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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
さまよえるガム

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559 オーガキラー31

 オウカが走る。


 そして、長い顎髭の老人が吹き飛んだ。


 長い顎髭の老人が近くの建物に突っ込み、そのまま壁にめり込む。


「な? 村長!」

「長老がやられた!」

「何をしたんだ?」

「突然、吹っ飛んだぞ」

 ダークラットを取り囲んでいた連中が騒ぎ出す。連中にはオウカが顎髭の老人を蹴り飛ばした姿が見えなかったようだ。


「はぁ、なんだ、こいつら?」

 ゴズは、村長なのか長老なのかどちらかはっきりしろ、などと考えながら肩を竦める。


 オウカは無骨な刀を構えたまま連中を見回す。

「ふむ。素人衆がずいぶんと愉快なことを言うじゃないか」


 オウカは連中を素人と断言する。


 オウカは荒事の玄人だった。


 オウカは荒事を生業とする集団、そのトップの娘だった。


 オウカは踏んだ場数が違う。


 オウカは見てきたものが違う。


「ふむ。それで? 次はどんなふざけたことを言うのか楽しみだね」

 オウカが牙を見せ笑う。そのオウカの威圧にダークラットを取り囲んでいた連中の動きが止まる。

「ふむ。これで終わりかい? どうした、言いたいことを言え。ふむふむ。言えないのか。それなら言えるようになるまで斬ろうか? 右手、左手、右足、左足、それとも指を一本ずつ落としていこうか?」

 ダークラットを囲んで居た連中が、オウカの言葉に怯え、目が合わないように顔を下に向け、ぷるぷると震え出す。

「ふむ。それ、邪魔だな」

 オウカが無造作に無骨な刀を振るう。


「ひっ」

 モヒカン頭のモヒカンが消し飛ぶ。

「うむ。綺麗になった。む、それも邪魔だろう?」

 オウカが再び無造作に無骨な刀を振るう。

「ひゃぁっ」

 次は尖った肩パッドが吹き飛ぶ。

「うむうむ。綺麗になった。次は……」

 オウカが連中を見回す。


「はい、お嬢、そこまでです」

「む。そうか」

 ゴズの言葉を聞き、オウカの威圧がすぅーっと霧散するように消える。

「ええ。もう充分ですよ。これ以上やるとオリハに悪影響が出ます。今でも、連中をひき殺すとか物騒なことを言いだして頭が痛いくらいなんですから、教育に悪そうなことはしない、言わないでよろしくお願いします」

「ゴズ、うるさい」

「うるさい」

 オウカがいつものようにうるさいと言い、オリハがきゃっきゃっとそれを真似する。ゴズは頭に手をあて大きなため息を吐く。


「子どもか。いや、子どもだったな」

 ゴズは肩を竦め、外部スピーカーのスイッチを入れる。


[聞こえるか。とりあえず七日分の食料と水を買いたい。価格は相場通りに。ならず者のように奪うことも出来るが、俺たちはそれをしない。その意味を考えろ]

 ゴズの言葉を聞いた連中が動き出す。モヒカン頭はモヒカンを取り外し、尖った肩パッドの男たちは服を脱ぎ、ドクロの眼帯の男たちは眼帯を外す。赤髪逆毛たちは、向き合いお互いの逆毛を無理矢理切り落としていた。


[それで?]

「は、はい。大至急準備します。いたしますー!」

 ダークラットを取り囲んでいた連中が逃げるように慌てて動く。


[それとだが、このクルマに合う大砲が欲しいのだが、売って貰えないだろうか?]

 ゴズの言葉に動き出そうとしていた連中の足が止まる。


「大砲ですか?」

[大砲だ。このクルマの主砲として使うものだ]

「大砲ですか」

[ああ。そうだ]

「大砲ですかぁ」

 とてもテンションの下がった声が聞こえる。

「そうだ。何かあるのか?」

「大砲ですか」

[そうだと言っているだろう]

「在庫がありません」

 連中の言葉にゴズは思わず運転席から滑り落ちそうになる。


[そうか]

 ゴズも、まさか、ここでウソを言われるとは思っていない。連中の言葉は真実(ほんとう)だろう。

「あー、ですが、ありそうな場所なら知ってます」

[そうか……ん?]

「ここから南の絶壁にトンネルが開通したのは知ってますか?」

[ん?]

「そこで次々と遺跡が見つかってます。そこでなら大砲が見つかるかもしれませんよ」

 そして、そんなことを言いだした。


 ゴズは考え、

「お嬢、どうしますか?」

 そして、オウカに振る。


「ふむ」

 オウカは無骨な刀を肩に乗せ、腕を組む。


 と、その時だった。


「くくくくくく」

 壁にめり込んでいた長い顎髭の老人が目を大きく見開き、笑い出した。

「そこは地獄の遺跡群。お前たちはそこで地獄を見るだろう、くくく」

「む。少し手加減をし過ぎたか」

 オウカが無骨な刀を構え直し、壁にめり込んだ老人の方へと歩いて行く。


「ま、待て。待つのじゃ。あわわわ、待ってください」

 オウカはその言葉を無視し、長い顎髭の老人の前に立つ。

「どっせい」

 オウカが無骨な刀を水平に叩き付け、長い顎髭の老人を黙らせる。


「峰打ちゆえ、安心するが良い。うむ」

 オウカは得意気に腕を組む。


 ゴズはダークラットの中で大きなため息を吐く。

「ろくでもない場所だったな。どうしてこうなった」

「どうしてこうなったー」

 ゴズの真似をしたオリハが楽しそうに笑っている。


 ゴズはもう一度大きなため息を吐き、肩を竦めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 雑魚は整地だー! [一言] 無駄な突起が無くなってスッキリしたのだった。 新しいフィールドかー。この世界、遺跡のほうが高度な文明なんだよなあ。 大砲かどうかはさておき、お宝が見つかるとい…
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