742 リインカーネーション’12
今日の授業は反抗勢力の制圧だ。
友人と一緒に装備の点検をする。
「私、銃って苦手なんだよねー」
「うー、私も。取ったって感触がないのがねー、苦手ー」
どれだけ活性化しても強くなった気になれないから、銃は本当に苦手だった。
「ふん。これだから素人は困る。一流は筆を選ばないって聞いたことがないのか」
変身を行ない力任せに戦っていたアマルガム04も同じ意見だと思っていたら意外にも銃が好きなようだった。楽しそうに整備をしている。
「今はー、筆じゃなくて銃の話をしてるの、馬鹿じゃないの」
友人がすぐにそんなアマルガム04に突っ込みを入れている。
「なんだ、と。こちらも銃の話をしている。誰でも一定水準まで殺傷能力を高めることが出来る銃は優れた武器だろう?」
「はいはい。それは力のない奴の話だよねー。銃でそれ相応の威力を出そうと思うと無駄に大きくなるじゃん。無駄、無駄、無駄ァ!」
そう言って友人は巨大なガトリングガンを肩に担ぐ。
「ふん。それならエネルギー系統の銃を使えば良いだろう。アレなら小型でもそれなりの威力だ」
「エネルギー? あー、あの光って、じゅんばんと飛んでいくヤツ? あれ、防がれるじゃん。使い勝手わるわるー」
「ふん。武器を選んでいるようでは二流だな。一流は武器を選ばない。そして、超一流は戦う前に全て終わらせる。つまり準備が大切だということだ」
アマルガム04は流れに乗った会話が苦手なのか、それとも自分が言いたいことだけを言いたいのか、そんなことを言い出した。
「えーっと、なんだか良く分からないよー」
独自の理論があるらしいアマルガム04に、私はそう言うことしか出来なかった。
装備の点検を終えた私はクラスメイトたちと一緒に荷運びに乗り込む。カーゴは目的地を目指してすぐに動き出す。
壁際にある椅子に腰掛けると腕の端末がすぐに輝いた。目的地――現地の地図、攻撃対象など今回の授業の内容が表示されている。
「今回はー、えーっと、うー、こいつらかー」
表示された敵に思わずため息が出る。
「うん。例の狂信者たちだってー。狂ってるから話も噛み合わないしー、私、ちょー苦手。この間なんて私に助けてあげるから、なんて言ってきたんだよー。なんで上からなんだよ、こいつらはさー」
「あー、それ私も言われた。こんな小さい子を洗脳して利用するなんて、とかいつも言っているけど、洗脳されて私たちに反抗するよう思考誘導されてるのは自分たちなのにねー、ホント、苦手だよー」
友人たちの言葉に私は二度目のため息を吐く。
「戦闘訓練だと思うしかないよねー。弱すぎて訓練にもならないけどー」
「そんな奴らが相手なのか?」
アマルガム04が私たちに聞いてくる。
「そっちでは、こういうの無かったの?」
「無かった。初めてだ。まぁ、初めてでも超一流だから、困ることはないし上手くやるだろう。だから、心配する必要は無い。大船に乗ったつもりで居るが良い」
「はー、これは船じゃなくてカーゴだけど? カーゴも乗ったことがないのに、本当に大丈夫かよー」
「何を言っている。カーゴくらい乗ったことはある。ここに転入する時に乗った。やれやれ、超一流を疑うとは信じられないな」
アマルガム04は肩を竦め、やれやれと頭を振っている。
「はぁ? そんなの乗った内に入らないしー。雑魚、雑魚ー、ざぁこのアマルガム04ー」
「なんだ、と。良いだろう。どちらがどれだけ多く敵を倒すか、それでどちらが上か決めようじゃあないか。これで分かるだろう。本当の雑魚はどちらかがな!」
「はぁ? なんで突然、勝負とか言い出してるの? 馬鹿なの?」
「ふん。怖いのか。良いだろう。超一流の前では誰もが怯え逃げ出す。まぁ、鼠が猫を噛むという話もある。そんな言葉にも油断はしないがな」
「ホント、意味分かんない。もー、こいつなんなのー!」
友人とアマルガム04が楽しく雑談をしている。いつの間にか仲良しだ。クラスメイトなんだから、仲良くするのが一番良い。仲が良いのは良いことだ。
目的地に到着し、カーゴから飛び降りる。反抗勢力は未だ気付いてないようだ。大あくびをしている見張りらしき男に銃弾を撃ち込み、すぐに連中が集まっている建物へと突撃する。
「ん? なんだ、なんだ? く、入り込まれたか。見張りは何をしていた! 機械に支配された愚かな人形たちが! 人類の誇りを忘れた人形どもが!」
こちらに気付き、何か言っている男の脳天に銃弾を撃ち込む。せっかく、私が攻撃する前に気付いたのに、そのチャンスを活用することもなく、ただ愚痴を言っただけ。本当に反抗する気があるのだろうか。私は疑問に思ってしまう。
連中はいつもこうだ。
この人たちは本気で反抗する気がないのだろう。ただ愚痴が言いたいだけなのだ。
私はクラスメイトと一緒に反抗勢力を制圧していく。
そして、一番奥にある部屋でリーダーらしき女を見つける。一番奥の一番安全な場所に一番偉い人が居る。それが物事の理屈に合っているのだろうけど、何故だろう、あまり面白くない。もやもやする。
「こんなところまで! どうやってここが分かった!」
反抗勢力のリーダーらしき女がヒステリックに叫んでいる。
「えーっと、それが最後の言葉で良いのかな?」
「機械に、機械に支配された人形が! お前たちは現実が見えてない! 人類の誇りを!」
狂信者らしく、リーダーらしき女も他の連中と同じ言葉を繰り返している。
私は周囲を見回す。聞こえていた戦闘音が今はもう聞こえない。静かになっている。戦闘は終わり。もう、ここだけなのだろう。
私は目の前のリーダーらしき女に銃を向ける。
「ひっ。ね、ねぇ、私だけは助けてくれない? そうだ。お金、そうお金をあげるから!」
リーダーらしき女は先ほどまでの態度は何だったのかと言いたくなるような手のひら返しで、そんなことを言い出した。
「はぁ」
「あなたが見たことも無いような大金を渡すわ。私、結構、ため込んでいたの。どう? 遊んで暮らせるだけのお金があれば……」
いつもそうだ。反抗勢力は命乞いをする時にお金をあげるから助けてと言い出す。お金のことは私も知っている。でも、管理され統制された世界には邪魔なものでしか無い。まだ炭酸飲料の瓶の蓋でも集めた方がマシだ。
私は引き金を引く。
次回10月24日(木)の更新の後、10月26日(土)29日(火)31日(木)11月2日(土)の更新をお休みします。今後ともかみ続けて味のしないガムをよろしくお願いします。




