758 リインカーネーション’28
私は島に向かう。
アマルガム101がメモを残し、私に見せた島。
ここか。
ここか?
ここだよね。
ここだよ。
……。
島に渡る。
機械は……動いているようだ。
「うーん。ここを管理しているエーアイは一応、稼働しているみたい。でも、なんで襲いかかってこないんだろう」
ここの機械は襲いかかってこない。
私を機械の仲間だと思っているのかな?
「それか、ここの管理エーアイが故障しているか、かな? その可能性の方が高そうだよねー」
無人の島を歩き、研究施設に入る。
研究施設は動いている。だが、
……。
「うーん。やっぱり管理エーアイの故障かな? それとも、うーん?」
以前、こちらに挨拶をしてくれたアテンダントAIは現れない。研究施設を管理しているエーアイ自体が動いてないのか、施設案内用のアテンダントAIを立体投影する装置が壊れてしまっているのかもしれない。
何の反応も無い。
声も聞こえない。
アマルガム101を殺すために落とされた爆弾――核の爆発。爆発によって多くの機械、電子機器が影響を受けていた。この島は核の爆心地ではないが、そこそこ近い場所にある。もしかするとここにも何かしらの影響があったのかもしれない。
「きっとそうだよねー」
無人の研究施設を歩く。
施設自体は稼働している。
これは期待しても良いのかもしれない。
場所は分かっている。
「一度来ていて良かった。良かったよー」
白衣に包まれた白骨が転がっている。
「アレに食われちゃったんだろうね。ご愁傷さま」
キラキラと振りまかれたアレがここにも浸透していた証だ。
着ていた服――白衣が食われていないのは化学繊維で作られた服だからだろうか。きっとそうだ。
転がっている白骨を横目に、保管庫を目指す。
保管庫自体には行ったことが無い。
「所長さんに案内されなかったからねー」
どうなっているのか不明だが、施設自体が死んでいる訳じゃあないから、大丈夫だろう。
「うん、きっと大丈夫だよねー。ふふ、楽しみだなー」
施設を歩く。
エアーシャワーが吹き出す無駄に長い通路を抜け、クリーンルームだった場所に入る。
大きな試験管が並んでいる。
試験管の中には……、
「はぁ」
私は小さくため息を吐く。
アマルガム04が入っていた試験管の中には骨だけが転がっていた。中に入っていた液体は消えている。アレに食われたのか、機械の故障で維持することが出来なかったのか。
とにかくアマルガム04は死んでいた。
「仕方ないかー。ふふ、でも」
これは予想通り。
試験管に入っているくらいでは、液体に浸かっているくらいでは、アレは防げないだろう。
食われてしまうだろう。
……。
「あ、そうだ」
私はアマルガム04が入っていた試験管を殴り、壊す。
うん、予想通り。
「あった」
その中には人の目には見えない小さな機械が残っていた。アマルガム04の体にもナノマシーンは使われていた。
「それは食われずに残ってるんじゃないかな、と思ったけど予想通り。命令系統は違うけど、多分、ううん、間違い無く修正は出来る。私なら大丈夫。ここで補充しておこう」
私は中に残っていたナノマシーンを取り込んでおく。これでノルンに会いにいった時、減ってしまっていた分を補充出来そうだ。
さて、と。
私は大きな試験管が並ぶ通りを抜け、奥に進む。
ここかな?
ここかなぁ?
こっちかな?
「うーん。地下の方は管理エーアイが置かれているだけだろうから、こっちの方だよね」
探す。
どこかなー?
そして、見つける。
「あった。あったよ!」
あった。
予想通り。
私が予想していた通り。
残っていた。
ここは各サテライト――各地の研究施設で廃棄された失敗作が集まっている。
ここはリサイクル施設だと言われていた。
その失敗作たち。それがどうなっているか?
ここでもリサイクル出来なかった失敗作はどうなるか?
この研究施設を管理していた所長は言っていた。
「ああ、どうしようもなくなったのは奥で冷凍保存してますね。ふひ、ゴミの処理にも困りますからねー。まぁ、失敗作と言っても天津様の記憶や生体情報を埋め込んだ個体もありますし、処分しづぅらいでしょ? 天津様のことを知るためにも、ふひひひひひ。どうですか、このリサイクル施設を見て。この程度のことなのに隔離して、本当に、せめて情報端末くらいは許可して欲しいですよ。こんなつまらないことをしているんですから」
だったかな?
憶えている。
そう、冷凍保存だ。
この研究施設が生きているなら可能性はあると思っていた。
「ああ、良かった。ふふふ、良かった。残っていた。そうだよ、そうだよね。ふふん、これで大丈夫だよー」
アレは低温下では動けない。
「機械でも生き物でも温度は敵だよねー。ふふ、熱いのも冷たいのも駄目だよねー」




