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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
さまよえるガム

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612 ドラゴンファンタジー34

再開しました。

 真っ暗な闇の中――俺は目が覚める。


 ここは……何処だ?


 身動きが取れない。体の自由が利かない。体を少し動かそうとするだけでもかなりの力が必要になる。何か重いものが体にまとわりついているような感じだ。


 ……?


 そのうち、息が苦しくなり目眩がしてくる。空気が、空気がない。ここには空気がない!


 そして、俺は意識を失った。


 ……。


 ……。


 ……。


 真っ暗な闇の中――俺は目が覚める。


 どうやら俺は死んでいたようだ。身動きの取れない暗闇の中で、酸欠で死んだのだろう。


 ……以前にもこんなことがあった気がする。あの時は、どうだった? あの時も同じような状況では無かったか? いや、違う。あの時はセラフが居た。


 今は……一人だ。


 俺は殆ど体が動かせない中で身をねじり、なんとか自由になる隙間を作ろうとする。そうやって動いているうちに――俺は酸欠で、死んだ。



 再び真っ暗な闇の中で目が覚める。


 生き返った。


 ……。


 あれは……サンライスの街での出来事だっただろうか? 地上に堕とされ、そこの連中と上を目指し、アクシード四天王のフォルミとやらに閉じ込められ、何度も死んだ。何度も死んでいた。


 ……。


 何度も体を捻ったことで、少しだけ隙間が空いたように思う。このまま、行けば……そこまで考え、俺は意識を手放す。


 真っ暗な闇の中、俺は目覚める。


 どうやらまた死んでいたようだ。俺はこの後も死ぬのだろう。何度も何度も死ぬのだろう。


 体を動かす。動かせる隙間は大きくなっている。前回はどうだった? あの時は周囲にナノマシーンも無く、空気もなく、かなり酷い状況だった。だが、身動きが取れないほどではなかった。そして、セラフが居た。


 今の俺は一人だ。


 これも俺の――罰、なのだろうか。


 俺が自分のことだけを考え――独り善がりな選択をした罪への罰なのだろうか。


 色々なことを考えてしまう。


 考えながらも体を動かし、隙間を作っていく。


 俺の手が何か硬いものを掴む。これは石? それとも木だろうか? 俺はその塊を握りつぶす。手の中で粉となって砕け散ったのがわかる。目を開けようとするが、砂のようなものが目に入り、まともに目を開けられない。どうやら、俺が隙間を拡げようと動いたことが悪かったようだ。これで目を開けることも出来なくなった。


 元から暗闇に閉ざされていた世界だったが、目を開けられなくなったことで本当に何も見ることが出来なくなってしまった。


 思わず息を吸おうとし、口の中にじゃりじゃりとしたものが入る。これは……砂か? 息を吸おうともがくことすら出来ない。出来なくなってしまった。


 ……。


 闇。

 目を開けることも出来ない。

 殆ど動くことも出来ない。

 空気もない。

 口を開けることも出来ない。

 何度も死の苦痛を繰り返す。


 発狂しそうな状況だ。


 発狂しそうだ。


 だが、終わらない。


 どれだけ死のうが、生き返り、あがくしかない。


 狂うことも出来ない。


 もがくことしか出来ない。


 あがくことしか出来ない。


 死の間際、発狂しそうになっていた脳が、思考が、生き返る度に元の正常な状態に戻る。繰り返される。ナノマシーンが俺を治す。死ぬ度に、生き返る度に、俺を元の俺に戻す。


 発狂して、死にかけ、そして、死に、生き返る。発狂した記憶があるのに、元の正常な俺に戻っている。ナノマシーンが俺を狂うことを許さない。


 死ぬ。


 生き返る。


 繰り返す。


 何度、死んだだろうか。


 何度、生き返っただろうか。


 そして、俺の手が突き抜ける。


 ……。


 ……。


 抜けた?


 俺は手を開き、握る。何も掴まない。俺の手が空間に突き抜けた。


 開けた場所?


 どうする?


 斬鋼拳を使うべきだろうか?


 いや、まだだ。まだ使うべきでは無いだろう。


 まだこの何も無い空間がどうなっているかわからない。ここまで我慢したのだ。まだ、ここで下手なことをするべきでは無いだろう。


 俺は腕を動かし、突き抜けた空間を拡げる。空気だ。久しぶりの空気だ。息が出来る。だが、息を吸おうと口を開く度に、口の中に砂が入り込んでくる。


 ……これは砂だろう。


 間違いなく砂だろう。


 俺は埋められていたのか?


 ……。


 ……。


 もう後少しだ。


 俺は腕を動かし、隙間を拡げる。もう少しで、ここから出られるはずだ。脱出出来るはずだ。


 この状況から抜け出せる。


 ……。


 繰り返す。


 隙間を拡げる。


 徐々に腕が、肩が、体が外へと出て行く。


 そして、ついに俺は抜け出した。


 ……。


 俺は頭を振り、砂を飛ばし、周囲を見る。口の中の砂を吐き出し、大きく深呼吸し、周囲を見回す。


 ……。


 俺の周りには無数の石が並んでいた。


 石、モノリス。


 ……。


 そうか、ここは墓場か。


 どうやら、俺は死体として、墓場に埋められていたようだ。


 なるほどな。


 そういうことか。


 俺が死なないとは――死んでも生き返るとは思わないだろう。思わなかったのだろう。


 これは仕方の無いことだ。


 俺は大きくため息を吐く。


 これは仕方の無いことだ。


 問題は、俺が死んで、死に続けて、どれだけの日数が経ってしまったかということだ。


 報酬は、約束はどうなっただろうか?


 俺は確認しなければならない。


 まずは、ここが何処なのか確認をするところからだろうか。


 アイダとイイダ、二人は元気だろうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] おおっと! [一言] *つちのしたにいる* ガム君てば流れで死んだりして普通に埋葬されたらどうすんだろと思ったら普通に埋葬されてたでござるw さすがに湖に沈んでたときよりは短い……かな?…
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