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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

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763 リインカーネーション33

 久しぶりに湖島の研究施設に戻ると――そこはおかしなことになっていた。


 ここの端末エーアイはノルンから隔離され、独立したものになっていた。それを良いことに私は色々な実験を繰り返していた。それが悪かったのだろうか。


「それが悪かったのかな?」


 私はこちらへと飛んできた木の枝(・・・)を斧で切断する。


「なぁに、これ?」


 無数の木の根が蠢いている。


 ここの端末エーアイが育てたのだろうか。


 侵入者対策?


「本当に、なぁに、これ?」


 木の根が鞭のようにしなりこちらへ襲いかかってくる。


 私は一つため息を吐き、その木の根を斧で切断していく。切っても切ってもキリがない。私は手斧を投げ捨て走る。


 木の根の上を走り、迫る木の根を躱し、進む。


 そのまま研究施設の中へと滑り込む。


 木は研究施設の中までは追いかけてこない。


「徹底した調整と管理? ふーん。あの植物たちがガーディアンってとこ? それとも……」


 私は研究施設の中を見る。


 そこでは機械が動いていた。


 小さな人型ロボットが何処からか資源を運び、集め、施設の補修を行なっている。湖の底から採掘でもしているのかな?

 あんな植物が守っていて、ここまで襲撃する者も、侵入する者も居ないだろうに、警備用の武装した戦車型の機械も動いている。

 化石のような旧時代の警備ロボットまで見える。


 機械が動いている。


「ここの管理エーアイが? 違う気がするなぁ。管理しているけど、管理していない? ふふん、面白いことになっている。人で言えば多重人格が近い? ここを維持しないと機能停止してしまうから? でも無意識? エーアイに意識なんて、ふふ、ホント、面白い」


 私は自分の周囲にナノマシーンを散布し、姿を隠す。これで機械が私を見つけることはない。外の、ただ動くものに反応して襲いかかっていた植物を誤魔化すことは出来なかったが、機械は違う。感知しているセンサー類を誤魔化せば、どうすることも出来ない。


「ふふん、私は機械には強いの」

 私は笑う。


 その笑い声に反応し、機械が集まる。だが、機械は私を見つけることが出来ない。


 警備ロボットが音のした辺りを馬鹿みたいにくるくると廻っている。


「ふふん、ふふん、ふふーん」

 私はわざとらしく鼻歌を歌いながら施設の中を進む。


 ここで何かが起きている。


 正直、ここには何の価値も無かった。


「ええ、そうでしょう?」


 アマルガム101が私に見せたかった場所だった。

 各地の研究施設の失敗作たちが集められたリサイクル施設でしかなかった。

 最後の人類が保管されていた場所でしかなかった。

 私がお金代わりの乾電池を保管していた場所でしかなかった。


「何の価値も無い! ふふん、価値は無い!」

 私は両手を広げ踊るようにくるくると廻り舞う。


「あー、あいつの癖が移ったのかしら。楽しくなったからって踊るなんて、ふふ、ふふふ」

 ここの管理エーアイは異常な発展を、進化をしている。


 外の都市を管理しているエーアイたちもマザーノルンの影響で、まるで人格を得たかのように進化を続けている。私の予想よりも早く、進み続けている。だが、それは早いだけで、どれも考えられる範囲の進化でしかない。


 進化!


 進化!


 機械が進化!


 生物なの?


 ふふ、ふふふ。


 おかしなことはない。


 だから、おかしい。


 面白い。


 本当に面白い。


 ここはおかしい。


「隔離され、ノルンの影響を受けなかったのが良かった? 面白い。本物が生まれようとしているのかしら。ふふふ、本物。それは偽物じゃない。あー、なんて楽しみ」


 私は一通り研究施設を巡り、確認する。


 その時はそれで終わった。


 それだけだった。




 そして、それからどれだけ経っただろうか。


 それは一瞬。


 私が監視していたノルンのネットワークにアクセスがあった。


「人? 違う。人もどきは気付いていない。管理されたまま。では、何が接続してきたの?」

 巧妙に偽装されたアクセス。


 間抜けなマザーノルンは気付いていないだろう。


 外部からの、この隔離された地域外からのアクセス?


 今更?


 そんなことはあり得ない。


 だって……。


 ……。


 あ。


 そこで私は思い出す。


 可能性を思い出す。


「ふふ、そういうこと」


 私は急ぎ、向かう。


 そこには戦いの跡が残っていた。


「焦げ付いた残骸? あの時の植物? これをやったのはここの管理エーアイ?」

 ここで育っていた植物は管理されていた。


 なのに、なぜ?


 自分で処分した?


 この植物はこの島に渡ってきたお馬鹿さんたちを殺す役目があったはず。そうでしょう?


「本当に面白い。ふふ、ふふふ」


 研究施設の中に入る。


 誰かがここに侵入した形跡がある。


「あらあら、どういうこと?」

 だが、私が保管していたコイルには手がつけられていない。


 コイルの価値を知らない誰かがここにやって来た?


 静かな研究施設を歩く。


 そして、私は研究施設の奥でそれを見つける。


 それは壊された棺。


 私が何も入っていないとそのままにしていた棺。


 それが壊されている。


「しかも、これは中から壊されている感じだよね。ふふ、くくく、面白い。本当に面白い。こんな面白いことが起こるなんて!」


 何が生まれたの?


 何も無いところから何かが生まれたの?


 散布されたナノマシーン。

 人を殺すアレ。


 色々なものが混ざって何かが生まれた。


 ここで何かが生まれた。


 もしかすると本当の新人類が生まれたのかもしれない。


「まさか、本物が生まれたの?」

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