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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
さまよえるガム

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576 オーガキラー48

「コックローチ、長く続いたお前との因縁、これで終わりだ」

 ゴズが振り下ろした機械仕掛けの刃を引き抜く。


「お……おうじ、さ……ま……?」

 真っ二つになった真っ白な髪の男はきょとんとした顔でゴズを見ている。ここがどこなのか、現実なのかすら分かっていない顔だ。


「お前は……そうか! アマルガムかッ! アマルガムッ! クソがッ! お前がッ!」

 黒髪のコックローチが叫ぶ。

「懐かしい名前だな。だが、今はゴズだ。お嬢が生きている限り、俺はただのゴズだ」

 ゴズが機械仕掛けの刃を振るい、そこから飛び出していた刃を仕舞う。


「そ、そういうことかよ! クソがッ! この世界の法則すら斬れる刃で、お前は、それでアレを、あの障壁を斬らせるつもりかッ! そのためにその女をッ! 利用し……ああ、くぉ、消える。俺様が消える。俺様たちが消える。夢が終わる。こんなの、あんまりだ。あんまりだぁ、ひでぇ、ひでぇじゃねえか。同じ施設、同じ場所で育った仲間を、こんな風に酷すぎる! ああ、あ……」

 真っ二つになった白髪の男がそのまま地面に転がる。


 ゴズはそれを見て、ただ肩を竦める。

「偶然さ。お嬢を利用するつもりは無い」


 顔から、別の顔が生えた真っ白な髪の男。その死体は消えない。もう動くことは無い。


「終わったか。これで終わりか。コックローチ、お前もあの場所、あの施設で眠っていた一人か。エラー個体……マザーノルンが記憶を映した時に間違えたのだろう。男の体に女の記憶。そしてそれに耐えられず、この世界をゲームの世界だと思い込み、その世界に逃避した。恐るべきは、その逃避がナノマシーンに影響を及ぼすほどの力があったということだろう。世界を管理していたマザーノルンは、エラーを修正するために別の場所、別の世界に隔離するしか無かったのだろう。現実に存在するが、隔離されている。その誤差が不死の――いくらでも甦る秘密か。表に出ている体を操るために人格が生み出されたのか、本来の体の人格が出てきたのか、まぁ、そんなところだろう。だが、そんなお前もこれで終わりだ」


 真っ二つの死体は何も喋らない。


 ゴズは大きく息を吐き出し、横たえさせたオウカの元へ戻る。

「お嬢、帰りましょう。クルマの砲も手に入ったことですし、レイクタウンに行きましょうか。舐められたままにはしておけないでしょう? 舐められたら終わりですからね」

 ゴズがオウカを優しく起こし、抱き上げる。その額の角はもう輝いていない。元のオウカに戻っている。手に持っている白銀の刃だけがそのままだった。


 オウカを抱きかかえたゴズがダークラットへと歩いていく。


「な、何が起こったんだ?」

「まさか、コックローチ様がやられたのか」

「う、嘘だろ」

「あのコックローチ様がやられるとか、勝てる訳がねぇ」

「に、逃げろー!」

 ゴズたちとダークラットを取り囲んでいたアクシードの兵隊たちが騒ぎ、逃げだしていく。


「大将がやられれば逃げ出す、か。有象無象の寄せ集めではこんなものだろう」

 ゴズがそう呟き、ダークラットのハッチを開ける。


 その開けたハッチからオリハの顔がひょこんと現れる。

「逃げた?」

「ああ、逃げた。さっきの殲滅砲は、オリハが?」

「うん。調整したの」

 オリハはきょとんとした顔のまま、そう告げる。


「そうか。さすがだな。一撃の威力は強くても、ここまで大きくてパンドラの消耗が激しいと実用的じゃあないな。もう少し調整するか、別の砲に変えた方が良いかもな。まぁ、レイクタウンのアクシードのヤツらに思い知らせる程度なら、今のままでも充分だろう」

「お嬢は?」

 オリハがゴズに聞いてくる。ゴズが自身の口に指を当てる。

「疲れて寝てる。静かにしてあげよう」

「む。ゴズの方がうるさいよ」

 オリハの言葉にゴズは肩を竦める。

「とりあえず、お嬢を中に。休ませてあげてくれ」

「うん」

 ゴズがオウカをダークラットの中に運ぶ。


「お嬢、少し狭いですが我慢してくださいね」

「狭い!」

 オリハが何故か楽しそうにしている。もしかするとオウカと一緒に居ることが嬉しいのかもしれない。


「それで、お前はどうする?」

 ゴズがオリハに聞く。

「何を?」

 オリハは良く分からないという顔で首を傾げている。


「まずはレイクタウンだ。そこを変えるつもりはない。その後、お前はどうする?」

 ゴズがもう一度、オリハに聞く。

「お嬢と一緒に居る。一緒にカレーを食べる」

「そうか。そうだな。カレーの食べ歩きも悪くない。まさか、敵同士だったお前とそうなるとはな」

 ゴズの言葉にオリハは首を傾げる。

「敵?」

 ゴズは首を横に振る。

「いや、オリハはオリハだったな。いずれ、本体であるオリカルクムと出会うことがあるかもしれない。その時はお前の好きにしたら良いさ」

「オリカルクム?」

 オリハは不思議そうな顔で聞き返してくる。


 だが、ゴズは肩を竦めるだけだった。


「セラフとの出会いもそうだった。最初は敵対していた。仕方なく協力し合う関係だった。だが……」

 ゴズは空を見る。


「今の俺がただのゴズであるように、お前はオリハだ。俺はお嬢のただの付き人、お前はお嬢の娘。そうであるし、それだけの関係さ」

 そして、ゴズはレイクタウンがあるであろう方を見る。いや、ゴズが見ているのはレイクタウンではない。その隣にある湖――施設があるであろう方を見ていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ただのゴズだ! [一言] ええ、ガム君のこと普通に忘れてたのか……何度も倒されてんのに。ショーヘーはすぐ気づいたのに。 周囲を雑魚とか見下してるから現実が見えてないんだなあ。 白いほうの美…
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