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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

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653 ラストガーデン24

 俺は右目に表示させていた地図を消す。短時間ではあったが、周囲の状況はだいたい把握することが出来ただろう。これで充分だ。


 俺は遺跡の中を走る。少し気になることはあるが、問題無い……はずだ。


 通路を徘徊している機械(マシーン)たちをやり過ごし、とにかく走る。


 目的の場所はすでに分かっている。


 彼らが何処に逃げたかは分かっている。


 ……。


 俺は足を止める。曲がり角の壁に貼り付き、通路の先をのぞき見る。


 人、人、人。


 人が集まっている。


 眼鏡の姿が見える。小柄な少年(ヴァレー)の姿も見える。見覚えのない連中も居る。そんな奴らとの会話が聞こえてくる。


 俺は耳を澄まし、会話を盗み聞く。


「……先輩、先輩が何故、ここに居るのですか。後輩の課外授業に混ざって何をするつもりですか?」

「たくよぉ、居たら悪いのか? 後輩を応援しに来ただけなんだけどよぉ。それなのに、そんな態度をとられたら、考えちゃうよなぁ」

「何を言っているんですか? 応援なんて必要ありませんよ。分かったら帰ってくださいよ。先輩方がここに来ていることを教師たちに言いますよ? 内緒でここに居るんでしょう?」

「ほぉ、面白れぇことを言うよなぁ、こいつはさぁ。お前もそう思うだろ?」

「待って、待ってください」

「はぁ、そうだ。よし、待ったぞ。お前のような奴の言葉も聞くなんて、俺はなんて優しいんだろうか。たくよぉ、ホントによぉ。そういえば、お前らって誰か一人が教師を呼んだら連帯責任で、そこで失格になるよなぁ。今年の課外授業もそうだろ? そうだったよなぁ」

「先輩を何を言っているんですか? 僕たちを無理矢理失格にでもするつもりなんですか? 僕たちが、仲間が……そんな脅しに乗る訳がない」

「ははは、そうか。そうかよぉ!」

「待って、お願いだから待ってください」


 ……どうやら、見覚えのない連中を率いているのはあのキザったらしい少年のようだ。七人の武器屋(セブンウェポンズ)のショーヘーの子孫がアレなのか。なるほどな。


 あいつがゲームメーカーということは無いだろう。だが、無関係だとも思えない。


 俺は小さくため息を吐く。


 このまま聞耳を立てている場合では無さそうだ。


「なぁ、これが何か分かるか?」

 キザったらしい少年がリモコンのような機械を取りだしている。

「それは……なんで、なんで坊っちゃんが……」

「ヴァレー、あれは何だ? あの先輩は何を取りだしたって言うんだ? 危険なものなら逃げるべきだ。教えてくれ、アレは何だ?」

 眼鏡がキザったらしい少年を鋭い目で睨んでいる。眼鏡は白か? どうだろうな。


「オヤジに言ったのさ。お前が俺を支えるどころか、逆らって困ってるってな。オヤジは嘆いていたぜ。信じて送り出したのに裏切られたってな。それでこれを送ってきたってワケだぁ。躾なおせってな!」

「あ、あ、あ、あ、あ、ああ」

 小柄な少年(ヴァレー)がその場に崩れ落ちる。


「これが何か知ってるよなぁ。分かるよなぁ! 犯罪者だったお前ら一族をしつけるためにこれがあるってなぁ!」


 ……なるほどな。


 なるほどなぁ!


「よし、棄権しろ。分かったな、これは命令だ。逆らうようなら躾の時間だ。分かるよなぁ!」

 キザったらしい少年がリモコンを小柄な少年(ヴァレー)に向ける。


「何を言っているんだ。ヴァレーがそんな脅しにのるものか。ヴァレーが仲間を裏切ると思うのか? 違う。彼はそんなことはしない。ヴァレー、そうだろう?」

 眼鏡が小柄な少年(ヴァレー)に微笑みかける。だが、その小柄な少年(ヴァレー)はゆっくりとした動作だが、命令されるがままに腕の装置へと指を伸ばしていた。

「お、おい。ヴァレー、どうしたんだ?」

「駄目……なんです。僕たちは犯罪者の一族。坊っちゃんの一族に逆らうことは出来ないんです。これ以上、罪を増やすことは出来ないんです」

 眼鏡が小柄な少年(ヴァレー)の装置へと伸ばしていた手を掴み、慌てて止める。小柄な少年(ヴァレー)は涙を流しながら、それでも逆らうことが出来ず、棄権するために装置を動かそうもがいている。


 俺は大きくため息を吐く。


 これは間違っている。


 間違っていることだろう?


 俺は連中たちの前へと飛び出す。


「何者だ!」

 キザったらしい少年が率いていた兵隊たちが俺に気付き、銃を向ける。


 俺は肩を竦める。

「何者? 命が惜しいなら俺の邪魔をするな。俺の言っていることが分るだろう?」

「あ? 誰かと思えば、なんだ、あのクソ生意気な転入生かよ。たくよぉ、俺らの邪魔をするんじゃねえよ。お前も大人しく棄権しとけ。死ぬよりは(・・・・・)マシだろ、ああ?」

 俺はキザったらしい少年を見る。

「お前は知っていた(・・・・・)のか?」

「あ? んのことだ? これを奪おうとしても無駄だぞ。俺たちの一族しか使えないようになってんだからな!」

 キザったらしい少年はそんなことを言っている。


 一族にしか使えない、か。あのリモコンのような機械には使用者の遺伝情報を読み取るような機能でもついているのだろう。それは分かった。


 だが……。


 俺は大きくため息を吐く。


「お前、やり方を間違えているよ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] (ガム君じゃなかったら)死ぬイベントはもうクリアしてきたんだよ! [一言] この演出家はセンスがないだけじゃなくて悪趣味だし手抜きだな。 それはさておき、あの時の契約がこうも醜悪になるとは…
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