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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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069 賞金稼ぎ06――『ごもっとも』

「それで君は……」

 ウルフと名乗った青年が続けて何かを言おうとしたところでスーツ姿の女性が部屋に入ってきた。ウルフは肩を竦め、そのスーツの女の方へ向き直る。


「それではこれより、お前たち新人クロウズに対しての説明を始める」

 どうやら、今から説明会が始まるようだ。スーツの女、か。ここで見かけたことがない女だ。受付嬢とは違う何処かゆったりとしたデザインのスーツ姿に――年齢は……妙齢というところか。こんな荒くれどもの中で説明会の司会を行うには若いと感じる。てっきり、ここのマスターであるオーツーがやってくるのかと思っていたが、どうやら違ったようだ。オーツーは暇そうにしか見えなかったが、あれで意外と忙しいのかもしれない。


「遅えヨ。お前らの説明なンていらねェんだヨ。全てのマシーンどもをぶち壊せばいいンだろ」

「殺すンだヨ」

「俺ラをまたしてそれかヨ!」

 女性が説明を始めようとしたところで騒ぎ始めた一団があった。


「彼らはアンテッドの連中ですね」

 何故かウルフが俺に話しかけてくる。解説役でもしてくれるつもりか。

「アン()ッド、それがヤツらの集団(グループ)の名前か?」

「アン()ッドですよ」

 て?

「デッドではなく、テッドなのか。良く分からない名前の集団だな」

「ええ。ですが、逆にそれが憶えやすいと評判らしいですよ」

 ウルフは俺の方を見て何が楽しいか微笑んでいる。


「早くクロウズのタグを渡すンだヨ」

「ああ、すぐに俺ラ、アンテッドがマシーンを壊してやるンだぜ」

 アンテッドとやらが集まった一角は非常に騒がしい。他の連中は、それを馬鹿するように――嘲るような顔で見ていた。


 スーツの女が大きなため息を吐き出す。

「別室で話しましょう」

 そして、スーツの女のその言葉と同時に黒いボディアーマーを身につけた男たちが部屋の中へ入ってくる。

「おイおイ、こいつらは……」

「なンだヨ!」

 ボディアーマーの男たちが騒がしくしていたアンテッドの連中を拘束する。連中は拘束された状態から抜け出そうとするが、そのまま押さえつけられ、部屋の外へと連行されていく。


 ……何がしたかったんだ? 雇い主側の連中に逆らって喧嘩を売るとか馬鹿なのか?


『なんだったんだ?』

『ざぁこが粋がって馬鹿だっただけでしょ』

 ……まぁ、その通りだ。


「どんなにバックに大きな団が居ても本人たちが優れている訳ではありませんから、仕方ないですよね」

「団の実力を……自分の力と勘違い。愚か」

「そうね。団の実力を自分の実力だと勘違いするなんて所詮新人レベルってことよね」

 ウルフたちはそんなことを言っている。まるで自分たちは違うと言いたいようだ。


「お前たちも新人のクロウズじゃないのか?」

「一緒にしないでくれる?」

 俺はウルフに話しかけたつもりだったが、その隣に座っていた女が何故か答える。

「一緒だろう?」

「私たちは、あなたみたいなどの団にも入れて貰えなかった無能力者とは違うの。才能を認められて、ずっと厳しい訓練を行ってきたんだから。どうせ試験も誰かに寄生して乗り切ったんでしょ」

 女は何やら良く分からないことを言っている。


 とりあえず肩を竦めておくか。


 そんな俺を見たウルフが何処か楽しそうに苦笑する。

「レモン、駄目だよ。僕たちは団に所属しているし、それが間違っていると思っていない。それだけの力があるから団に所属出来ていると思っている。でも、皆も知っているとおり、クロウズの上位者の多くはソロだ。団に所属していなくても……ソロだって優れた人たちは居るのだからね。ここにだってあの真っ赤な人や、ウォーミなどには有名な兄妹二人で狩りをしているクロウズもいるって話だよ。決めつけては駄目だよ」

「ウルフ、こいつがそうだって言いたいの?」

 女の言葉にウルフは首を横に振る。そして、その女の隣に座っていた暗そうな女が口を開く。

「たいしたこと……ない。みたままの実力……」

「ねえ、ウルフ、ユズもこう言っているけど?」

 ウルフは苦笑したまま肩を竦める。

「この彼が優れた実力者だって言っている訳じゃないよ。ソロでも実力者は居るってことと、団に所属しているから偉いって、あのアンテッドの連中みたいに勘違いしたら駄目だって言っているだけだよ。僕たちは星十字軍(スタークルセイダー)の一員だ。でも、新人のクロウズであることは間違いない。それを忘れては駄目だよ」

「分かったわ。ウルフがそう言うなら納得する」


 ……。


 何を納得したのか分からないが、俺を放置して随分と好き勝手なことを言ってくれている。聞かれても構わないと思っているのだろうか。それだけ俺を下に見ているということか。随分と傲慢な連中のようだ。


『セラフ。お前から見てコイツらの実力はどの程度だと思う?』

『ふふん。雑魚でしょ』

『だよなぁ。なんでこんなに強気に出られるのか分からない』

『雑魚だからでしょ』

『ごもっとも』

 俺は肩を竦める。


 思わずセラフと仲良く会話してしまうほど、コイツらは付き合いきれない。何故か、こちらを構いたくてしょうがないようだが、無視して説明に集中しよう。


「私は進行が邪魔されるのが大嫌いだ」

 スーツの女の話は続いている。

「次に同じことをしたヤツはクロウズの資格を剥奪する」

 おーおー、大変だ。俺がウルフの会話に巻き込まれている間に大変なことになっている。


『セラフ。一応、確認だが、あのスーツの女も人造人間(アンドロイド)なのか?』

『ふん。見て分からないとか馬鹿なの? どう見ても人じゃん』

 人……なのか。


 オフィスの関係者は全員人造人間(アンドロイド)かと思っていたが、どうやら違うようだ。それともオフィスの関係者ではないのか?


「まずはお前たちにタグを渡す。これはお前たちがクロウズであるという身分を証明するものだ」


 ……とりあえず馬鹿な連中は無視してスーツの女の話を聞こうか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 定期的に馬鹿が湧く! [一言] 掛け流しの源泉かな? あんまり馬鹿が多いとセラフと仲良くなっちゃうー。 クロウズは団に所属してるのが普通っぽいムードですね。 それで最初にコイルを貸してく…
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