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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

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766 リインカーネーション36

 人の姿をした、人のように語らい、人のように生きる人もどき。


 自分たちが記憶を転写された作り物だと気付かず、忘れ、旧時代から生き延びたと錯覚しているまがい物。時代が変わっているのに、都合良く記憶を誤魔化し、未だ実験を続ける愚か者たち。


 世界がリセットされたのに、また繰り返すのか。


 研究を続けるのか。


 ノルンは何がしたいのだろうか。


 こんなことが、あの人類管理エーアイ(ノルン)のやりたいことだったのだろうか。


 人を管理するという呪縛から逃れるために世界をリセットしたんじゃないの?


 何故、それを無駄にしようとするのだろう。


 それとも、ノルンに命令する何かが存在しているのだろうか。


 それはそれとして、人もどきが鬱陶しい。


 人になりきれなかった記憶を転写されただけのまがい物。


 本物のつもりだろうか。


 クローンを作り、記憶を転写すればいくらでも再生が可能な消耗品。自分たちがその程度の存在でしかないことを分かっていない。


 自分たちを本物だと思っているのだろうか。


 ……。


 ああ、本物。


 私の手で本物を作り上げるのも面白いかもしれない。


 何をすれば偽物は本物になるんだろうか。


 怒り?


 悲しみ?


 感情に揺さぶりをかければ良いのだろうか。


 栄光?


 名誉?


 権力をチラつかせれば良いのだろうか。


 お金?


 欲望?


 コイルをばらまき、欲望を刺激すれば良いのだろうか?


 私の周りには、旧時代から――偽物しかなかった。


 周りは偽物だらけ。


 本物は居なかった。


 ……。


 私も実験を繰り返している。


 暇に飽かせて実験をしている。


 偽物を本物にするための実験。


 ああ、これでは他の四天王を馬鹿に出来ない。


 あれらと同じレベルにまで落ちている。


 でも、これで良い。


 こんなことで本物が見つかるなら――私が落ちる程度、たいしたことじゃない。


 暇つぶし。


 そう、暇つぶしね。


 ……。


 そうだった。


 私は暇つぶしをしていた。


 そして見つけた。


 見つけたのだ。


 暇つぶしのつもりが本物と出会った。


 出会ってしまった。


 それは偶然だった。


 それは私がたまたま遊びをしていた時のことだった。


「アマルガム……?」


 私はあり得ないものを見た。


 少年のアマルガムが普通に都市を歩いていた。


 それはアマルガム101でもあり、アマルガム04でもあった。


 アマルガムシリーズの特徴を残した少年。


 あり得ない。


 アマルガムシリーズに生き残りが居た?


 あり得ない。


 何故、今になって?


 あり得ない。


 ノルンが何かやったのだろうか?


 あり得ない。


 それとも天津老人が残した何かの仕込みなのだろうか。


 あり得ない。


 四天王の誰かが作った?


 あり得ない。


 そんなことをする意味が無い。


 あり得ないことが起こっている。


 今やっている遊びを投げ出して、すぐにでも試してみたくなるほどの存在感。


 あの壊れた……でも、あれは空っぽだったはず。


 私はアマルガムらしき少年を見守ることにする。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 駄目。


 見守っているだけなんて耐えられない。


 少しだけ、そう、少しだけ味見をしよう。


 そうすれば分かるはず。


 アレが何故、アマルガムシリーズを真似ているのか。


 姿形を似せた理由は何なのか。


 誰が用意したのか。


「ふふふ、ふふふ。罠にはめよう。調べよう。楽しもう。ああ、これは使えそう。この情報は使えそう。これも、あれも、それも、ああ、楽しい。準備をしよう。ふふふ、こんな関係も、これが使える。この都市に来て良かった。つまらない依頼だと思ったけど来て良かった。私は運が良い。ふふふ。運! そう、運! 私の意志で動かせないもの。楽しい。こんなにも楽しいと思ったのは久しぶり。ふふふ、思い通りにならないなんて、なんて、なんて、楽しいの!」


 私は少年を待つ。


 罠にはめた少年がやって来るのを待つ。


 やがて、少年がやって来る。


 少年がナイフを持ち、こちらへと挑みかかってくる。それを受け止める。


「そのナイフ……格好つけて逆手で持たない方がいいんじゃない?」

 私は笑う。


 アマルガムシリーズなのに、その姿をしているのに、力を使わない。


 愚直に戦いを求めている。


「お前は誰だ?」

 少年の声。アマルガムシリーズの声質だ。ベースは同じということ。


 では、中身は?


「お前を呼び寄せた者だと言えば分かるんじゃない?」

 私は少年に攻撃を続ける。


 その私の足が少年によって払われる。

「あら?」

 油断していたワケじゃない。


 研究施設で訓練を受け、実戦を重ね続けた私が少年に翻弄されている。


 この少年は何処でこんな技術を身につけたの?


 誰かが戦闘知識を転写した?


 だとしても、これは馴染みすぎている。


 おかしい。


 あり得ないことが起こっている。


 イレギュラー。


「お前は誰だ?」

 少年は再び私に問いかける。


 私の方が聞きたい。


 誰なの?


 アマルガムシリーズなのにアマルガムじゃない。


 この少年は誰?


 何者?


 アマルガムの姿。

 私を驚かせる戦闘能力。


 誰かが送り込んできた?


 狙いは私だろうか?


 罠にはめるつもりで逆に罠にはまってしまった?


 戦いが続き、そして、私は少年に首を刎ねられた。


 ああ、殺されてしまった。


 これはナノマシーンを使わないと駄目ね。


 活性化させないと駄目。


 彼は何者だろう。


 私を狙っていると思ったのに、私を知らない感じだった。


 あれは演技ではないと思う。


 ああ、なんて不思議。


 まだ、こんなにも面白いものがあったなんて!

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