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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

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661 ラストガーデン32

 壁を蹴って走り、戦闘を避け、無駄な時間を短縮する。この遺跡は獄炎のスルトが元になっているだけあって、かなりの広さがある。全てを見てまわろうとすれば、一日、二日では済まない日数がかかるだろう。だが、問題ない。見るべき場所――その目星はついている。


 俺は走る。下層を抜け、さらに下へ。


 最下層。


 そこが目指す場所だ。


 俺はなるべく静かに、音を立てないように、だが急ぎ、移動する。静かに壁を蹴り、斜め前へと飛ぶ。反対側の壁を蹴り、また斜め前へと飛ぶ。そうやって通路を進んでいく。機械(マシーン)やビーストたちは自分たちの頭上を移動しているものが居るとは思わないらしく、未だ気付かれていない。


 通路を進み、階段を見つけ、さらに下へと進む。


 最下層にご到着だ。


 ここは獄炎のスルトの船底。底の底だ。


 俺は動いているビーストや機械(マシーン)たちの流れを見る。何処から来ているのか。何処に多いのか。


 俺が目指すべき場所は――そこにあるはずだ。


 ビーストや機械(マシーン)たちの姿を見る度に、クルマの砲撃で蹴散らしたくなってくる。が、俺はぐっと我慢し、連中に見つからないように、戦闘にならないように気を付けながら、移動する。目的は戦闘では無い。そんなことをしている暇は無いだろう。


 そして、俺は金属製の大きな扉を見つける。高さ四メートル、横幅は十メートルくらいか。シャッターのような形をした、ずいぶんと頑丈で大掛かりな扉だ。扉を軽く叩いてみる。かなりの厚さがある。ちょっとした砲撃程度では、この扉を破壊することは出来ないだろう。


 どうやら、ここが大事な場所のようだ。機械(マシーン)の一部がここを守るように動いている。


 中に何があるのだろうか?

 何を守っている?


 さて。


 扉をどうする? 無理矢理開ける? そんなことは出来ないだろう。では、開くのを待つべきか? いつ開くか分からないものを待つなんて時間の無駄だろう。


 俺は右のこめかみを叩き、群体(ナノマシーン)を観測する。中へと続く道を探す。監視カメラ、警備の(たぐ)い――確認をする。


 そして、俺は来た道を戻る。


 通路の壁、その上部に通気口が見える。俺はその通気口まで壁を蹴って駆け上がり、左手に埋め込んでいた白銀の刃で()を切り落とす。ここから通気口の中に入れそうだ。


 無理矢理こじ開けた通気口の中へと潜り込む。


 通気口の中は、小柄な自分だから何とか這って進めるほどの狭さだった。人が通ることを考えて作られてないのだろう。


 扉の先を目指し、通気口の中を進む。


 ……。


 む。


 通気口――その先から音が聞こえる。それが迫ってくる。


 それは扇風機の羽根のような刃をくるくると回し、ブラシのような足がくっついた機械(マシーン)だった。この通気口の清掃担当なのだろう。


 お掃除ロボット、か。


 お掃除ロボットの回転する刃が迫る。


 俺は大きくため息を吐き、狭い通気口の中でもぞもぞと動き、ナイフを持った右腕を前に伸ばす。


 回転する刃が目の前まで迫っている。


 俺はその回転する刃と刃の間にナイフを突っ込み、回転の動きを無理矢理止める。そのまま力を込め、本体部分を叩き潰す。お掃除ロボットが動きを止める。


 予想していたよりも脆くて助かったが、このままでは邪魔すぎる。この狭さではバラすことも出来ない。


 俺はもう一度ため息を吐く。


 仕方ない。


 俺は邪魔なお掃除ロボットを押していく。通気口いっぱいの大きさのお掃除ロボットだ。ここではこれしか出来ない。何処か適当な場所で――通気口の分かれ道で押しのければ良いだろう。


 扉の先を目指し、通気口を進む。


 再び音が聞こえてくる。


 俺は何度目になるか分からないため息を吐く。どうも、この遺跡は、通気口を綺麗にすることに強いこだわりがあるようだ。


 新しいお掃除ロボットにぶっ壊した先ほどの残骸を突っ込む。回転する刃が綺麗に残骸をバラバラにしてくれる。その残骸をブラシのような足が綺麗に掻き込み、吸い込んでいく。こうやって通路を綺麗にしているのだろう。このお掃除ロボット、お腹がいっぱいになったら回収した残骸(ゴミ)を何処に捨てに行くのだろうか?


 俺は手までバラバラにされないように気を付け、再びナイフを刺し込む。そのまま新しいお掃除ロボットを先ほどと同じように叩き壊す。


 俺はため息を吐きながら、重くなった残骸を押し続ける。途中、通気口の分岐路で残骸を押しのける。片方の通路が塞がれてしまうが問題ないだろう。


 そのままもぞもぞと通気口を進み続け、扉の先のエリアへと侵入する。通気口を這って進み、適当なところでそこから這い出る。


 ……。


 扉の先の部屋。


 そこには無数の水槽が並んでいた。その水槽の中にはビーストらしきものがぷかぷかと浮かんでいる。俺は人の気配を感じ、すぐに水槽の影に隠れる。


「成長速度に違いが出ているようだが?」

「注入する栄養を変えて見てはどうでしょうか?」

 白衣を着てガスマスクをつけた科学者らしき連中が板を手に持ち、会話をしながらこちらへと歩いてきていた。


 連中――どうやらここでビーストを使った実験を行なっているようだ。


 俺はそのまま水槽の影に隠れ、連中の会話を盗み聞く。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お宅拝見! [一言] お掃除(二重の意味で)ロボット。 マシーンだけじゃなくビーストもかー。 いつまで経ってもこの世界はロクなもんじゃないな。早くお掃除しなきゃ。
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