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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

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630 ラストガーデン01

 小柄な少年が粗野な少年たちに囲まれている。

「えっと、これは……」

 小柄な少年は怯えた様子で粗野な少年の一人に話しかける。

「馴れ馴れしく俺に話しかけるんじゃねえよ」

 小柄な少年を囲んでいた中のリーダーらしき少年がキザったらしく髪を掻き上げ、小柄な少年を蹴り、殴り、壁に押しつける。

「痛い、なんで、こんなことを……」

 キザったらしい少年は小柄な少年の言葉を聞き、不機嫌そうに顔を歪める。

「馴れ馴れしく話しかけるなって言っただろ。何度も言わせるなよ。はぁ、馬鹿だからわかんねえのかよ? お前と俺では立場が違うんだよ、ばぁか」

「でも、学園だと皆、おな……」

 キザったらしい少年が小柄な少年の言葉を遮るように大きなため息を吐く。

「あ? だから勘違いしたのか。そんな建前を信じて? 使用人のお前が、俺と同じ? ふざけんな。オヤジもなんで、こんな奴をここに入れたんだか」

 キザったらしい少年が威嚇するように小柄な少年を蹴る。


「おいおい、先輩だろ。後輩に優しくしなくて良いのかよ」

 キザったらしい少年の取り巻きの一人がニヤニヤと笑いながら話しかける。

「良いんだよ。(しつけ)だ、躾。こいつには自分の立場を思い知らせる必要があるんだよ。こうでもしないとこいつは勘違いして、ここに残ろうとするだろうからな」

 そう言いながらキザったらしい少年が小柄な少年を蹴る。何度も蹴る。小柄な少年は身を守るように体を押さえ縮こまる。


「おっと、良いのかよ」

 キザったらしい少年の取り巻きの一人は何が楽しいのかニヤニヤと笑い続けている。

「良いのさ。こいつは俺の奴隷みたいなものだからな。だいたい、うちの家門の助けがなければ、入学なんて出来なかった奴が先輩である俺を差し置いて目立とうとしたんだぜ、駄目だろ?」

「おー、そりゃあ、確かに駄目だな。教育しないと駄目だな」

 キザったらしい少年の取り巻きの一人が小柄な少年の腹を殴る。


「あ」

 その一撃で小柄な少年が大切に抱えていた本が地面に落ちる。小柄な少年は慌ててその本を拾おうとする。


「おいおい、まだ動くのかよ。元気だな。この程度はなんともないってか?」

 キザったらしい少年の取り巻きの一人が本を拾おうとした小柄な少年の手を踏む。

「これはもう要らねえよな」

 キザったらしい少年は小柄な少年が大切そうに抱え持っていた本を拾う。

「か、返して。それは大切な……」

 まだ何か言おうとしていた小柄な少年の前でキザったらしい少年が本をビリビリと破いていく。そしてバラバラになったページを這いつくばる小柄な少年の頭の上からばらまく。


「わかったな。お前はここから出て行け。自分から言うんだぞ。馬鹿なんでついていけませんでした、ここから出て行きますってな」

 キザったらしい少年がそう言いながら小柄な少年の頭を踏みつける。


「はぁ、たく。オヤジもなんで、こんな奴をここに入れようと思ったんだか。ここは俺たちみたいなエリートしか通えない場所だぜ」

「こいつ、お前んところの使用人なんだろ」

「そうだぜ」

「嫌になるな。俺たちみたいなエリートとなんでこんな下民が一緒にされるんだよ。学園はもう少し考えてくれよなぁ。下民向けの学園を作る余裕がなかったからなんだろうけどさ。こっちはたまったもんじゃあないぜ」

「だよな」

 少年たちは笑いながら去って行く。


 少年たちが居なくなったのを確認し、小柄な少年はよろよろと動く。

「なんで、なんで……」

 涙が出そうになるのをグッと堪え、バラバラになった本のページを集め、それをつなぎ合わせる。

 唇から流れる血を拭い、ふらふらと壁を支えにしながら自分の部屋へと帰っていく。


 それは小柄な少年が学園に入学してすぐの出来事だった。先に入学していた本家の御曹司に目をつけられ私刑を受けた。そんな出来事だった。


「はぁ、なんでまだ残ってるんだよ」

「まぁいいじゃん、そういうの。これはこれで良いストレス解消だぜ」

「そうだよな。俺たちエリートのために役立てて良かったじゃん」

 それからも小柄な少年は暴行を受け続ける。それは明確ないじめだった。だが、それでも少年は学園を辞めなかった。辞める訳にいかなかった。


 学園の教師たちも少年がいじめられていることに気付いていた。だが、何もしなかった。してくれなかった。教師たちの話では証拠がない状態では何も出来ないとのことだった。それは少年の立場もあったのだろう。大商会の御曹司と、その使用人。学園がどちらを取るかは考えるまでも無かった。


 学園で少年が孤立していく。生傷が絶えない少年は、同じ学年、教室の同級生からも無視しされるようになる。


 そんな日々が続き、少年の心が折れそうになっていた時だった。


 教室。


 学園の授業だけが少年の救いだった。その間だけは全てを忘れ、好きなことに没頭が出来る。


 いつものように席に着き、授業が始まるのを待つ。だが、その日はいつもと違っていた。


 担任の教師が一人の少年を連れてくる。

「この時期だが、転入生だ。自己紹介をしてくれ」

 担任教師に促された少年が肩を竦め、小さくため息を吐く。

「俺は……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 学園編だ!? [一言] またジャンル転生してる……時代も進んでそうだなあ。 学園が新しくできてるくらいだから文明もちょっとは復興してるのかな。 章タイトルからして、そろそろ最終章っぽい?…
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