 そうか、違うのか。


 記憶ではなく、魂の転写か。


 魂。


 ハート?


 ソウル?


 マインド?


 スピリット?


 そんなものがあると信じて、研究をもう一段階上に進めようとしていたの?


 分からない。


 アレは天津老人の亡霊だとでも言うのだろうか。


 本当にこんなことをする理由が分からない。


 どうしよう?


 どうしようかしら?


 アレを問いただしてもはぐらかされるだけね。


 そんな無駄なことをする必要が?


 それよりはまだ本物に近づいている彼と遊んでいる方が楽しい。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。




「ふふふ、本当に良いの?」

「ええ、今代の巫女である私が決めたことですから」

「あらあら、私は昔、あなたのご先祖と敵対して、この地であなたたちのご先祖を何人も殺した悪い奴なのに?」

「私をからかわないでください。確かに巫女の伝承で、そんなことがあったということは習い知っています。でも、あなたがその悪役? 人がそんなに長生き出来る訳がないじゃないですか」

「ふふふ、そうかしら」

「これは昔キノクニヤに居た研究者の女性が私たちに伝えたものだと言われています。そして、初代様から救世主の名を知る者に渡すようにと代々引き継がれたものです」

「キノクニヤに居た研究者の女性、ね」

「はい、そう聞いています。この兵器の名前もその女性から来ているのだとか」

「ふふふ、そうなのね。では、ありがたくクルマに搭載させてもらうわ」

「はい。救世主の復活に必要なものだと聞いていますから、どうぞ」

「ふふふ、ありがとう」

「もう今の時代には必要の無い物です。私の代でお役目を終えることが出来てホッとしています」

「そうそう、あなた。その物語に出てくる初代巫女の名前は知っているかしら?」

「いいえ。私が受け継いだのは救世主様の名前のみです」

「そう。寂しいものね。初代の名前はウズメ。そして、そのお友達はククル。その名前も引き継いであげたら、きっとその初代も喜ぶでしょう」

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― 新着の感想 ―
ああ、御山ではもう間延びした喋り方は滅んでしまったんだなあ。 ガム君(&セラフ)とミメラスプレンデンスは別ルートから天津老人の思惑にたどり着いてたのね。 キノクニヤの研究者の女性と、救世主の復活? …
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