表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

709/727

759 リインカーネーション’29

 冷凍保存された()が何人残っているか数える。


「えーっと、残っている冷凍装置は、と」


 一、二、三、四、五、六、七、八。


 八つの冷凍装置が残っている。


「八の人が冷凍された装置かぁ。まるで棺だね」


 リサイクルすらされなかった失敗作中の失敗作とされた人は八人。八つの棺が残っていた。


 ここに残っているのは改造されたり、調整されたりしているが、普通に人だ。


「うん、そうだよねー。元々さぁ、あの天津とかって名前の老人の器にしようとして、色々なことをしてさー、改良していた訳だから、人である部分は変えないよね。変わってないよね」


 だから、ここに残っているのは人なのだ。


 問題は――そう、問題があるよね。


 このまま解凍したらどうなるでしょうか?


「ふふ、アレに食われてしまうかもしれないよね」


 アレがどうなっているか正直、分からない。


 アマルガム101がアレを散布してから長い年月が経っている。


 アレはすでにこの地域の至る所に浸透している。アレが存在しない場所なんてもう存在しないだろう。


「だけど、それはつまり、その使命を果たしたってことだよね」


 アレが活動を停止している可能性。


「使命を終え、食べるものがなくなったんだから、もう生き残っていない可能性もあるよね」


 次はアレが変異している可能性。


「使命を果たし、目的がなくなったことで何か別のものに変異している可能性もあるよね。もしかすると人を食べない、人に無害なものになってるかもしれないよね」


 だが、それはあくまで可能性だ。


 どうなっているか分からない。


 残っている棺は八個。


 残っているのは人だ。


 貴重な人だ。


「うーん、どうしようかな? まずは一つ解凍してみようかー。ふふん、貴重だし、数も限られているけど、最後の一個じゃあないものね。何個かは試しても良いよね。大丈夫だよね」


 まずは一つ解凍してみる。


 決めた。


 今すぐ解凍することは決定だ。


 問題はどれを解凍するかだ。


 私は八つの棺を調べる。


 ……。


 棺にはご丁寧にも名前が書かれていた。


 名前?


 この中で眠っている個人の名前ではない。


 書かれていたのは――


「あー、なるほどねー。ふふん、ここを除く八つの研究施設かぁ。各施設の失敗作を一つだけ保存していたってことね。コードネーム? まぁ、そうだよね。個人名なんて与えられないよね」


 ここに残した失敗作と残さなかった失敗作。その違いは分からない。単純にこの装置に限りがあったから、なのかもしれない。各施設一つにしたのは特に意味なんてなかったのかもしれない。


「うーん。理由はいろいろ考えられるけど、答えはもう分からないね。ふふ、ここの所長さんはもう骨になったものね」


 なんにせよ、この施設が未だ稼働していたこと、そして人が残っていたこと。これが重要だ。


 人。


「で、まずはどれを解凍するかだけど、うーん。これかな? これだよね」


 私はオリカルクム(・・・・・・)と書かれた棺の前に立つ。


 中で眠っているのは私の友人たちの一人。私の育った研究施設の失敗作。失敗作だとされて消えたトモダチ。


「ああ、こんなところに居たんだね」


 改良した治療用のナノマシーンを使った実験が行なわれていた施設。その失敗作。


 これにしよう。


 同型なら私が居る。


「解凍に失敗しても、まぁ、うん」


 それに解凍に失敗してもナノマシーンを回収することが出来る。無駄にならない。


 さあ、さっそく解凍してみよう。


「解凍するためのスイッチはどこかな?」


 私は棺を確認する。


「これをこうやって、こうだー」


 棺の解凍が始まる。


 しばらく待つと、ゆっくりと棺が開き始めた。隙間から白い冷気が漏れ出す。


「ぷしゅーって感じで開いたね。さあ、どうだ?」


 中で眠っていた少女(トモダチ)がゆらりと動き、そのままこちらへと倒れかかってくる。私はその少女(トモダチ)を受け止める。


 ……。


 少女(トモダチ)は動かない。


 少女(トモダチ)の体は冷たい。


 冷たいままだ。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


「死んでる、これー!」


 せっかく解凍した少女(トモダチ)だったけど、すでに死んでいた。


 ……。


 少女(トモダチ)の体が食われる様子はない。そのままだ。


 アレは死滅したか、人に無害なものに変異したのは間違い無いようだ。


「やったね」


 少女(トモダチ)が死んでいた理由は保存状態が悪かったからなのか、それとも元々死んでいて、その死体を凍らせていただけだったのかは分からない。


「解凍方法が悪かったってことはないよね? それとも日数が経ちすぎたから? うーん。そもそも生きた人を冷凍保存するなんて出来なかったのかな?」


 人が食われなかったのは良かった。


 だけど……。


 私は並ぶ棺を見る。


 残り七つ。


 全部死体の可能性もある。


 うーん。


 さあ、どうしよう。


「死体だけど、生身の死体だよね。人は骨だけになっちゃったから、死んでいても、生身は貴重だよね。うーん、どうしようかな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ