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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

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650 ラストガーデン21

 通路を走る。


 通路は迷路のように入り組んでいるが問題無い。行くべき場所は分かっている。


 問題は――眼鏡の動きが遅いことと健気にも戦闘に参加しようとすることだろうか。ただ俺の後を追いかけるだけというのは眼鏡の矜持的に許せないことなのだろう。


 そして、曲がり角の先から無限軌道の足に人型の上半身がくっついた馬鹿みたいな機械(マシーン)が現れる。現れた機械(マシーン)がマシンガンのようになった両腕をこちらに向ける。


 警備用のマシーンか。確か安心神話だったか? 絶対安心神話だったかもしれない。どちらでも同じか。


 俺は銃弾がばらまかれるよりも早く現れたマシーンに取り付き、その首元にナイフを突き刺す。


 脆い。


 首筋にナイフを刺し込み、そこをこじ開ける。こじ開けた首筋から配線を引き抜き、現れた機械(マシーン)を緊急停止させる。どうやら形だけをかつての機械(マシーン)に似せたまがい物だったようだ。その両腕のマシンガンから放たれる殺傷能力は本物と遜色ないのだろうが、性能が全然違う。反応速度、機動力、硬さ、全て落ちる。この程度なら苦戦することもないだろう。


「うわああああぁぁ!」

 眼鏡が叫びながらこちらへと走ってくる。

「何のつもりだ?」

 俺はため息を吐きながら機械(マシーン)の背から飛び降りる。


「僕も戦う」

「素手で何をするつもりだ? それにもうこれなら機能を停止させた」

「素手? 君だって同じじゃないか。君に出来ることが僕に出来ないとでも……」

 少し元気になったのか、眼鏡はそんなことを言っている。俺と現状認識に違いがあるようだ。


「このナイフがあるだろう?」

 俺は眼鏡に見えるようにナイフを突き出す。


 どうもこの眼鏡はナイフの有る無しが分かっていないようだ。殆ど差が無いと思っている。もしかすると銃火器以外は武器だと思っていないのかもしれない。


 この機械(マシーン)を停止させるのでも、ナイフで外部装甲を切ることが出来るかは――大きな違いだ。素手で倒すとなると首を引き千切るような馬鹿力が必要になるだろう。


 ……。


「とりあえず生き延びたいのなら、わあわあと騒いで敵を呼び寄せるのは止めてくれ」

「僕がいつ……!」

 まだ何か言いたそうな眼鏡を黙らせ、通路の奥からこちらの様子をうかがっていたビーストを狙い、集めておいた石ころを指で弾き、飛ばす。


 通路の奥のビーストたちが、ぎゃうと情けない悲鳴をあげて逃げていく。石ころを使った簡単な指弾だが、ビーストを追い払うくらいは出来たようだ。


「次に邪魔するようなら黙らせる。良いな?」

「僕がいつ……!」

 まだ何か言おうとしている眼鏡の腹部をしばらくは息が出来なくなるだろう勢いで殴り、静かにさせる。そのまま左手にナイフを持ち直し、右手で眼鏡の首を掴み、引き摺るようにして通路を進む。


「まだ灯りがあるだけマシか」

 俺がそう呟いた瞬間だった。


 周囲の灯りが全て消える。


 あまりにも露骨な反応に、俺は思わず大きなため息を吐く。

「肝心の戦闘が見えないのでは、盛り上がりに欠けるだろう?」

 暗闇の中、こちらの声を聞いているであろう、それに話しかける。だが、反応は無い。周囲は暗闇に包まれたままだ。


 俺は肩を竦める。


 暗闇の中で俺たちが惨殺された後、無残に殺されましたとでも紹介するつもりなのだろうか。俺たちの戦い程度ならば見せる必要も無いと判断されているのだろう。


 ずいぶんと舐められたものだ。


 俺は左手で右のこめかみをとんとん叩く。


 青い光点はこちらを目指して進んでいる。どうやら問題無く回収出来たようだ。ビースト連中は余程の間抜けで無い限りは、こちらを恐れ、警戒し、襲ってこないだろう。問題は機械(マシーン)か。


 俺は天井を見る。そこには機械(マシーン)の目が存在して(ぶらさがって)いた。とりあえず礫を放ち破壊しておく。


 そろそろか。


 暗闇を進む。


 再び通路が揺れる。

「また、何が……!」

 眼鏡が目を覚ましたようだ。

「少し、待て」

 俺は天井を見る。


 そして、天井が崩れる。


 暗闇に光りが落ちてくる。


 穴は開いたが、このままここを登るのは無理か。


 その場で待つ。


「なぁ、君。待てってどういう……」

「静かに」

 俺は眼鏡の首を強く掴み黙らせる。


 しばらくして穴の上から紐が落ちてくる。俺は紐を握り、強く引っ張ってみる。これなら問題無く上がれるだろう。


 まずは……、


「先に上がってくれ。それくらいは出来るだろう?」

 俺は掴んでいた眼鏡を紐の前に立たせる。

「これは……?」

 眼鏡が不安そうな顔でこちらを見る。

「見れば分かるだろう?」

「わ、分かった」

 眼鏡がゆっくりと紐を握り、登っていく。


 さて。


 俺は周囲を見回す。


 こちらを取り囲むように機械(マシーン)たちが集まってきている。眼鏡が登り切るまでここを守る必要があるだろう。


 邪魔な眼鏡が居なくなり、俺一人ならなんとでもなる。


 俺は現れた機械(マシーン)たちを相手にナイフ一本で戦い続ける。


 そして、眼鏡の姿が見えなくなり、無事に元の階層に戻ったであろう時だった。パサリと上から紐が落ちてくる。


 紐が切られたようだ。


 ……。


 俺は大きなため息を吐く。


 眼鏡がやったとは思わない。


 上で再び何かがあったのだろう。


 どうやら俺は正規のルートで上に戻る必要があるようだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 行ったり来たりだ! [一言] 絶対安全神話ガードナーくん!……の劣化版なのだった。 機材と演出がどうにもお粗末ですな。 そりゃガム君じゃなかったら、瞬ころだろうけども。 眼鏡君もイベンタ…
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